設問

　長男は今度の4月から小学校へ通い始めるが、この時期から学習塾や通信教育の勧誘が喧しい。
　私も学習塾で禄を得ていたクチなので、少子化の昨今塾生を早めに囲い込まないことには経営が立ち行かない業界の事情も重々理解しており、DMやチラシの類を邪険に扱う気はない。

　それどころか学力診断や楽しげな工作教室を無料、もしくは低廉な価格で受講できるので、むしろ勧誘を有難く利用させてもらっている。
　今週末も土・日とそんなセミナーに出向いてきた。


　一般的に子どもたち向けの授業と並行して、父母向けの説明会が実施される。塾の立場からすると、子ども相手の方は実はどうでもよくて(もちろん子どもにそっぽを向かれると万事休してしまうので、それなりに楽しませてくれる)、父母を如何にその気にさせるか……が勝負であることは容易に想像していただけるだろう。

　私自身は塾業界の手の内を理解しているつもりだし、「今からそんなにガッつかれてもねぇ」と鷹揚に構えているので、妙な焦燥感に駆られることも不安に陥ることもないが、「うちの子大丈夫かしら…」と思わせる程度に心配を呼び起こすアイテムとして、難関中学校の過去問(今年の出題を含む)が用いられる。そんな問題の一つが、これだった。



＜問＞　右図(省略)は、９９年後に誕生する予定のネコ型ロボット「ドラえもん」です。この「ドラえもん」がすぐれた技術で作られていても、生物として認められることはありません。それはなぜですか。理由を答えなさい(H25・麻布中学校)。


　一般紙の記事でも紹介され、ネット上で話題になっていたようなので、受験生のいらっしゃらないご家庭でもご存知の方が多いかもしれない。
　賛否両論渦巻いているようだが、私はこれを「良問」だと思った。


　無機物のみで構成されたロボットが「生物」たりえないことは自明だが、一歩進んで「銀河鉄道999」や「攻殻機動隊」に登場する生身の肉体を捨て機械の体を得た人々が「人間である」と言えるかどうか、なんて切り口で作問しても面白かったのではないだろうか。
　ドラえもんの問題も突き詰めると「身体論」に行きついてしまうが、思考の発展性を試すには面白い問い掛けであったと言える。

　たまに早朝深夜「攻殻機動隊」の録画を鑑賞している際に、子どもたちと鉢合わせして「このお姉さん(=少佐)なんで窓から飛び降りてるの～?」とか「このオヂサン(=バトー)なんで消えるの～?」と素朴な疑問を受けることがあるが(笑)、我が子たちの思考を発展させるためにも今後はマヂメに答えようかと思っている。