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2011年05月15日

SPEEDIで出てくる[1歳の幼児がうける甲状腺等価線量]の意味[追記あり]

SPEEDIで出てくる[1歳の幼児がうける甲状腺等価線量]の意味[追記あり] 3月に初めて公開されたSPEEDIによるシミュレーションで出てくる「幼児(1才未満)のヨウ素131による甲状腺等価線量」をみて驚いていた方もいらっしゃることだろう。
 かなり広い範囲で100mSvという放射線量が描かれていたからだ。
 法律で規定されている(ICRP勧告に従った)公衆の限界線量は1mSv。100倍もある。

 私も違和感を持ったが他のことにかまけて忘れていた()。今思うと、あのときちゃんと理解して説明できる準備をしておいた方がよかったと思う。というのは、このシミュレーションは他のシミュレーションが扱っている対象とは異なるし、食品や水の暫定規制値とも深い関係がある話であるからだ。

 *  *

 シミュレーションは吸入による甲状腺等価線量を示している。

 シミュレーションで対象にしているのはヨウ素131である。これは体内に吸収されるもののほとんどが甲状腺に特異的に吸収されることが知られている。

 このため、呼吸等で吸入し、排出されなかったヨウ素のほとんどは甲状腺に集められ、甲状腺ホルモン チロキシンの材料になる。

 シミュレーションはこの量を表しているのである。

 甲状腺という臓器は小さな臓器で、全身に放射線を浴びたとしてもその影響は全身の5%と見積もられている。この5%が組織過重係数と呼ばれる。また、甲状腺がうけた放射線量を等価線量と呼んでいる。
 一方、各臓器がうけた放射線量を全部足せば全身の放射線の影響と言え、これを実効線量と呼ぶ。これらは次の式の関係になっている。

 全身の実効線量[mSv]=各臓器の(等価線量×組織過重係数)の合計……全身の臓器の線量を足す※文末参照



 さて、ヨウ素はほぼ甲状腺だけに集まると考えるので、シミュレーションででてきた100mSvをあてはめると
 全身の実効線量[mSv]=(甲状腺の等価線量[mSv]×組織過重係数)

               =100[mSv]×0.05
               =5[mSv]
である。
 5mSvはICRPが緊急時の上限として決めている量。

 全身の影響の5%が甲状腺がうける影響だから、全身ではもっと大きな値になりそうなものだが、他の臓器は放射線を浴びていないのでそういう計算にはならない。


 シーベルトという単位が1kgあたりの量なので、体重50kgの人が全身に1mSvを浴びたとすると50ぶんエネルギーをうける。甲状腺がこの5%だけ影響を受けるので2.5のエネルギーをうけたことになる。仮に甲状腺が2.5kgとすればやはり1mSv。
 一方、甲状腺のみに1mSvをうけたとすると2.5kg分なので2.5ぶんエネルギーをうける。全身で考えてもこの2.5しかエネルギーをうけていないので、2.5÷50[kg]で0.05[mSv]の放射線量をうけたことになる。

(エネルギーの量の単位は[J]だがここでは省略。本当は体重50kgに対する甲状腺が2.5kgではなく全身に対する放射線の影響度だが、話を分かりやすくするため質量で置き換えた)

 とまあ、甲状腺がうけた放射線量(等価線量)の0.05倍が全身の放射線量(実効線量)になる。言葉が分かりにくいし、単位の成り立ちも同じSvのまま扱っていて非常にわかりにくい。

 以前福島第一原発で作業員が皮膚の一部に2~3Svの放射線量を浴びたという事故があったが、あれも等価線量なので、全身の実効線量にするとずっと少なくなる。全身に2~3Svだったら大変なことだ。

■食品の暫定規制値の場合

 ここまで来れば、食品の暫定規制値についてもやたらに大きな数値が出ても悩む必要はなくなる。

 ちょっと考えにくい極端な設定でよく説明されるが、ここでもこれを踏襲すると、

・2000Bq/kgのヨウ素131で汚染されたほうれん草1kgを365日食べ続けた場合の内部被曝量

 ベクレルとシーベルトというまったくことなる考え方の単位の換算は無理もあるが、実用上換算計算が行われている。
 大人の場合、半減期も考慮し、50年間の影響を考えてもとめる。

(式)
預託実効線量 = 放射能濃度(Bq/kg) × 実効線量係数(Sv/Bq) × 摂取量(kg/日) × 摂取日数(日) × 市場希釈係数 × 調理等による減少補正

(預託実効線量は、取り込んだ放射性物質が与え続ける放射線量のこと)

実効線量係数(Sv/Bq): 大人が経口摂取(食事で食べた)の場合
ヨウ素131 は 2.2×10^-8
(以上,http://testpage.jp/m/tool/bq_sv.phpに計算機。http://memorva.jp/school/safety/radiation_bq_sv.phpに内容がまとまっている。リンク先も参照すべし)

