降臨

　夏めく日射し眩しき神宮球場のスタンドに、大きな蝶が舞い降りた。
　アオスジアゲハだ。

　黄色いアゲハチョウ(ナミアゲハもしくはキアゲハ)に比べると、関東で見掛ける機会は少ない気がする。
　しかも比較的緑の多い神宮外苑内とは言え、ブラスバンドが勇ましいコンバットマーチを奏で、母校の応援に参集した観客が大声援を送る騒々しい場所である。

　何か蝶の興味を引くようなモノがあったのだろうか。
　理由はともあれ珍しい観客の参加に気付いた私は、とても嬉しくなった。



　我らが東京六大学野球の応援スタンドに降臨したアゲハチョウ以上に華やかな、笑顔を絶やさずステージ上で踊り続けるチアリーダーも、春季リーグ後半に至りパフォーマンスに磨きが掛かってきた。

　集団としての演技も然ること乍ら、学生個々人も下級生だった頃からすると、チアリーダーとしてのスキルが上達し、それぞれ大人びた女性の魅力に溢れている。


　神宮のスタンドで初めて見掛けた当時、少々ポッチャリしていて愛嬌満点なものの、チアとしてフィジカル面は大丈夫なのかなぁ……と思っていた女の子が、相当に努力と修練を重ねたのだろう。
　かなりスリムアップし美人に変貌した一方で、持ち前の骨太な肢体を活かし、ダイナミックな演技を惜しみなく披露する。彼女の成長を目の当たりにし、保護者でも友人・知人でもない一観客にもかかわらず、衷心から嬉しくなった。


　フィールドで躍動する選手たちへ声援を送る仲間として、世代を超えた共感を得られることこそが、学生スポーツの大きな魅力である。




　東京六大学野球春季リーグ第5週。
　土曜の初戦で東京大に追い上げられ、冷や汗をかきつつ辛勝した立教大は、今日の第2戦で田村(3年・報徳学園高)が2安打完封(4－0)し、今季初の勝ち点獲得。

　立教大・田村は5回途中までノーヒットピッチング。結果だけを見ると順当勝ちのように感じられるかも知れないが、東京大の先発投手三木(3年・県立多摩高)に対し四球を与えるなど、不用意な配球が目立った。また攻撃面では7残塁を喫し、先日通算100安打を記録した大城(4年・興南高)も安打無し(2四球)と、拙攻さを否めない。


　首位決戦となった早稲田大と法政大の対戦は、前週まで立教大に1敗しただけで6勝1敗勝ち点3と好調の首位法政大が、あっさり早稲田大に撃ち込まれ連敗し勝ち点献上。首位を譲り2位に陥落した。

　後退した法政大だが、残る日程を見ると第7週の東京大戦のみなのに対し、首位早稲田大は次週・第6週で前季覇者の明治大戦、最終週・第8週「華の早慶戦」を控えており、簡単に勝ち星を得られないだろう。
　首位早稲田大と、虎視眈々と逆転を狙う慶應大(現時点で勝ち点2の3位)に挟まれつつも、まだまだ法政大有利の状況である。


　春季リーグ終盤に向け、これからも注目すべき対戦カードが続く。