2017年01月14日
チューニング振り返り【#2】
#1の続きです。
足回り選定の振り返りについて書いています。
チューニングを開始する上で、「ゴールに近いところからスタートする」ということから始めるとしましたが、ゴールがどの辺になるのか全然見当が付かないのでプロのチューナーにお任せすることに。
チューナーも各々得意分野がありますが、
特に脚周りの設計ができる会社を選んでワンオフの
ショックアブソーバー設計・開発をお任せしました。
任せたというと自分で努力を放棄したみたいですがそういうわけではなく、
何も知らない素人があれこれ考えて口を出しても助けにはならないから口出しをやめただけです。(苦笑)
今でこそ色々と経験してきたのであれこれ分かりますが、
当時は本当に何も知らなかったので、黙っていることが最善と踏みました。
やはり専門のプロに任せると色々なことをちゃんと定量的に計算してディスカッションさせて貰えます。
例えばマークXだと車重がこうで、サスペンションのジオメトリがこうだから、
推奨バネレートはこれくらい。それを裏付けるデータとしてこういうのがあって、
こういう理屈でこれくらいのレートを推奨するがどうか?とか。
こういう会話のもと仕様を決めれば、余計な情報に惑わされずに素直に物理的に何が理想なのか分かるのでゴールに近いところにスタート地点を置くことが出来ます。
僕はコレでバネレートのトライ&エラーをおそらく4~5回省略したのではないかと思います。少しずつバネを固めていたらと思うと、これだけでゴールまで2年~3年かかりそうですね。(^^;)
また、この時にポイントになったかなと思うのは、
前後のバネレートを同じ値に設定したこと。
FR車だと社外車高調キットではフロントのバネレートに対してリヤのバネレートを1k~3kくらい落とすというのが常套手段ですが、
マークXという車の基本的なステア特性がアンダーなのかオーバーなのか、
余程アンダーだと思うがどのくらいアンダーなのか。これを突き止めるために
前後のレートを揃えたんです。
これはチューナーとして全く経験のない車(マークX)だったので、
基本特性が分からないことにはその先へ進めようがないということで、
極力クセのないスペックでまずは車を仕上げてみようという狙いでした。
アライメントも凝ったことをせず前後ともトーゼロ。
基本特性が正確に分かれば、バネ、タイヤ、アライメントからおよそ狙ってステアリング特性を作ることが可能ですが、
いきなりここで「バネはフロントをリヤよりちょっと硬め、フロントはトーアウト、リヤはトーイン・・・」とか凝ったことやっちゃうと何が要因で狙いと実特性がずれているかの特定が難しくなります。
蓄積データのない車種の一台目らしい仕様の決め方に「ちゃんとしてるな~」という印象を受けながら話を聞きました。
これがポピュラーな車だったりすると「これくらいの設定が良いよ」というのが分かっているので最初からベストを狙ったセットアップをすると思うんですが、
こういう経験のない車だと焦らず誤魔化さず先々のリセッティングまでを視野に入れたやり方がプロのチューナーっぽくて面白い&信頼できるなと思いました。
ええ、自分の手柄みたいに書いてますがチューナーからの提案で僕はその思想に承諾しただけです。(笑)
ちなみに肝心のバネレートですが、会話の中で僕からバネレートをXXキロにしてくれと言う話はしませんでした。僕が当てずっぽうで希望を言ってもアテにならないですから。
代わりに「乗り心地に未練はないです」という話をしました。(笑)
実際にバネレートが決まったのはワンオフのショックが出来て納車される直前。
何パターンか実走で試してくれたみたいです。
こういう経験を通して「まずスペックを決める」のがチューニングではなく
まず「仕様変更後の姿を決める」のがチューニングなんだなと学び、
これが僕にとっての本格チューニングの第一歩となりました。
「バネを硬くしたい!」がチューニングなのではなく、「このコーナーをこういう風に駆け抜けられるようにしたい!」がチューニングです。
当たり前ですけど、当時無知だった僕は目から鱗でした。
なお、バネレートについてのディスカッションをチューナーとして以来、
僕はバネレートなどのスペックを基本的に明かさないことにしました。
ショップと僕で考えたノウハウだからと言うのもありますが、
それを差し引いてもやはりマークXでサーキットというのは特殊で、
一般的に「これくらいが常識の範疇でしょ」と思っているところに収まっていないので、
明かすことによって「流石に何かの間違いでは?」と友人から反応されることが容易に想像できたからです。
また、前の記事で書きましたが僕がこれで行くと決めたチューニングの進め方は"ステップアップ方式"ではないので「いきなりそんな仕様にして大丈夫?」みたいな心配をされるのも煩わしかったというのもあります。
僕は脚周りについてこのチューナーに全て任せると決めたわけですから、
