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2018年01月29日

豊予

豊予  全国紙・読売新聞が運営するニュースサイト「YOMIURI ONLINE」の配信記事から『大分-松山、海底トンネル新幹線「黒字も可能」』に注目。

 四国・愛媛県と九州・大分県とを隔てる豊予海峡に海底トンネルを穿ち、現在は九四国道フェリーにのみ依存する両地域の交通を、劇的に変革しようとする試み。

 この区間は、整備新幹線の基本計画図でもラインが引かれており、世が世なら関西から明石海峡・紀淡海峡鳴門海峡備讃瀬戸を越え四国に渡った新幹線が、終着を九州の各都市に定め疾走していたかも知れない。


 東京~名古屋~大阪の区間は、既存の東海道新幹線に加え、北陸新幹線の大阪延伸/リニア中央新幹線の建設が進めば、高速鉄道がトリプルトラック化する。

 一方、大阪~九州の区間については、当面山陽新幹線に依存する他無い。
 観光振興や地域開発など沿線住民が直接的に享受する効果のみならず、九州への別ルート整備により、昨今頻発する激甚災害に対するレジリエンシーを確保できることを思えば、全国的に福音をもたらす計画である。

 決して目新しいプロジェクトではないが、インフラ整備に携わってきた鉄道ファンとしてはロマンを感じずに措かない。

 但し、そんな私だから指摘しておきたい問題点が幾つもある。



 既に旧鉄道建設公団(現鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が、独自に基礎的な地質調査を済ませた結果として、海底トンネルの建設は可能であると発表している。

 異常出水や数多の人的犠牲を払い、極めて困難な工事を成し遂げて竣工を見た青函トンネルの実績を見れば、豊予海峡トンネルも建設可能と言い切るのは、根拠の無いことではない。
 潮の速いボスポラス海峡の深海に、沈埋函をピッチリ沈めて海底トンネルを築いただけでなく、アプローチ区間は地上から巨大シールドマシンで掘進し、ドンピシャのポイントで海底トンネルと接続させた(もし僅かでもズレたら浸水事故に曝された)神業的な施工も、日本のゼネコンはやってのけた。

 しかし施工現場は、日本を横断する大断層帯・中央構造線に寄り添う形になる。
 大小の断層と、それらがもたらす地下水の湧出、坑道を圧し潰そうとする強大な地圧が、行く手を阻むであろうことが予想される。


 技術的にトンネル建設は可能である、という判断と、採算を前提に組んだトンネル工事予算は、必ずしも、いや必ずと言っていいほど両立しない。
 完成を目指すのであれば、恐らくはあらゆる土木技術を投入した総力戦になる。着工当初は想定していなかった、高価なマシンや材料が逐次投入されれば、施工費は簡単に数倍水準へ跳ね上がる。
 それらを負担してもなお、黒字を確保できるかは、現時点で誰も分からない。

 国の財政が厳しい状態に陥る中、豊予海峡トンネルに予算を付けるより、紀淡海峡トンネルもしくは架橋/大鳴門橋の鉄道施設整備/瀬戸大橋の複々線化(西側に新幹線複線+東側に在来線複線。西側端に新幹線上り線を新設、現在の在来線上りが新幹線下り線に、在来線下りが新しい在来線上りに、東側端に在来線下りを新設)が先行するのではないかと思われる。



 施工費の問題はさておき、日本の誇る土木技術が輝かしい勝利を飾り、晴れて豊予海峡に単線の鉄道トンネルができたとしよう。
 軌道を敷設し、列車を走らせる段になってから、新たな問題が出てくる。

 日本の高速鉄道は、単線運転を前提にした信号システムを組んでいない。
 豊予海峡区間の為だけに、新たな信号システムを開発しなければならないが、その費用は誰が負担するのか。


 また建設費用を軽減する目的で、単線トンネルとするのも短絡的に過ぎる。
 安全性やキャパシティの面で、複線で建設した場合に比べ相当に不利である。

 新幹線が四国へ渡るルート上にある大鳴門橋が、実質的に単線運用しかできず、ボトルネックとなる可能性を別項で紹介しているが、あくまで旧式の重たい車輌で16輌フル編成を組んだ前提であり、輸送需要に見合った短編成化や、軽量な車輌開発を進めれば複線運用も可能であるものと考えられる。

 豊予海峡トンネルを単線で完成させてしまってから、ボトルネック状態が顕在化、改めて輸送力増強や安全性向上を志向し、複線化用の新たなトンネルを掘り直すくらいなら、最初から複線断面のトンネルを穿った方が安上がりだ。



 ここまで、記事で紹介されている大分市側の検討および分析に対し、かなりネガティヴな意見表明をさせていただいたが、決して大分市の意見を否定するために書き記したわけでは無い。

 記事を読んだ僅かな時間だけでも、このような想定ができることに鑑み、皆でプロジェクトをブラッシュアップ→将来の事業化実現へ繋げていくことができれば、先に述べた通りインフラ整備に携わる鉄道ファンとしては、望外の悦びである。




ブログ一覧 | 鉄道 | 日記
Posted at 2018/01/30 22:04:11

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