相互

　全国紙・産経新聞が運営するニュースサイト「産経ニュース」から、同紙にしては珍しく地に足のついた良質なコラム『【ソウルからヨボセヨ】日本人学校移転　韓国の世話になった過去も』に注目。

　諸般の事情で記事にしていなかったが、職場の移転と年度末の残務整理で忙しい私を除き、家族は先週末からソウルに滞在、本日帰国した。
　ただし春休みの優雅な海外旅行ではなく、ママの仕事に子どもたちが随伴、昼間は保育所代わりに現地の英語学校に通うスタイルは、ここ数年のソウル訪問で定着している。


　滞在中は北朝鮮の軍事挑発が懸念されたが、そっちの方面では若干報道が騒がしい程度で実害は無し。
　ただ、韓国社会の実情が垣間見えるエピソードがあった。

　一緒に英語を勉強していた韓国人の姉妹が、春からアメリカに移住するという。
　韓国でインターナショナル・スクールに通うと、地政学リスクを抱えるのに加えて授業料に年間数千万ウォン(数百万円)を要するため、一思いに一族でアメリカへ行って暮らすのだそうだ。

　あぁこの国は、こうやって有能な人材と国富を喪失していくのだな……と実感させられた。



　さて冒頭のソウル日本人学校、そして移転が検討されている東京の韓国人学校に関する記事。
　荒唐無稽な罪状で支局長が長期間拘束された産経新聞ながら、極めて常識的なコラムが執筆されて驚くと同時に、怨恨よりも良識が勝ったことに安心した。

　外交や貿易、その下地となる国際交流は、相互に恩恵を与えることで成り立つもの。
　ソウルの日本人学校が、この先どうなっても構わないというなら韓国人学校を追放してもいいが、そうなって困るのは現地で活躍している在留邦人およびその子女であって、日本国内で騒いでいる知的水準の低い不満分子ではない。

　世界に打って出る日本人の脚を引っ張るが如き愚行が罷り通れば、国際社会における日本のプレゼンスをも低きに貶める結果になるだろう。



　産経新聞とて、支局長を人質に取られた恨みをさて置き、このような佳き主張を展開できるのだ。
　日本人の総意として、領土や歴史認識の問題と明確に切り分け、寛大に推移を見守るべきだ。



　日本でヘイトスピーチを繰り広げる愚か者どもと同様、韓国々内に居残って反日デモに明け暮れる人々は如何ともしがたいが、韓国人とて偏狭な愛国者ばかりではなく、現実を直視し財産を移して国を出る人々も多い。

　我が子たちと机を並べた姉妹はアメリカへ行ってしまうが、中には日本へ行く家族もいるだろう。
　どんなに対立が先鋭化する国の民であろうと、「知日派」を殖やす努力を怠ってはならない。