減給

　全国紙・産経新聞が運営するニュースサイト「産経ニュース」の配信記事から『【三菱自動車不正】三菱自動車が賃金カットを組合側に提示　水島製作所の１３００人』に嘆息す。


　皮肉にも今日は、労働者の祭典が挙行されるメーデー。しかし、かくなる記事が「労働者の日」に報じられたことを、自動車ファンではあるものの所詮は門外漢でしかない私如きが皮肉と切り捨てるには、影響が余りに大きい。

　尤も三菱自動車労組が所属する自動車総連および金属労協は、日本最大の労働団体・連合傘下で、既に先月末にメーデー中央大会を済ませている。
　民主党が民進党に衣替えし、政権交代へ向け野党共闘を本格化させようと躍起になる中、最大の支持母体である連合にとって極めて深刻なニュースの発表がメーデー中央大会後・大型連休真っ只中の5月1日にずれ込んだのは、何かしらの意図が働いたのか。


　愚かな経営者を戴いていたが為に一時帰休を強いられている、三菱自動車・水島製作所の従業員の苦境を救うだけなら、連合傘下の組合を総動員し、連帯してカンパを送るなどすれば何とかなろう。
　特に日産自動車の労組は、自らの問題として主体的に協力を申し出るべきである。

　だが苦境に陥っているのは、水島製作所の1300人だけではない。
　出入りの部品メーカー・プラントのメンテナンス業者・水島製作所周辺の小売店・販売する商品を喪った全国のディーラー……。これら全ての関係者を救おうと思ったら、それこそ国が補正予算を組まなければならないような、莫大な政策コストを要する経済対策となってしまうだろう。


　自動車産業の裾野の広さを改めて認識すると同時に、その絶大な影響力をハンドリングするに見合う経営能力を、三菱自動車のトップは備えていたのか。

　問題は三菱自動車にとどまらない。
　先ごろ発覚した、トヨタ自動車系列の自動車部品メーカーの役員(トヨタ創業者の血筋)による新卒採用予定者へのセクハラ容疑について、損害賠償を求める訴訟が起こされ近々裁判が始まる。
　日本国内の訴訟故に、仮に完全敗訴したとしても数百万円の賠償額で済むが、これがアメリカで提訴されていたら懲罰的な賠償金が加算されて、数百億単位の損失となっていた可能性もある。

　従業員および関係者への誠実な対応と並行して、事業存続が危ぶまれるような致命的リスクが内在していないかどうか、業種や企業規模を問わず点検が必要なように思う。



　結局のところ企業スキャンダルで最も影響を被るのは、詐欺だ返品買取だとがなりたてる消費者の罵倒からすれば、声など無きが如きメーデーに参集する被用者なのだ。