そのチューナーが僕に対して提案した数字がすべてで議論の余地はないと思っています。
議論する気が無いのにツッコミどころを公開するのは不親切なので、
敢えて明かさないようになったわけです。(^^;)
で、こうして決めたバネレートを許容できるようなショックアブソーバーを一から設計してもらいました。
ワンオフもワンオフでベース車高調はありません。
ダンパーの筒だけ汎用品として買っているなどはありますけど、
性能はそのチューナーの意のままに設定でき、
社内完備されているダンパーテスターで特性を確認した上で車両に装着されます。
車の脚周り各部の採寸からスタートして1か月弱、
こうして考え抜かれた脚が完成。
「街乗りの快適性もサーキットの運動性も両立」という売り文句ではなく
「とにかくサーキットでは極めて狙い通り走ってくれるはず。街乗りは出来る範囲で頑張りました」という未練断ち切り仕様。
当時(今も?)量販品では存在しなかった、マークXのサーキット用車高調(ストリートもなんとか人を乗せられるレベル)が愛機に搭載されたのでした。
ワンオフってこういう世界なのねとちょっと感動。
出来てきた脚回りのドライバビリティはこれまた感激もので、
「マークXって、滅茶苦茶アンダーステアだったんだ・・・」というのが試乗してすぐの感想でした。
真面目に考えて仕様を決めた甲斐あり、今まで「前荷重にしてブレーキを残しながら・・・」とか言って曲がってたコーナーが普通にステアリング切るだけで曲がっていくようになりました。
重い車って曲がらないと思ってたんですけど、ちゃんと走るための仕様にハードを置き換えれば軽快に走るんですよ。びっくりです。
(と今書いているこの仕様ですら「あれはまだまだアンダーだった」と後に思い知ることになります。それくらい純正はドアンダーだった。)
もう、どうやって乗っても純正⇒Extageに変えた時には味わえなかった「明らかなステアフィールの違い」
を感じ取ることが出来ました。
これによって「やっぱりExtageは純正と大差なかったんだな・・・」を知り、
素人が自分の独学でチューニングするといかに迷走するかを思い知らされました。(苦笑)
さらに嬉しい誤算だったのは、未練を捨てたはずの乗り心地。
バネレートからは到底想像できないような「乗り味」を確保していました。
当然高レートなので大きな段差などではショックが大きいですが、
ショックの角が上手に丸められていて挙動の収束も速く、
これはこれで上質でタナボタでした。
「意外と乗り心地良いですよ」と伝えると「そりゃ、乗り心地悪かったらサーキットまで自走できないでしょw」と当たり前のように言われ、
「バネレートが高い=乗り心地悪い」という図式は違うんだなと知りました。
この瞬間、「高レートなバネは手が出せない」という図式が自分の中で崩れ、
今となっては滅茶苦茶極端に言えば「50キロのバネが必要なら躊躇なくそれを入れる」という感覚になっています。
もちろん、ショックがワンオフでそのバネとマッチングされる前提ですが。(笑)
なお、この時点ではショックアブソーバーに減衰調整機能はついていませんでした。
調整機構を設けることで弊害として挙動の収束性が悪くなるというネガがあるということで、基本的にシングルダンパーに減衰調整機能は持たせていないとのことで、
これも「まぁ、ダメならO/Hで仕様変えればいいかな」と思って承諾しました。
変えませんでしたが。
サス/ショックについてはこんなところですかね~。
一応本格チューニングと言うだけあって書き出すと長い。。。(^^;)
これでも省いて省いて情報は絞ったんですが(汗
まぁ、それだけ凝ったチューニングをしているということで。
あとは書くとすると、当時僕は美浜サーキットをホームコースに据えようとしていたのですが、
新しく導入した足周りの狙いは「高速コーナーでタイムを稼げること」とのことで、高速コーナーが存在しない美浜では大した効果が無いかもとディスカッションの時に釘を刺されていました(笑)
本当は鈴鹿とか、高速コーナーでタイムを稼ぐようなコースを走らせる脚の設計が得意なのだと。
美浜での実走確認では0.8sec短縮を果たしましたが、
「鈴鹿」という響きに憧れを掻きたてられたのと、
車のキャラクタ的にもタイトコーナーとストップ&ゴーで構成された美浜で頑張るのは苦しいかなと思い、この時点で「いつかは鈴鹿へ」と考え始めました。
#3へ続く。
次はバケットシートと4点ハーネス、ハイグリップタイヤ導入編です。
次回はワンオフ品の話じゃないから短めで書けるかな。(笑)
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マークX | 日記
Posted at
2017/01/14 23:34:58
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