 これは1回の事故で汚染されたことを前提としているので、つぎの事故で新鮮な放射性ヨウ素(?)で汚染されるとまた計算を別にする必要がある。

 で、実効線量係数は放射性物質ごとに示されていて、市場希釈係数や調理等による減少補正も必要だが、個別に考えることは困難なので1で計算することにする。

預託実効線量 = 放射能濃度(Bq/kg) × 実効線量係数(Sv/Bq) × 摂取量(kg/日) × 摂取日数(日) × 市場希釈係数 × 調理等による減少補正
= 2000[Bq/kg]×2.2×10^-8[Sv/Bq]×1[kg]×365[日]×1×1
= 16.06[mSv]

となる。

 うおう、1mSvを大きく超えているぢゃないか! と焦る必要はない。

 吸収された放射性物質はほとんどが甲状腺に集まるので、これは甲状腺の等価線量に相当すると考えることにする。このため0.05をかけると全身の実効線量になる。
甲状腺の等価線量=預託実効線量として
実効線量=預託実効線量×組織過重係数
      =16.06[mSv]×0.05
      =0.803[mSv]

となる。
 かなり極端な設定で、ほうれん草は葉物野菜全部と読み替えるべき(それでも大人で一日400g程度)だが、(放射線施設管理上の規制値である)平時の公衆被爆の限度線量1mSvすら上回らない。
 これは暫定規制値の決め方からして当然のこと。
 
 暫定規制値は緊急時で放射性物質(放射性ヨウ素、放射性セシウム、ウラン、プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種ごとに実効線量5mSv(放射性ヨウ素は甲状腺等価線量50mSv)を上限と設定し、食品群(「飲料水」(水)、「牛乳・乳製品」(牛乳等)、「野菜(根菜や芋類を除く)」(菜類)など3~5群:放射性ヨウ素と放射性セシウムでは半減期の違いから扱いも違う)ごとに割り振りをし、世代を5つに分けていずれの世代でも上回らないように設定している。実際の値を見るとより厳しめに決めているので、暫定規制値の値自体は信用していいようだ。
(詳しくはチーム中川のブログで解説しているので参照のこと。また、さらに詳細には次のリンク先も参考になる。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/rb-rri/QA/gakkai1.pdf
http://www.aist-riss.jp/main/modules/column/atsuo-kishimoto009.html
http://www.s.fpu.ac.jp/oka/radiation.htm
http://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20110325sfc&fileId=160

以下は専門的だが非常に事細かく難解な原資料から解説している。
食品の放射性物質の暫定基準値はどうやって決まったか
http://katukawa.com/?p=4467
)
 ただし、流通過程が信用できるかどうかは別問題


 なお、とてもわかりにくいが実効線量と等価線量が混同されているのは大きな問題。チーム中川も説明を試みているが、あの説明では厳しいのではないかと……。

 ある程度数字を見ている人たちの間でも認識が曖昧な様子。いまだに食品の暫定規制値で求めた預託実効線量が1mSvより大きいから問題だとか、統計上有意な影響を認めない100mSvより小さいから問題ないと言っているのを見るが、異なる意味の数値を比較しても仕方がない

 たとえば、例に出したほうれん草1kg365日の約16mSvを実効線量100mSvや1mSvと比較しても仕方がない。
 福島第1原発作業者が2-3Svを皮膚に被曝したというのを聞いて、東海村JCO臨界事故のようなものを連想してしまった人は早合点(恥ずかしながら自分もだ)。実際ベータ熱傷だけで退院している。
 
 

 残念ながら、一般の人はこの種の説明をしても「数字を並べられても意味が分からないから」と受け付けてくれない。その結果、陰謀論やら政府不信論とかの分かりやすい敵を設定したものに流れてしまう
 
 自然科学で安全確保が図られているのにもかかわらず,それが通じていない。自然科学教育の無力を感じる場面である。
 
 分かりやすくするほど真実から遠ざかる。実際放射線はとてもわかりにくい。



 全身の実効線量と組織過重係数による各組織の等価線量の関係(ICRP2007)

『実効線量』 =
『生殖腺における 等価線量』 x 0.08
+ 『骨髄における 等価線量』 x 0.12
+ 『胃における 等価線量』 x 0.12
+ 『肺における 等価線量』 x 0.12
+ 『結腸における 等価線量』 x 0.12
+ 『膀胱における 等価線量』 x 0.04
+ 『乳房における 等価線量』 x 0.12
+ 『肝臓における 等価線量』 x 0.04
+ 『食道における 等価線量』 x 0.04
+ 『甲状腺における 等価線量』 x 0.04
+ 『皮膚における 等価線量』 x 0.01
+ 『唾液腺における 等価線量』 x 0.01
+ 『骨表面における 等価線量』 x 0.01
+ 『脳における 等価線量』 x 0.01
+ 『残りの組織における 等価線量』 x 0.12
(組織過重係数の出典:ICRP2007勧告について 原子力安全委員会事務局)
なお、文中では甲状腺について1990勧告の値0.05を使っている。


追記
 放射線の実効線量について学ぼうとする人が参照しているようなので、一部の書き改めたりリンク追加をしている。これからも随時行う。
追記終わり
ブログ一覧 | 放射性物質・放射線 | 日記
Posted at 2011/05/15 11:09:40

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