この前、ル・マンを見てて思った事。
ナイトセッションに入り、マシンが照らすヘッドライトの明るさに驚いた。
明るさだけではなくて照射角もまた、ものすごい広くこれだけ広範囲で遠くまで照らす事ができてるのならドライバーはかなり安心感を持ってレースができるだろうと思った。
テレビカメラと実際肉眼で見たのとは多少誤差はあるだろうけど、それにしてもこの明るさと照射角は異常なほど。
キセノン?LED?よくわからないのですが、もう一昔前のようなヘッドライトの明るさからは想像付かないほどのレベルになってるなぁと感じる。
実際正面から映ったところはまだ完全に暗くなりきってない時間帯でもものすごく眩しく、ハレーション起こしてしまってるほど。
そのぐらい凄い。
'92のデイトナ24時間で当時まだハロゲンが主流だったところ、ニスモが走らせたR91CPに使ってたICHIKOH製のキセノンライトがものすごく明るくて、ジャガーチームがそれを売って欲しいと言われたというエピソードがあるらしいのですが、今のはそれよりもう何倍も明るくて、消費電力も少なくさらに軽くなってる。
ほんとにすばらしい技術の進歩です。
ちょうど30年前の’86のル・マン。
当時は当然ハロゲンランプ。
この頃CIBIEやMARCHAL(我々世代には懐かしい)といったメーカーが主流で、市販車でもCIBIEのハイワッテージハロゲンランプをつけるのがやたら流行ってた時代。
これが十分明るいと感じてた。
でも、当時のナイトセッションの走行映像を見るともう全然今とは比較にならないほど暗いし照射角も狭い。
それで6kmのストレートを350km/hオーバーで走行してたというのだからある意味凄いし、ドライバーは相当なストレスと疲労を強いられたドライブだったのだろうと想像出来る。
四半世紀以上経った今のレーシングカーも当時と最高速は変わらない、むしろ最高速は遅いぐらいだけど、その細かな部分の技術の進歩は想像を遥かに超えてるものになってると実感できる。
次にこちら。
とにかく今のマシンはほんとにコーナーが速い。
このポルシェカーブから最終のフォードシケインまで続く葛折りのコーナー。
ここを駆け抜けて行くLMP1のマシンの速さは映像から見ててもすぐにわかる。
なんていうか、もう完全に吸い付いて走ってるという感じ。
縁石踏んだら浮いてるけど(笑)
30年前ののGr.Cカーはまだ若干ロールして、場合によってはスライドしながらコーナーを抜けて行くという姿が普通だった。
でも、今のプロトマシンは違う。
タイヤの強烈なグリップと空力によるダウンフォースのおかげで、ほぼオン・ザ・レール状態で走りテールスライドなどほぼ皆無。
向きの変わり方が鋭く、それでいてリアが出る事もなく凄まじい勢いで加速して行く。
もしこれで唐突にリアが流れたら対処できるんだろうか?
ハイサイド起こしてかなり高速な状態でクラッシュするんじゃないのかな?と余計な心配をしてしまうほど。
あ、そもそもみんなAWD?アウディだけ?何もわかっとらん(笑)
コーナー自体の速度も速いけど、特にコーナー出口でパワーがかかったときの瞬発力は目を見張るものがある。
やっぱりハイブリッドだな。と感じずにはいられない。
特にポルシェのオンボード見てると凄くわかる。
なんだか早送り見てるよう。
回生するときと放出する時の音がまたすごいし。
瞬間的なパワーはやっぱり内燃機関よりモーターの方が出力の立ち上がりは全くもって違う。
それは以前アコードのハイブリッドを乗った時感じた。
踏んだ瞬間最大トルクが発生する。エンジンではまずあり得ない感覚。
見てるとコーナーで100km/hぐらいまで減速してから200km/hまでの加速がとんでもなく速く感じます。
これらは当然タイヤのグリップ向上、ボディーの空力特性による恩恵も大きくかかわってるのですが、30年という年月がもたらす技術の進歩をひしひしと感じたのでした。
感覚としては今のGTクラスのマシンが30年前のGr.Cカーのコーナー速度と同じぐらいかなと個人的に思います。
それともうひとつ。
ピットワークが耐久レースとは思えないほどシステマチックに動いてる。
昔と違って、今はピットも広くなったし、安全上ピットレーンに立ち入る事のできる人間は限られてるので余計そう見えるが、タイヤ交換なんてフォーミュラさながらの速さ。
30年前は狭いピットに必用以上の人が溢れてて、事故が起きないのが不思議なほど。いや、実際知らないだけで起きてたのかもしれないけど。
しかし、古い人間の自分的にはこの狭くて古いピットのほうがル・マンらしくて好きだ。ピット上のテラスに人が溢れかえってる光景がいかにもル・マンらしくてね。
だけど、やっぱりマシンやレースは30年経つと全く別物なほど進化したなと今年のル・マンを見てそう感じたのでした。
どっちが好きとか良いとかという事でなくて、時の流れを感じたという事です。
30年前は30年前で当時としては最先端のハイテク技術を駆使したマシンだったし、今は今で現代の自動車社会を象徴する技術がレースに活かされててすばらしいものがある。
時代を超えてその時その時のモータースポーツのよさがあるなと思います。
ただ、人間味やスポーツ性というところは昔の方がより見てる側として伝わるものがあると個人的には感じてます。
決して今のレースがスポーツ性がないとは言いません。
特にコーナリング速度は向上してるわけですから相当なGがかかってるはずです。相当キツいはず。
それが映像から伝わりにくいのがちょっと残念かなと。
でも、速度差の大きいGTクラスを追い抜くときの判断力や反射神経はものすごく重要で、それをうまくかわすドライバーはほんと凄いと思いました。
ともかく、久しぶりに最近のレースを見て、ちょっとだけカルチャーショックを受けたのでした。
完全に80年代で止まってるので(笑)
おまけ。
30年前のアマチュアカメラマンの映像。
あれ?レンズ持つ手が逆?(笑)
こっちの人は立派な長距離砲で。ニコンっぽいな。
でも、わき上がっちゃってるけどブレ大丈夫?
あら、こっちの人は…。
一服しながら撮ってる(笑)
そんな30年前のル・マンでの光景でした。