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2018年05月18日

係数

係数  クオリティの高い鉄道関連記事の発信が多い老舗有力経済誌・東洋経済が運営するサイト「東洋経済ONLINE」の配信記事から『銀座線や井の頭線…「稼げる路線」の共通点 ~大手・中小私鉄と地下鉄の営業係数を試算』に注目。

 ライターである鉄道ジャーナリスト氏が独自に分析した「営業係数」に関する記事。
 旧国鉄を知っている一定年齢以上の方であれば、100円の収入を得るために要したコスト=営業係数というキーワードをご存知のことだろう。

 巨額の赤字を垂れ流す国鉄=日本国有鉄道を改革する過程で、全国に張り巡らされた2万キロ超の路線それぞれの収支を分析、地方ローカル線の不採算性を「見える化」し、廃止を促進するツールとして使われた。


 そもそもネットワークとして機能する交通機関の、区間ごとに収支を算出することへの妥当性については、研究者の間でも議論がある。
 JR山手線は旧国鉄の時代から稼ぎ頭として君臨してきたが、山手線内だけで行程が完結する旅客が全てではない。

 営業係数が数千にも上った北海道の赤字ローカル線の無人駅を発ち、幹線を乗り継いで山手線に乗った旅客だっている。つまり大黒字の山手線利用者の一部は、赤字の路線も利用して供給されている。
 ローカル線の収支が悪いからといって切り捨てれば、経路にあたる幹線や山手線の旅客が減少するリスクがある。


 なお、現在旧国鉄の資産を引き継いでいるJR各社始め、鉄道会社は「営業係数」の分析をしているかどうかも含め公表していない。
 実際に西武鉄道の株主総会で見られたが、株主から赤字路線にターゲットを絞った廃止を提起されたり、経営責任を問う訴訟を起こされる可能性を考慮しているものと想像する。

 フリージャーナリストの個人的分析であり、大まかな路線別の特徴しか分からない旨断ってはいるが、影響の大きい経済誌が公表したコンテンツ故に、今後の鉄道業界に悪い影響(地方路線の切捨て、新線整備計画の中止等々)を及ぼさないか、危惧するところである。




 さて、記事中の営業係数について、弊ブログ主の主観に基づいて抽出した「ツッコミどころ」を指摘しておきたい。

 優秀な営業成績を挙げている路線として京王電鉄・井の頭線が挙げられている(2ページ目)。
 沿線住民は概ね平均以上の所得でマナーもよく、全区間が都市街区内にあって、駅名にもなっている東京大(駒場東大前駅)・明治大(明大前駅)など大学キャンパスを抱える。

 郊外路線のように、一方向だけがラッシュで猛烈に混み、反対方向はガラガラ…という状況は、井の頭線にはない。上り・下り関係なく利用者が多いため、効率的に利益を上げている。

 記事では、短距離需要が多く、割高な初乗り料金の収受が増えるため利益が高いかのように分析しているが、私としては輸送需要が時間帯・方面別で偏っていないことが大きいと考える。


 そもそも初乗り料金とは、駅の設置・運営や、出札・改札に要するコストを賄うために設定されているもので、短距離利用客が増加することで利益が膨らむのであれば、初乗り料金の縮減が検討されねばならない。

 昨今はICカードの普及で改札は大幅に削減され、駅の運営コストが下がっているのに加え、相互乗入れ区間の増加で、乗換え無しで複数の鉄道会社線を利用できる。
 特に複数の鉄道会社に跨る運賃計算は、都度初乗り料金を適用するのではなく、通算されるべきである。




 次いで、東武鉄道内での収支差(4ページ目)を問題提起したい。
 東武鉄道全体としての営業係数は82.1で黒字となっているが、浅草起点のスカイツリーライン系統とは独立して運営されている池袋起点の東上線は、営業係数が62.5で大幅な黒字を計上している。

 スカイツリーライン単独の営業係数67.1と比較しても上回っており、東上線の黒字がスカイツリーライン系統の赤字補填に使われていることが明白である。

 東上線の利用客に、スカイツリーライン系統から流れてくる利用者は極めて少なく、赤字を負担してまで東武鉄道のネットワークを維持する動機が、東上線側には乏しい。
 
 東上線沿線に暮らすヘヴィー・ユーザーとしては、稼いだ黒字額に見合う設備投資(志木以北の複々線化など)を要求し、受容れられない場合は、いっそ分離・独立戦争を仕掛けたくなる(笑)。
 或いは東急電鉄の介入を仰いで、東上線系統だけでも東急グループに組み込んではくれまいか。




 最後に、東京メトロ南北線の営業係数(5ページ目)について論じる。
 東京メトロ管轄路線のうち、南北線だけが赤字(106.2)となっている。

 6両編成で運行され、輸送力が銀座線・丸ノ内線よりもやや大きい程度しかない一方で、他の路線の下を潜るように深いところを通され、長大にならざる得ないエスカレーター運行の電気代や、湧出する地下水の処理に莫大な費用を要しているからであろうか。

 この辺り、もっと切り込んだ分析が見たいものであるが、さりとてこの赤字を以て、南北線の存在価値が下がるものではない。

 東京都心を南北に貫く南北線は、他路線がストップした場合の代替経路として重宝されている。
 ネットワークを多重化することによる便益は、通常運行の状態では見えてこない部分が大きいため、南北線の営業係数が多少悪くても何ら問題は無い。

 この辺りが、前段で申し述べた「営業係数」に基づく分析の限界なのである。



 各位、ご自身が利用されている(た)路線の状況を確認されてみては如何だろうか。




ブログ一覧 | 鉄道 | 日記
Posted at 2018/05/20 18:10:36

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