殿堂

　都心の教室で開講される子どもの習い事が午前と午後に分かれてしまい、昼に空いた2時間半ほどを有効活用すべく、東京ドーム内の「野球殿堂博物館」を見学してきた。

　私は以前にも行ったことがあるが30年以上振りで、ドーム球場になる前の「後楽園スタヂアム」だった頃。子どもたちは、初めての訪問になる。


　この時期に出向いたのは、冒頭記したスケジュールの都合もあるが、もう一つ重要な理由がある。
　我らが東京六大学の関係者から、法政大OBの山中正竹（やまなかまさたけ）、そして明治大OBの松本瀧藏（まつもとたきぞう）が野球殿堂入りしたからだ。


　松本瀧藏と聞いて「あれ？」と思われたとしたら、弊ブログを相当に詳しく読み込んでいる方か、アメリカンフットボールに造詣の深い方だろうか。
　以前記事にした通り、立教大のポール・ラッシュと共に日本の学生アメフトを立ち上げ、競技の裾野を広げて大きく発展させた功労者で、アメリカンフットボールでは既に殿堂入りしている。
　
　複数のメジャー競技に跨って殿堂入りしたのは、松本が史上初めてなのだそうだ。


　殿堂入りの象徴として有名な肖像レリーフの製作は、これから行われるようでホール内に展示されていなかったが、今年選抜された5名の写真パネルや所縁の品が、常設展示に先立って特別に飾られていた。


　
　縷々申し上げているように、私はアマチュア野球のファンであって、プロ野球に対しては冷淡を超えて嫌悪すら覚えることを吐露してきたが、今日「野球殿堂博物館」を訪問しても、その感情に何ら変化は生じなかった。

　国際大会に参加すべく「侍ジャパン」へ招集されたプロの活躍は、多少ながら心動かされるものの、12球団のユニフォーム展示コーナーなどは一瞥した程度で通り過ぎた。


　やはり興味を引いたのは、旧制一高でのチーム設立や「華の慶早戦」に始まる学生野球、そして「都市対抗野球」で覇を競う社会人野球の展示である。

　日本における野球の歴史を系統立てて眺めてみれば、東京六大学や社会人野球の強豪チームが、組織および試合の運営から観客がどのように応援するかまでノウハウを供与し、最大・最強の人材供給源であり続けたことが理解できる。


　逆に言えば、プロが堕落の末に腐敗し尽くしたとしても、所詮根幹から外れた末節でしかない彼らをバッサリ切り捨て、源泉たる東京六大学リーグや都市対抗野球大会が盛り上がっていけば、我が国における野球競技の命脈は健全なまま保たれる、ということだろう。



　自らを律せざる者は、博打でもシャブでも好きにしてくれ。
　下らない犯罪者として、暗い牢獄の中で朽ち果てるがよい。
　ついでにチームやリーグを道連れにし、滅びてくれても結構。　


　松本瀧藏の如き巨星は、この先なかなか現れないとは思うが、いずれまた東京六大学出身者が新しくクリーンな歴史を切り拓いてくれる、と確信するところである。