柬国

　今日、子どもたちと早めに摂ったランチは｢アンコールワット」にて、透明ながらパンチのある出汁の効いたスープに、コメから作られた純白な麺が泳ぐ「クイテウ」と、真っ赤な色が強く辛さを主張しつつ、ココナッツミルクとサツマイモのコク・甘みが複雑かつ芳醇な旨みを下支えする「チキンココナッツカレー」、そしてデザートは刳り貫いた南瓜(カボチャは「カンボジア」が語源)をプティングで満たしたナチュラルなケーキ。


　もちろん、長く続いた内戦からの復興途上にある東南アジアの仏教国・カンボジアが誇る世界遺産「アンコールワット」現地へ赴いているわけではない。



　東京・代々木の有名エスニックレストラン「アンコールワット」のランチメニューである。
　代々木の街で出会った私たち夫婦が、よくデートを重ねたスポットでもある。

　

　昔と比べると若干味がマイルドにスポイルされた気もするが、基本濃い味好きの次男も、サッパリ風味ながらしっかりした出汁の旨みが強烈なクイテウのスープが気に入り、長男はサツマイモとココナッツミルクの甘味際立つ激辛カレーにチャレンジし完食。さすがは私たち夫婦の遺伝子を受け継いだ子どもたちだ(笑)。


　四半世紀前のカップルが子を生し、2人の味覚が次の世代に移行したように、「アンコールワット」の従業員も難民として来日し、苦労してこのお店で自活の道を切り拓いた世代から、子・孫と思しき若者に代わっている。
　今後も末永く、この街で本場カンボジアの味を提供し続けてほしいものだ。

　併せて彼・彼女らの母語カンボジアの発展と、日本との文化・経済交流の深化、そして東京が気軽にお手頃に世界中の料理が愉しめる街であり続けるよう願っている。