上腕

　我らが東京六大学野球・秋季リーグは第2週。
　第1週は開会式だけの出場で試合の無かった明治大／立教大が、今季の初戦を迎える。

　学校同士の対抗戦から始まった東京六大学野球は、完全公平な総当たりリーグ戦形式ではなく、最終週を「早慶戦」固定でスケジュールを組む。
　即ち、早・慶両校は8週間で5カードをこなすのに対し、第2週から登場の明・立両校は第7週までの6週間で5カードを消化しなければならない。

　タイトなスケジュールに加え、明治大はのっけから法政大との「血戦」を強いられ、些か厳しい状況に在ることは否定できない。

　とは言え、それもまた最古の野球リーグに根付いた伝統。
　どこかで雌雄を決さねばならぬなら、潔く初戦から激突するのも一興、である。



　秋季リーグの見どころは、フィールドのアスリートも、応援スタンドのリーダー・チア・ブラスバンドも、夏季のキャンプや合宿を通じて大きく成長した姿を披露してくれるところにある。

　春季に出逢った、あの絶叫指揮者も健在。奏者だけと向き合うのではなく、演台上のリーダーと同調して応援スタンドを煽るアクションも加わって、更にパワーアップしている。

　明治大のリーダーは所謂「学注」において、今季が平成最後のシーズンであることに触れた後、「新しい元号は再び『明治』にしようぢゃないか」と煽って笑いを取る。

　そして今季の応援スタンドで目に付いたのは、主にブラスバンドの女子学生の二の腕である。


　特に今年は、猛烈な残暑が原因で熱中症に陥るのを防ぐため、エール交換など重要な儀式の時間帯を除き、応援団リーダーですら上着を脱いでいることが多い。

　ブラスバンドも白い半袖ワイシャツ／ブラウス姿で居並ぶが、そのブラウスの袖口が、明らかにきつそうに見える。
　重い楽器を抱えて、厳しい練習に耐え切った結果、上腕筋が鍛え上げられ、二の腕を一回りも二回りも太く逞しくしたのだろう。



　巡り来るシーズンで、毎度々々若者の成長を実感できる歓びは、勤務先でのOJTとも、家庭での子育てとも違う、週末昼間の神宮球場に通い詰めるファンだけの特権だ。

　勝敗に拘りつつ、悔いのない佳きパフォーマンスを心掛け、平成最後のシーズンを愉しんでほしい。


　学生注目！