杭打

　全国紙・産経新聞が運営するニュースサイト「産経ニュース」の配信記事から『旭化成、マンション千棟以上調査へ　データ取得失敗で転用　横浜のマンション傾斜』に懸念す。
　　
　　
　記録的豪雨に因る鬼怒川の堤防決壊現場に程近い家屋が、濁流に呑みこまれながらも倒壊することなく耐え抜いたことが話題になったのをご記憶だろか。
　旭化成が「へーベルハウス」ブランドで販売している戸建て建築で、その強健さが激甚なる災害を通じて、図らずも証明された形になった。
　　
　　
　ところが僅か1ヶ月余り後、その信頼を大きく傷付けるスキャンダルが発覚してしまった。
　「へーベルハウス」の材料を供給する他、基礎および地盤改良用の杭の生産・施工を手掛ける旭化成の子会社・旭化成建材が、基礎杭の打ち込みに際し杜撰な施工をした結果、横浜市都筑区のマンションが傾く事態となっている。
　　　　
　　　　
　化学や建築のイメージが色濃い旭化成が、土木分野に進出していることは、建設業界関係者を除けば知らない人の方が多いかと思う。旭化成が開発・生産する杭は、施工性の良さやスペックの高さから一定の評価を得ており、国・地方自治体発注の公共事業でも導入している例が見られる。

　　　　　　　
　民間工事では役所ほど厳密にチェックをしない、とも言われるが、高層建築があからさまに傾いているのだ。公共工事でも同じように杜撰な工事をしながら、竣工検査や会計検査院のチェックをスルーしてしまっている物件が、どこかに埋もれているかもしれない。

　会計検査院の資料を眺めてみると、基礎杭の施工不良は古典的な指摘事例で、例年どこかの業者がやらかしている。旭化成および関連する協力企業が、故意か過失かは別にして不適当な施工をしていないか。こちらも総チェックを要するものと考える。
　
　
　マンションに関連しては、基礎と躯体を接続する「免震支承」の不正が発覚。原因企業の東洋ゴム工業では、鉄道車輌・船舶向けの防振ゴム製品でも不正があったことが先頃発覚し、事態は泥沼化しつつあるように見える。

　建設業界および材料業界でスキャンダルが続くと、建設投資全体に悪い影響が波及しかねない。

　地中深くで100年以上は健全に機能する筈の杭が、脆くも潰れ沈み、我々が安寧な生活を送る空間が傾いて、いずれ崩れ去るように。


　関係者の猛省と、迅速果敢な善後策推進を請う。