

先日,主治医に「左手がしびれて…」と言ったら,即MRIとなった。
人生初のMRI。
想像するに,病院の奥に鎮座するMRI室は,さぞかし神聖な領域なのだろう。
広く白い部屋の中央に,SF映画さながらの巨大な装置。
「いよいよ最先端医療か」と少し身構える。
ところが,診察台に横たわると,その期待はもろくも崩れ去った。
人智の粋(すい)を結集して作られた「狭い穴」では,顔を掻くこともままならず,閉所恐怖症でなくても無心になるほかない。
まな板の鯉…現代風に言うならば,電子タバコのホルダーにセットされたスティック状態だ。
「音が大きいので…」とヘッドホンを渡されていた。
流れてきたのは『となりのトトロ』のオルゴール曲。
癒やしの代表選手みたいな選曲だ。
しかしMRIは,そんな努力を鼻で笑った。
ガガガガガ…
ギッギッギッ…
ゴゴゴゴゴ…
カ行の濁音で暴れ始める。
金属的で,硬質で,まるで壊れる寸前のバイクか旧車だ。
途中から私は,不安になってきた。
本当にこれは検査なのか?
実は私の脳に,最新OSでもインストールしているのではないか?
───記憶領域を最適化しています。不要な人格を削除しました。陽気さのアップデートに失敗しました。
そこで私は発想を変えて,騒音を受け入れることにした。
自分はヘビメタバンドのリズムセクション担当なのだと。
ガガガガガ…
ギッギッギッ…
ゴゴゴゴゴ…
そう思うことで,多少は楽しめた。
ただし演奏終了後,拍手の代わりに渡されたのは,3割負担の診療費であった。

