遺骨

　全国紙・読売新聞が運営するニュースサイト「YOMIURI ONLINE」の配信記事から『戦没者の遺骨収集へ新法人設立…政府方針』に意見す。

　
　先の戦争が「侵略」だったかどうか、近隣某国の「歴史の歪曲だ」なる批判が妥当かどうかに関係なく、遺骨収集の問題は我が国の戦後処理における恥部である、と考える。

　国民の愛国心に縋り、その身柄を強制的に徴用して外地に送り、無謀かつ無意味な作戦で多数を死なせてしまった経緯は、現在の価値観では極めて重大な人権侵害および国の存立を脅かす行為であり、国家の責任は到底贖えるものではない。
　
　しかし最低限、家族の元に兵士の遺骨を返すのが筋だろう。
　この国は、その当たり前の対応を怠ってきたのだ。


　若干脱線するが、私は靖国神社が過度に美化されることも好まない。
　「英霊」と祀り上げ「靖国に行けば会える」などと喧伝して、本来国が責任を以て遂行すべき遺骨収集始めとする戦後処理の怠慢を、覆い隠す共犯となっているように感じるからだ。

　「英霊の家族」の美名の下、戦没者遺族が歩まされてきた70年の苦難を想うと、今更に遺骨収集に本腰を入れるとの報道に接しても、遅きに失したとしか思えない。


　とは言え、何もしないまま風化と忘却を待つよりは遙かに前進である。
　DNA鑑定やCGを駆使した復顔など、技術が飛躍的に進歩した現在だから実施できる調査もあろう。

　近隣某国との外交的鞘当て以前に、我等国民に対してしっかりと「落とし前」を付けてほしいものだ。



　願わくば、異国の山野あるいは海底で眠る兵士たちが家族の許へ戻り、その温もりに満たされんことを。
　そして生き残った者、生き残った者の子孫たちを、正しく平和な世界に導き給え。