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2021年04月03日

収受

収受  比較的質の高い鉄道関連記事が豊富な老舗有力経済誌・東洋経済が運営するニュースサイト「東洋経済オンライン」の配信コンテンツから『富山LRT、直通運転で消えた便利な「セルフ乗車」~2022年開業予定の宇都宮では導入目指すが…』に注目。

 記事の内容に触れる前に、執筆者・柚原誠氏の肩書に目が行ってしまった。
 なかなか一般メディアでは目にすることのない「技術士(機械部門)」とある。
 部門違い(建設部門)ではあるものの、同じく技術士の肩書を持ち、かつ鉄道を含む運輸・交通行政の研究をライフワークにする者として、もっと早くに柚原氏の記事に触れておきたかったところ。

 同氏は私鉄大手・名古屋鉄道の技術畑から出世し副社長まで務められた方で、現役を引退された現在は各地で講演活動をされている他、鉄道友の会副会長として、趣味の分野を含む鉄道の社会的プレゼンス向上に尽力されている。
 機会があれば、技術士会のイヴェント等でお目に掛かりたいと願う。



 述べられているテーマについては、一部に「それを言うなら、なぜ名鉄で実現しなかった?」という不遜かつ視野の狭い意見があるやに伺っているが、そもそも我が国において「セルフ改札」を成り立たせる社会的素地が醸成されていない。
 レヴェルの高いところから分析すれば、責任と良識ある市民としての義務=交通機関を維持するために必要な料金を自主的に負担するというコンセンサスがあるかどうか。
 誰も見ていなければ運賃をちょろまかす、責任感も良識も欠く不届き者が多ければ、「セルフ改札」が瓦解するのは自明である。

 逆にレヴェルの低いところから分析すれば、諸外国では料金が極めて低廉に抑えられていて、不正乗車を成功させて手許に残る小銭と、発覚した際に課せられる罰金が、明白にバランスしないからである。
 諸外国の公共交通料金が低廉なのは、水準そのものも然ることながら、日本のように運営主体(公営・各民鉄)や輸送手段(鉄道・路面電車・バス)が変わるごとに初乗り料金を課されるような硬直したシステムになっておらず、最初に入場した時刻から一定時間内・一定エリア内は何回でも乗降自由という料金制度(=ゾーン制)の影響が大きい。

 私個人の見解としては、これらに加え、交通事業者の労働組合組織率が極めて高く、運行に集中するべきオペレーターに料金収受業務を担わせることを労働組合が許さず「セルフ改札」にせざるを得なかったのではないかと推測する。
 日本では路線バスにオートマチック車が導入されるまで、かなりの時間を要したが、例えばイタリアでは前世紀末の時点でマニュアルの路線バスを見掛けることが無くなっていた。これも労働環境の改善を目的に、組合が導入を要求していた可能性が高い。
 そのバス運転席脇には、料金収受に用いるために設けたであろうスペースがあったが、単なる運転席と客室の仕切り壁になっていた。
 オペレーターは料金収受に一切関与せず、しかも操作が簡略化されたオートマチック車での運転に集中できるが、一方で出力ロスの大きいオートマチックトランスミッションの大型車を、アクセルべた踏みで運転するものだから、街角で感じる排気ガスの不快さが日本国内よりも酷かった印象がある。



 話がやや脱線したが、私としても「セルフ改札」に賛意を示し、その導入に協力したい。
そのために、まず為すべきこととして以下の2点を挙げたい。
〇料金の大幅値下げ
運行と料金収受の分離

 前者は、前段で述べた通り、罰金が割に合わなくなるほどに料金が低廉であれば、不正乗車は少なくなる。
 水準そのものを下げなくても、初乗り料金の多重賦課を解消するだけで、相当安くなるはずだ。
 「卵」と「鶏」の関係になりかねないが、「セルフ改札」が定着すれば、初乗り料金を課す最大の根拠である駅の施設及び配置要員を大幅に簡略化・省力化でき、初乗り料金の多重賦課が正当性を喪うことになる。

 後者は、柚原氏が勤めた名鉄の本拠・名古屋都市圏などで、複数事業者に跨る「セルフ改札」を導入するに際しては必須となる。
 更に「ゾーン運賃制」が加われば、選択できるルートは無数に増えるため、収入を各社に配分しなければならない。

 運行と料金収受を完全に分離できれば、列車やバスを運行する事業者は利用者から料金を受け取るのではなく、料金収受を行う主体に対して輸送力を提供し、コストに適正な利潤を加えた費用の支払いを受ける形になる。
 このスキームであれば、「セルフ改札」で不正乗車が多発したとしても運行事業者の利益に影響しない。
 また料金収受を行う主体が別にあれば、政策的に運賃を引き下げるための公的補助の受け皿として機能しやすい。


 今回の記事では、主に短距離の路面電車における料金収受の話題であり、私が挙げたような内容にまで踏み込んでいないが、当然に柚原氏の念頭には、これらの施策が存在し検討を進められているものと想像する。
 技術士の先輩が執筆される、新しいコンテンツの発表に心から期待したい。
ブログ一覧 | 鉄道 | 日記
Posted at 2021/06/22 19:49:52

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