行来

　公共放送・NHKのニュース番組「おはよう日本」0600時台のコンテンツ『買い物困難者支援 “持続可能な取り組みを”』に注目。

　滋賀県の社会福祉法人「虹の会」が手掛ける、過疎地の｢買い物困難者｣支援の取り組みについての紹介。
　小売店がなく、公共交通機関が手薄な地域において、食料品・日用品の移動販売はまさに生命線となっている。

　しかし大量購入が見込めない年寄り相手、しかも顧客が広範囲に点在しているとあっては採算に見合う事業とはとても言えず、「虹の会」においても年間100万円もの公的補助を受けているという。
　ただし財政困窮の折、行政の支援も期限を切られており早急に採算ラインを下げ、事業を持続可能な状態へ改善させなければならない。


　その方策の一つが、販売に出向いて行くだけでなく、各地の産物を仕入れて来る、というもの。
　仕入れた山菜などは、「虹の会」運営のカフェで提供する食事の材料に用いられる。

　そもそも買い物困難者支援の移動販売は、障がい者就労支援の一環として実施されている事業。授産施設で生産したパンや菓子などを販売するのと併せ、同じく障がい者にとって貴重な就労の場になっていると同時に、社会福祉法人の収益源であるカフェが必要とする食材を調達する。

　過疎地に暮らす老人の立場では、生活に必要な買い物のために支出するだけでなく、これまで販売ルートが無く自家消費に留まっていた、自宅の畑や周辺の野山で採れた新鮮な産物を出荷し現金収入が得られる。


　過疎地対策と高齢者支援が、障がい者福祉と密接かつ有機的に結合した良い仕組みだと感じた。
　成功例として全国的に参考にできるよう、これからも安定的にこの仕組みを持続してほしいものだ。


　
　今朝のニュースで紹介されたのは社会福祉法人の取り組みだったが、同様の切り口で過疎地対策・高齢者支援に参入できそうな、地域内を行き来している事業主体が他にもある。

　移動販売へ出かけた先で、産物を仕入れて戻る……で成功したのなら例えば、
　宅配便を届けた先で、差出す荷物と収穫した農産物を集め運搬する。或いは
　新聞を配達して、新聞受けから生活用品の注文用紙を回収して戻る。或いは
　郵便局員がマイクロバスを運転して、郵便配達と循環バスの運行を兼務する、等々。

　特に最後の「郵便局員が運転するバス」は、スイスやイギリスで実際に運行されている。日本以上に急峻な山地が連なり、環境問題に意識が高いスイスでは、「ポストバス」が重要な移動手段となっている。


　地方だけでなく日本全体が高齢化してくると、あらゆる産業・業種で労働力が不足するのは必至。
　福祉関連も、新聞配達も、宅配便ドライヴァーも、郵便局員も、バス運転手も、要員確保が難しくなる。

　ならば業界や規制の垣根を取っ払って、住民の切実な要望に対し、どうしたら効率的に応えることができるかを柔軟かつ大胆に検討し実行するべきだと考える。