経歴

　関西のスポーツ紙｢デイリースポーツ｣が運営するニュースサイト｢DailySportsOnline｣の配信記事『元ＰＬエース上重アナが１２１キロ記録』に注目。

　日本テレビアナウンサー・上重聡が、QVCマリンスタジアムで開催のバッファローズ-マリーンズ戦試合前イヴェントに参加。10年以上野球のプレーから離れていながら、驚異的な球速を記録した……という記事。


　東京六大学ファンたる私としては、上重アナの経歴に関する記述が気に喰わない。
　確かに、現メッツの松坂大輔(ライオンズ→レッドソックス→)擁する横浜高校と、PL学園のエースとして甲子園の歴史に残る死闘を演じた選手である。
　しかし私にとっては、立教大の投手として史上2人目の完全試合を達成した選手(当時。昨年春季に早稲田大の高梨投手が完全試合を達成し、現在は3人)なのだ。ウイニングボールは上重自身がサインした上で、野球博物館に収蔵されている。
　その輝かしい完全試合を含め、立教大時代の記録に全く触れていないのが、実に腹立たしい。

　デイリースポーツは大阪本拠の新聞社なので、PL学園時代に重きを置くのは当然かもしれないが、他のスポーツ紙も似たり寄ったりの扱いだった。



　野球界全体を見渡すと、東京六大学リーグの評価が凋落傾向なのに加え、最高記録で通算48勝・平成以降の記録に絞っても33勝した投手がいる一方で、上重投手の記録は9勝(3敗)。完全試合とて、対東京大戦での記録では｢そういうこともあるだろね～｣と流されてしまうのかもしれない。

　とは言え9勝3敗の内訳をみると、

早：1勝1敗
慶：3勝
明：2勝
法：1勝2敗
東：2勝

　全ての対戦相手から勝ち星を上げ、かつ負け越しているのは対法政大戦のみとなっている。
　東京六大学の各チームは部員数が多く、1勝どころか登板機会すら与えられぬまま卒業を迎える選手が大多数。在学中を通じて肘の故障に悩まされ続け、最終的にはプロ入りを諦めた選手ながら、これだけの成績を修めたのはあっぱれと思うのは贔屓が過ぎるだろうか。

　東京六大学野球ファンとしても、一OBとしても、もっと立教大時代の活躍にスポットを当て、ひいては東京六大学リーグを盛り上げる切っ掛けに結び付けてほしかった。




　それにしても上重投手の経歴を振り返るにつけ、極めて不躾な言い方をさせてもらうなれば、野球選手としては高校野球で使い潰されてしまった｢悲運のエース｣。逸材を大切に育て、才能をより大きく華やかに開花させるもっと別の方法があった……のかもしれない。

　逆に見れば故障したが故に大学野球で見切りを付け、新たなステージ(＝民報の花形アナウンサー)で輝くことができたのは、野球界にとって大きな損失でも、上重投手個人にとってはラッキーだった。

　
　ところで同じく高校野球で大活躍、東京六大学でも記録的な観客動員と勝ち星を挙げ、鳴り物入りでプロに入った選手のその後は……終わってしまったのか、はたまた復活してくるのか、果たしてどうなることやら。

　野球を続けている選手も、野球から離れて社会に出た元選手も、来し方をステップにして更なる輝かしい経歴を歩んで行ってもらいたいものだ。