脱毛

　新年度当初から、私は髭を蓄えるのをやめた。
　以前から、突然剃って出勤しても誰も何も言ってくれないことが多かったが、今回も隣席の同僚が｢新年度から心機一転かい?｣と訊いてきた程度で、他は誰からも突っ込まれなかった。

　髭を生やしていても嫌悪感を抱かれない代わりに、髭が無くても別に変わり映えがしないらしい。



　やめたくてやめた訳ではない。さりとて他の誰かから髭を禁止された訳でもない。
　理由は｢円形脱毛症｣。

　顎の左下部分の髭が、500円玉大の範囲で全く生えなくなってしまい、綺麗に揃えるのが難しくなったのだ。

　髭ももちろん毛髪なので、頭髪同様に枝毛が生じたり途中で切れてしまうことが多々ある。
　先に記した｢突然剃って出勤｣というのも、その実余りに状態が酷くなったためにリセットした、という場合が少なくない。
　髭も毛髪なれば、ストレスその他が原因で｢円形脱毛症｣に陥ってしまうこともありなん………と理解はできるし、頭に｢500円ハゲ｣ができるよりはマシだろと思うのだが、私個人としては結構ショックを覚えた。


　日常生活は平穏さを取り戻し、肉体的・精神的なダメージが解消されつつあることも実感できるが、年度末の殺人的多忙がもたらした爪痕はもう少し尾を引きそうだ。



　ところで家族の間では、私が髭をやめたことが好意的に受け止められているものの、また別の新たな問題が浮上した。

　別人格｢がをー｣がこやぎさん(=長男)･こぶたさん(=次男)を襲撃しジョリジョリ～と頬擦りする際、髭が長かった頃に比べ、伸びたばかりの不精髭が新品のヤスリの如く子どもたちの柔らかい皮膚を刺激し、強烈に痛いらしい………(-_-;)。