自動車教習所で出会った少女と弟さん

もう数十年も前の話。毎年この時期になると想い出すことがあるんですよね。
お時間のある方はお付き合いください。

高校卒業を控えた2月上旬、仮免を取得し路上教習に入っていた私。路上教習を終え、次回の教習予約を取るため待合室で待っていると「あの～、ひょっとして○○高校のこういちさんではないですか？」と一人の少女に声をかけられる。
ん？どうして俺のことを？そう思い尋ねてみると、なんでも高校の文化祭で歌っていた私を見たとのこと。へ～、結構有名になったもんだな～などと調子こいていたのもつかのま、できたら私の弟にギターを教えて欲しい。そういう話になり。
聞いてみると彼女は私と同級で隣町の高校3年生とのことで、中学3年生になる弟さんが居るという。私にとっては初対面の彼女。とは言え、こうして同じ教習所で出会い、それも私の歌とギターを聴き、弟さんにギターを教えて欲しい。そう言われて悪い気はしないですよね。
二つ返事でokをした私は数日後、彼女の家へギター持参で向かうことに。そこには屈託のない笑顔で私を待っていた弟さん。ですが車椅子に乗っていたんです。小さい頃の病気が要因となり、脚に障害を持ってしまったとのこと。運動ができないので趣味は音楽。特にフォークが大好きという。通常、ギターが好きならば同級生等の家に集まり、皆であーでもない、こーでもないと練習できるはず。ですが彼はそれが叶わない。ならば私を家庭教師に？そういう気持ちが彼女にはあったのかもしれない。

彼の好きな曲を中心にギターを教えること2か月。私は高校を卒業。そして晴れて普通免許を取得。彼女とは教習所で会うことはなくなったもの、週に一度ペースで彼女の家に訪問。そして弟さんと楽しいレッスンの時間を共有した。
そんな彼も梅雨の時期には何でも弾けるようになり、ギターを弾き語る模様を収録したカセットテープ。それをプレゼントしてくれるように＾＾。
そして夏、彼は高校の文化祭で数曲を歌った。姉である彼女と文化祭に出向いた私。皆は足でテンポを取るところ、彼はそれができない。けれど、そのリズム感、そして歌に熱中する姿に私は少しばかり涙腺が緩んだかな＾＾；

弟想いの優しいお人柄、そして少しばかり美人系だった彼女。私は交際を申し込むも、弟に障害があり、一生面倒みないとなりません。ですのでお付き合いはちょっと。そう丁寧にお断りされる。
あとにも先にもフラれちゃった唯一の経験（笑）
その2年後、彼女の弟さんと街でバッタリ。
あの～、姉はこういちさんのことが大好きだったんです。だから僕にギターを教えてあげてと頼んだんです。そのへん、わかってあげてくださいね、と。
二十歳の私は笑顔を作る余裕はなく、彼の前で泣いてしまった。
もう少し私が大人なら、彼女の人生も変わっていたのだろうか？
そんなたわいのない話です。
お付き合いありがとうございました。