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2011年11月17日

日経コンストラクション2011年11月14日号

日経コンストラクション2011年11月14日号  今朝の通勤のお供は、職場回覧の日経コンストラクション。
 今号の巻頭特集は、トルコ・イスタンブールのボスポラス海峡鉄道トンネル掘削工事「マルマライ計画」の現場。当然トルコ政府の発注工事だが、日本の大成建設が地元企業2社とJV(共同企業体)を組んで参加している。


 トルコの国土は、文明の十字路・イスタンブールにあるボスポラス海峡でアジア側とヨーロッパ側に別れる。これまでに2つの道路橋が架けられ陸続きになったものの、鉄道ルートは150年前のオスマントルコ帝国時代に最初の計画が持ち上がって以来、海峡の両側、ヨーロッパ側のシルケジ駅・アジア側のハイダルパシャ駅で途絶したままになっている。
 その鉄路を繋げようと、2004年から5年間の工期で着工。しかし工期は遅れに遅れ、竣工は2013年秋の予定となった。

 トルコのゼネコンは、日本から参加の大成建設ほどではないにせよトンネル掘削の経験・技術は豊富で、自前の技術者も揃えている。作業員は体力に恵まれ真面目な人ばかり。なのに工期が大幅に遅れたのには理由がある。



 遺跡の存在だ。
 世界でも最も早くに文明が開けた地中海・エーゲ海沿岸地域。ギリシャ時代~ビザンチン帝国~イスラム化~オスマン・トルコ帝国と、それぞれの時代の遺跡が積み重なった上に現在の市街地が造られている。
 その下にトンネルや地下駅を造ろうものなら、何かしら出てくるのは必然である。



 トルコと領土を接し、同じく古くから文明が栄えたギリシャ・アテネの地下鉄工事の話だが、地下鉄工事を進めていったら遺跡に突き当たり、発掘調査をしたところ次々と貴重な遺物が出土。地下鉄工事を中断して更に発掘していったら、地下鉄のトンネルを掘削する予定だったレベルまで掘り下げていってしまい、結局地下鉄ではなくなってしまった(=明かり区間として開業)、という笑い話のようなエピソードがある。


 さすがにそこまで大規模な遺跡ではなかったようだが、ヨーロッパ側のターミナルで、かの有名な「オリエント・エクスプレス」の終着駅シルケジの地下駅建設工事現場では、東西2箇所の換気たて坑からプラットホームや通路の掘削工事を進めるはずが、東側についてはビザンチン帝国時代の遺跡が出土してその下へ掘り進めることができず、結局西側からのみ工事を進めていったそうだ。

 他にも、ボスポラス海峡へ向けて掘削を進めるTBM(トンネルボーリングマシーン。トンネル断面と同じ大きさの筒状をした巨大掘削機械)が、やはり発進予定場所での遺跡出土で発進が3年以上遅れたエピソードが紹介されている。


 この工事のハイライト、ボスポラス海峡海面下の部分は、先のTBMで掘り進む「シールドトンネル」ではなく、「沈埋トンネル」という工法を採用している。
 「沈埋トンネル」を簡単に説明すれば、海や川を潜るトンネルを建設する際、地面に穴を穿つのではなく最初からトンネルの形にコンクリートの箱(沈埋函)を作り、それを船で運搬し注水して沈め、底に固定したら水を抜きトンネルにする、というもの。
 言葉では簡単だが、ボスポラス海峡はエーゲ海につながるマルマラ海~黒海に挟まれた複雑な海流が渦巻く海域で、水深は50m以上。30階建ての高層ビルを横倒しにしたような巨大なコンクリート製の函を運び、寸分違わぬ精度で設置場所に沈めるのは至難の業。一般的に沈埋トンネルは都市内の運河や浅い海での施工例が多く、水深50mを超える海底への沈埋は実績がない。

 大成建設は潮流や気象のデータを長期に渡り収集。日本に持ち帰って解析し、沈埋函設置の精度に悪影響を与えない潮速3ノット以下になる条件を割り出して施工の際の基礎データにしたという。
 そんな地道な努力の甲斐あって沈埋トンネルの敷設は既に全て完了。最深部で海面下60m地点での沈埋函接合は、現時点での世界記録となっている。

 その沈埋函に、陸上部から掘り進んできたシールドトンネルが接続するのだが、その工程がまた驚く。
 最後に設置した沈埋函にだけ先端部に「受け」を設け、シールドトンネルを掘り進めてきたTBMを受け止めて周辺を止水。TBMの外殻はそのままトンネルの一部として埋め込んで貫通させる、というもの。
 これまた言葉では簡単だが、列車が通るトンネル断面と同じサイズの巨大なTBMを、全く先が見えない地中において誤差数センチの単位で操作し掘り進めて行くのだ。ちょっとでもずれれば沈埋函に設置された「受け」を破壊してしまったり、止水が上手くいかなかったりする危険がある。
 この神業のような工程も今年2月、無事計画通りに完了。ボスポラス海峡の海底下をアジア側からヨーロッパ側へ、ヨーロッパ側からアジア側へ風が流れ、晴れて橋以外のルートで陸続きとなった。



 こんな苦労を積み重ねて施工した区間も、列車が通るようになれば2分以内に通り過ぎてしまうことになるという。

 利用者がどれだけ日本の貢献を認識してくれているかは分からないが、少なくとも私はイスタンブールを訪れる機会があったら、日本人として誇りをもって海底トンネルの旅を楽しんで来たい。


 その頃には、ボスポラス海峡を行き来する格安のフェリーは廃業してしまっていることだろう。
 フェリー利用者で賑わう港も、少々寂しくなってしまうかもしれない。

 一度訪れたときに食べた、港の水上屋台で売られているイスタンブール名物「鯖焼きサンド」だけは、昔ながらの味を保っていてほしいものだ。





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Posted at 2011/11/17 08:55:45

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この記事へのコメント

2013年10月29日 22:20
こんばんはv(^o^)

日本の海外への土木や建築の技術協力はやはり、すごいのですね♪

技術といえば…

奥さんの実家が消費税アップを踏まえて、母屋と隣接するアパートのうち一棟を共に、某ハウスメーカーで建築中ですが、基礎の構造も日進月歩で、私が家を建てた15年前と比べると大分変わってきてるので感心しています。
コメントへの返答
2013年11月8日 22:02


 こんばんは。
 ご返事が大幅に遅くなっただけでなく、順番が前後してしまって失礼しました。


 海外展開は技術力だけでなく、現地企業との協業や優秀な作業員の確保、もちろん日本とは異なる治安状況への対処など総合的な監理能力が問われます。建設技術者兼外交官兼駐在武官兼商社マン兼手配師……と無数の役割を少数精鋭でこなさなければ、竣工は難しくなります。

 その上で、日本の誇る技術力を如何なく発揮できたのですから、業界人としては喜ばしい限りです(笑)。



 個人住宅や小規模の建築物の技術的な進歩は、職人さんの減少が大きいですね。
 昔ながらの大工さんや配管工さんが少なくなっており、不慣れな作業員でも確実に施工ができる工夫が目立ちます。

 まあ、施主であるアキラックスさん側としても、技能職に依存しない分労務費を圧縮できますし、工期が短縮されればそれだけ諸経費も低減しますから、恩恵は少なくありません。


プロフィール

「育児 http://cvw.jp/b/1043160/47663127/
何シテル?   04/18 19:29
 建設業界で禄を食む文系出身(経済学専攻)のプロフェッショナル・エンジニアが、愛車整備・政治経済・文化学術・スポーツそして土木施工の現場で日々記した野帳を公開し...
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