半旗

　一般財団法人東京六大学野球連盟のプレスリリース『4/16試合開始前、 九州地方での地震の犠牲者の方々に黙祷を捧げました』に瞑想す。

　この非常時に、野球観戦など何事か……と思われる向きもあろう。
　しかし我らは半旗を掲げた神宮球場で、全力でプレーし、勝利を祈り、そしてエールを送る。



　今日の試合でフィールドに立った選手には、立教大に福岡県・西南学院高出身の田中和基(外野手・4年)／長崎県・長崎日大高出身の上野敦大（捕手・4年）、対戦した法政大には、当に熊本県立多良木高出身である中村浩人(捕手・2年)がいた。

　彼ら被災地出身者のために、彼らを送り出した家族のために、彼らを育てた地域のために、我らは神宮に集う。


　その想いが結集したからか明治大・東京大・立教大・法政大いずれの応援席も、ゲーム後のエール交換では、いつもの週末より大きな声が出ていたように聴こえた。

　今はエール捧げ、応援歌・校歌を斉唱することでしか気持ちを表現できないが、神宮の応援席を離れて日常生活に戻った時、第2週・初戦のエール交換に立ち会った人々が皆、一斉に被災地支援へ奔ることだろう。




　今日の第1試合、先週の対早稲田大戦1回戦で0－1と惜敗した東京大は、強打者を揃える明治大相手に、またもエース宮台(湘南高・3年)が好投。9回まで双方得点無く、まるで先週のカーボンコピーのような展開となった。
　東京大にとって惜しむらくは、9回裏に明治大のキャプテンにしてエース柳(横浜高・4年)に自らスクイズを決められてサヨナラ負け。試合結果までカーボンコピーしてしまった。


　第2試合は、第1週でいいところなく慶應大に連敗し未だに勝利の無い法政大と、現役最多勝エース澤田(大阪桐蔭高・4年)をキャプテンに据えて今世紀初の優勝を狙う立教大の対戦。

　澤田の立ち上がりを攻めて、法政大が1回表に先制するものの1点のみ。
　一方の立教大は4回に2点を挙げて逆転、6回にスクイズで中押ししてリードしたまま9回を迎えた。

　勝ち点を得るためにも初戦を拾っておきたい法政大は、ここで粘りを発揮し、立教大の守備の乱れから併殺を免れるなど運も味方して3点を挙げ一挙逆転。系列校の生徒を動員し、最上段までぎっしり観客が詰まった法政大応援席は歓喜に包まれた。

　だがドラマは終わらない。
　後の無い立教大は9回裏、先頭打者の捕手・高田(浦和学院高・3年)がしぶとく出塁。
　送りバントと四球で1アウト1・2塁となったところで、法政大のリリーフ上條(市立川越高・2年)がまさかの大暴投、一挙セカンドからランナーが生還し同点。更にその後はストライクが殆ど決まらぬまま、四球を重ねて押し出しサヨナラ負けを喫した。


　同じ日で2回サヨナラゲームを観られるのは、非常に珍しい。
　半旗が見守るフィールドで繰り広げられた熱戦を、私は末永く記憶に留めることだろう。