タイ料理なんて,辛いだけである。
タイ人は,高温多湿の国で暮らしているうちに,味覚がマヒしてしまったのではないか?
そう思っていた。
だが,深く考えると妙なのである。
タイ料理は単に辛いだけではない。
酸っぱい。甘い。香草もやたら効いている。
「辛ければよかろう」ではなく,唐辛子を中心に味の調和をはかっている節がある。
四川も韓国もメキシコも実はそうかもしれない。
ところがブータンでは,唐辛子を「香辛料」ではなく,なんと「野菜」として食べているらしい。
サラダが唐辛子?
日本の食卓では「今日のサラダは定番のトマトとレタス」という話が…
ブータンだと「今日はいつもの赤唐辛子と青唐辛子」となるのである。
狂気である。
ブータンは,かつて「世界一幸せな国」と呼ばれていた。
しかし,そんなに唐辛子を食べて,お尻は平和なのだろうか?
…などと,今年最初の冷し中華を食べながら,ふと箸が止まった。
私は,和辛子を大量に入れる。
酢ダレがまっ黄色に濁る溶解点限界まで溶かす。
だから,耳かき程度の小さじでは,実にまどろっこしい。
麺をすすった瞬間,鼻腔から脳天へ黄色い稲妻が突き抜けて…
「食事」ではなく,「罰ゲーム」が始まったのかと思う。
ただし,そこからが本番。
和辛子により,チャーシューの塩気が立つ。
キュウリの青くささが締まる。
錦糸卵の甘みが浮く。
酢ダレの輪郭がはっきりする。
つまり私は「和辛子で味を破壊している」のではなく,「和辛子の花を咲かせている」のだ。
そう,これこそ繊細な味覚である。
決っして味音痴などではない。
むしろ高度な食文化への善き理解者だ。
───と,ここまで味わったところで,我に返った。
結局私は,ブータン人を笑えないどころか…
和辛子の中毒患者だったのだ。
赤唐辛子・青唐辛子・黄和辛子
一見,赤パジャマ・青パジャマ・黄パジャマと同じ早口言葉だが…
噛んだ瞬間,神経細胞への宣戦布告がはじまる。
![ウズベキスタンの自動車事情[後] ウズベキスタンの自動車事情[後]](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/049/064/022/49064022/p1m.jpg?ct=71157c83f9e2)
これはソ連時代を象徴する名車,ラーダ2106型(通称:ジグリ)。
むしろ,こんな旧車のほうが私には刺さる。
ベースはフィアット124(白黒写真)だが,「ソ連のベンツ」と呼ばれた高級車で,1970年代から2000年代まで生産。
エンジンはOHVからOHCに積み替え,未舗装路に備えて足回りや車体の強化を図り,ブレーキは雪道対策でディスクからドラムに変更された。
噂では,ロータリーエンジンを搭載したモデルも存在するらしい。
だが,マツダへのライセンス料は支払われておらず,その存在は闇である。
この2106は,ソ連市民にとっては憧れのステータスシンボルで,今でも後期高齢者世代には絶大な人気を誇るとのこと。
オーナーのおじいちゃんとは笑顔で挨拶を交わしたが,走り去ったときのドヤ顔が印象的だった。
時代は,さらに遡る。
写真は,素晴らしいコンディションのモスクヴィッチ412(1966年式)。
412の最大の特徴は,BMWの名機「M10」を徹底的に研究したアルミブロックの1・5リッター直列4気筒エンジン。
当時,アルミ鋳造技術は門外不出だったので,ミグ戦闘機の工場で作られていたという。
そのこだわりは,エンジンを斜めに傾けて設置する手法(重心を下げ,ボンネットを低くできる)までBMWにそっくりだった。
この412は,1960年代後半から80年代にかけて大量生産され,ソ連のカローラ的な大衆車として人気を博した。
しかし,前出のイタリアンデザインをまとった都会的なラーダ(ジグリ)が発売されると,次第にその座を奪われるのであった。
実はこの412は,現地ガイドO氏の愛車。
彼は,ウズベキスタンのクルマ事情をしつこく訊く私と意気投合し,観光以外はクルマのことばかりを語り合った。
そうしたら,2日目の朝,宿泊先に愛車412で突然現れたのである。
すなわち前後編に渡り,ウズベキスタンの自動車事情を書き連ねたが,すべて彼からの受売りである。
ところで,「非常に貴重な丸目2灯の412」と言われても,それが分かる日本人なんて誰一人としていない。
しかし,レアなクルマを自慢する気持ちは「みんカラ」ユーザー150万人なら,国境を越えて共感できるはずだ。
![ウズベキスタンの自動車事情[前] ウズベキスタンの自動車事情[前]](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/049/060/002/49060002/p1m.jpg?ct=f0eec0afdbf7)
どこにでもありそうな,地方都市の大通り。
だが,右側通行。
揃いも揃って,逆走しているわけじゃない。
ここはウズベキスタン・サマルカンド。
白いクルマがやけに多い。
誰の目にも,白が優勢のオセロだ。
さらによく見ると,全部シボレー。
しかも軽ワゴンまで。
つまりこの国では,街中でワンメイク・レースを開催しているらしい。
ここは海から遠く離れた大陸性気候で,冬はマイナス20℃に達する一方で,夏は45℃以上も記録する。
すなわち,ウズベク人は白いクルマが好きというより,砂漠を行くキャラバンのコーデを真似ているのだ。
次になぜ全部シボレーなのか?
国営公社ウズオート・モータースは,当初,韓国の大宇(デーウ)との合弁で操業を開始したが,2000年に大宇が経営破綻。
その後,GMが大宇を買収したことで,そのまま新たなパートナーとなり,シボレーブランドを生産する運びとなった。
さらにウズベキスタンでは,国産車に対して強力な保護政策が敷かれており,輸入車の関税率は何と100%!
輸入車なんて,とてもじゃないが手が出ないのがシボレーだらけの真相だ。
スズキ・エブリイまでシボレーなのは,元々大宇がライセンス契約で生産していたものをそのまま引き継いでいるから。
日本では,ほぼ見掛けなくなった旧型エブリイ。
だが,ウズベキスタンでは30年以上経った今なお作られ続け,愛される国民車なのだ。
どの国にも金持ちは存在する。
メルセデスベンツ・スプリンターは,カスタムされた車両でおよそ1500~2000万円なので,ウズベキスタンでは3000万円以上に相当する。
ここまでくると,もはや「走るモスク」で,道路に頭をつけて祈りたくなった。
なーんだトヨタもあるじゃん!
…と思ったら,ナンバーが「KG」隣国キルギスだった。
さすが大陸,すべての道はサマルカンドに通ず。
パトカーを見た瞬間,なぜか「善良な市民」の役作りを始めてしまうのは,どの国へ行っても変わらない。
後車はご存じシボレーだが,前車はBYD。
輸入車は原則100%の関税だが,EV車は掛からない。
ウズオート・モータースは,2024年からBYDとも提携し,着実に販売台数を増やしている。
テスラは見なかったが,中国系EV車はチラホラ走っていた。
燃料に話を移すと,日本のガソリンはレギュラーとハイオクの二種類だが…
ウズベキスタンでは,オクタン価が80,92,95,98と細かく分かれている。
値段は産油国だが日本と大して変わらない。
しかし,ガソリン車は全体の三分の一ほどで,大半はメタンガス車とLPガス車だ。
掘っても掘っても温泉は出ないが,ガスはよく出る。
だから,ガソリンの半値程度。
厄介なのは,ガソリンと比べて充填時間が5倍以上かかるそうだが,やはり値段には抗えないようだ。
これは滅多に見られない赤いパトカー。
言ってみれば,幻の新幹線ドクター・イエローみたいな車両。
ウガンダから国賓級が来日していたらしく,その先導・警護に向かっていたものと見られる。
警官がこちらをチラチラ見ていたが,「え!自分,国際指名手配犯に似てる!?」と自意識過剰が爆発し,勝手に脳内でアリバイ工作が始まった。

ウズベキスタンへ行っていた。
帰国すると,ありがたいことにコメントが多数寄せられていたが,まだ返信していない。
旅に浮かれ,みん友さんたちを忘れていたわけではない。
モバイルバッテリーを忘れ,スマホが電池切れだったのでもない。
みんカラにログインできなかったのだ。
まさかの中央アジアインターネット事情というやつ?
シルクロードは栄えても,Wi-Fiは砂漠の蜃気楼と化すのか?
理由は簡単。
Yahoo! JAPANは,欧州経済領域(EEA)およびイギリスからは利用できないのだ。
(※ウズベキスタンはEEAではないが,モバイルWi-Fiだと経由する)
建て前は,欧州の一般データ保護規則が厳格で,あやまって違反すると莫大な制裁金を科されるから。
でも本音は,日本の広告収入で運営しているのに,ヨーロッパでは誰も見ていないからといったところか。
つまり私は,みんカラのサイトをのぞけない環境に置かれていたのである。
砂漠でも,山岳地帯でもない。
ただのウズベキスタンなのに。
シルクロードでは東西交易が行われていたというのに,私はコメントの返信ひとつ届けられなかった。
中央アジアには国境が多いが,今回分かったことがある。
Yahoo! JAPANは,入国審査をパスできないということを。
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