錦織

　いやはや、惜しかった。
　日本人が96年ぶりにグランドスラム4強入りしたと聞いても、どうせ決勝はジョコビッチ対フェデラーだと思った人が大半だったのではないか。

　世界ランクトップのジョコビッチを破り、あと一勝……というところで、栄冠はスルリと逃げってしまった。



　ここで、私は謝罪をしなければならない。

　面白いテニスの試合は数あれど、何故か対戦相手のチリッチに敗れた2年前の全米オープンでの対戦が妙に印象に残っていた。その後も度々対戦し勝ち星でリードしていたとは言え、長身のチリッチが繰り出す高い角度からの強烈なサーヴに対処できないまま星を落としたシーンをついつい思い出してしまい、悪い予感がしていたのだが……。決勝戦の結果は、まさにその通りになってしまった。

　もちろんそんなことは有り得ないと理解しつつ、私が余計な連想をしたから負けたようにも思え、気分が悪い（汗）。私とて日本人初の優勝を心から願っていたことをお認めいただいたうえで、対戦の行方を固唾を呑んで見守っていた各位に、深くお詫びを申し上げたい。


　
　しかし錦織圭のテニス人生が、この大会で終わるわけではない。
　今後も長く、グランドスラムの常連としてテニスファンを愉しませてくれるだろう。

　ジョコビッチとの準決勝を観て思ったが、相手に喰らい付いて勝ちを捥ぎ取ったというよりは、格上の選手であろうと自分の流れに上手く引きずり込み、相手のプレーをさせない狡猾さが垣間見えた。素人目にも、決してまぐれの勝利ではないことが解って嬉しい。


　そして猿山のボスを夢見る、愛しきこぶたちゃんも、「錦織は5歳かららしいけど、僕は4歳からテニス習っているんだよっ」と、何気に燃え上っているところが頼もしい(笑)。


　20年後、私も「4大大会を制した○人目の日本人を育てた親」としてインタヴューを受けるかもしれないので、恥ずかしくない程度にテニスのスキルを磨いておかねば。