請求

　午前中に余りに多量の汗をかいてしまったため、昼食後の昼休み残り時間を利用して着替えを買いに「ユニクロ銀座店」に行った。
　地方勤務だったころは、着替えを持たずに出かけた出張先のユニクロで衣料品を買い込むことがあったが、東京勤務になってからは初めて。
　インナー代用のドライ生地無地Tシャツ、黄色いオックスフォードシャツの2点。処分価格で￥1,490.-也。

　何故そんなに汗をかいたかと言えば、東上線で発生した人身事故。
　たまたま都心に出向く用事があった長男・ママと一緒だった私は、東上線利用を諦め川越線・埼京線経由で都心へ向かうため、義母のクルマで川越線最寄り駅まで送って貰った。
　その川越線も、元々の利用者に加え東上線からの振替え客で大混雑。すし詰め・蒸し風呂状態のまま新宿まで行き、中央線・山手線と乗継いで有楽町で下車。銀座の職場まで残りの区間は、どうせ大幅遅刻だと開き直って歩いて向かった。
　遅刻時間約50分。それだけ余計に通勤時間を要したが故の疲労感と、普段の通勤よりも￥210.-高いJR料金負担(私はルートを縛られたくないので通勤定期を買っておらず振替乗車が適用されない)、そして多量の汗に濡れてベタ付く衣服が残された。


　朝のラッシュ時に1時間半もの長い間電車を止め、大勢の人が迷惑を蒙ったのは言うまでも無い。
　死者に如何なる事情があったのか知る由もないし知りたくも無いが、多くの善良な鉄道利用者の怒りと恨みを買う死に方だけは選択するべきでなかった。
　今、目の前に死者が居たなら、私は臆することなく余計な出費となった衣服代￥1,490.-と交通費差額￥210-の合計￥1,700.-を請求するだろう。
　払って貰うまで、あの世になど行かせてたまるか。

　￥1,700.-の価値しかない命。しかし、最低賃金水準でも3時間弱働けば払える金額だ。生きて一生懸命仕事をすれば、もっと大きな財産を生み出せた。
　折に触れて記しているが、私は自殺を認めない。
　死者に鞭打つ物言いになるのを承知で、遺された者達から「鞭打たれるような」死に方だけはすべきでないと、汎く呼びかけたい。