ナマモノの森

山道を走行中に路肩で動く物体に目が留まりました。

クルマを停めて近付いて数枚写真を撮っても一心不乱に穴を掘っていてこちらに気付きません。

街中でよく見かける人間の存在に慣れているネコやハトだって近付けばすぐに逃げてしまうのにこいつときたら。。。。





『おい！』

「……」

『おい！！何してんのお前？』

「…えっ！？食べ物を探してるんだなも」

『食べ物〜？てかお前誰？』

「ボクはたぬきなんだなも…そっちこそ外出自粛しなくていいんだなも？」

『うっ…だ、誰にも会わなきゃいいの！』

「ふーん、そうなんだなも」

『そうなの！ところで地面に穴掘って出てくる食べ物ってどんなの？』

「ミミズとかオケラとかアメンボなんだなも」

『…アメンボは地面の中にはいないだろうよ？』

「言葉のあやなんだなも、そこはスルーするのが大人のマナーなんだなも」

『そっスか…すんません…』

「もうそろそろ行くだなも、ボクは忙しいんだなも、山奥で気ままに暮らしているように見えるかもしれないけどこれはこれで意外と大変なんだなも」



そう言い残して森の中へと消えていった彼、今日は食事にありつけたのでしょうか？

現在４５歳の私、人生で初めて野生動物に明確に声をかけました。必死に穴を掘る姿に思わず感銘を受けたからであります。

一日経った今この時間もあの狸がどうしているのか気になってしまいます。


余談ですが、アメンボは甘い匂いがするので『飴坊』と書くそうです。