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イイね!
2021年07月18日

私有

私有  アメリカのニュースネットワーク・CNNの配信記事から『建造費390億円、自家用豪華列車のコンセプトを披露』に注目。

 鉄道に難する夢のある話題……と言えなくもないが、鉄道ファン一般の求めているものか、と問われると、些かヴェクトルが異なるような気もする。
 鉄道好きが愛でる「鉄道」とは、私的かつ独占的に豪華さや利便性を享受するものではなく、まさに「社会的共通資本」として公益に資するインフラとしての「鉄道」なのではないか。
 だからこそ、鉄道マンは被災地へ送る石油製品を満載したタンク貨車の妻面に「がんばれ」「まけるな」とメッセージを残し、それを見つけたファンを感動させるのである。


 さて冒頭記事の内容に戻ると、コンセプト云々とは別に、鉄道関係者が一体どこまで企画に携わっているのか?と疑問を呈さずにはおかない。

 まずは、車輌のスペックであるが、14両編成で全長400mとなっている。
 イラストを観るに、1両目は動力車、2両目からが実際の輸送に用いられる客室等を備える付随車となっていて、更に2両目後ろ側の台車からは連接構造(車輌間の連結部真下に台車がある)であるかのように描かれている。
 これは、仏・TGVや独・ICEの初期編成など、高速列車が採用する車輌構成に似る。

 一般的にヨーロッパで用いられている鉄道車輌は、国境を越えて運用される機会が多いため国際規格が定められており、車輌長は大きくても25~26.5mに設定している。
 仮に26.5mの車輌を14台連ねても、編成全長は371mにしかならない。
 つまり冒頭記事の列車は、1両当りの長さが現行規格よりも長く(約28.6m)なってしまう。

 この差は決して小さくなく、もし実際に走らせようものなら、駅ホームや信号機支柱に車体をぶつけまくり、まともな姿で目的地に辿り着くことはなかろう※。

※連接構造を採用していれば、車体中心部がカーヴ内側へ大きく迫り出す形になる。これが一般的なボギー構造(車体端部寄りに台車がある)の場合は、カーブ内側だけでなく、車体端部がカーヴ外側にも大きく迫り出す。

 因みに、近似の車輌構成である仏・TGVの車輌長は、編成前後の動力車部分(2両)が22.157m、動力車次位の客車(2両)が21.837m、その他中間車(6両)が18.7mとなっており、編成長は冒頭記事の列車の約半分(200m強。但し2編成を連結しての運用も多い)。車体幅を同じとして居住性を確保したいのであれば、車体長も近い値に納める必要がある。
 なお、日本の新幹線(フル規格)は1両当り25mで、東海道新幹線では16両が連なって400mの諞成長となっている。


 もう一つ。
 その車輌構成のうち、端部に専用の動力車を置く方式に、合理性が感じられない。
 時速200㎞以上の高速で恒常的に走行するのであれば、空力性能まで考慮してデザインされた専用の動力車を配置するのは合理性が認められるが、時速160㎞程度であれば既存の機関車でも十分に対応できる。
 専用の動力車を組み込んでヨーロッパ各地に乗入れようとすれば、それぞれの地域で用いられている架線電圧および信号システムに対応するべく、その全ての機器を搭載しておかねばならない。
 専用の動力車を持たない付随車のみの編成であれば、乗入れ先の地域で運行されている機関車を借り、牽引して貰えば済む。

 ヨーロッパの国際列車は、日本ではほぼ絶滅してしまった機関車牽引の客車編成が今なお多いのは、その方が動力系および保安系の構造を簡素化でき、かつ汎用性・冗長性が高いからである。


 このように、技術的には雑な面が多いが、そのコンセプト自体は批判されるようなものではなく、もし具体化のチャンスがあるならチャレンジしていただきたい。
 建造費用については、ほぼクローズな市場で取引されている日本の新幹線車輌が@3億円とされており、16両編成で48億円。より国際競争の厳しい欧州で製造してなお390億円を要するというのは、個人が独占的に使用する輸送手段としては、相当に高額であるのは間違いない。


 最後に、鉄道車両の「私有」について。
 これは日本でも一般的に見られる形態で、セメントや石油など品目別に製造された専用の貨車は、太平洋セメント・日本石油輸送など、それぞれの荷主が資金を負担して所有権を持つ「私有貨車」になっている。
 また、かつて運行されていた郵便車は旧郵政省が、現金輸送車は日本銀行が、それぞれ所有していた。

 財産としての所有権とは別に、各鉄道会社へ登録する「車籍」という手続きがあり、私有車もそれぞれ運行を手掛ける鉄道会社に「車籍」を置く。
 車籍の無い車輌は、単に線路上に置かれた「機械」「用具」でしかなく、旅客や貨物の輸送に供することはできない。

 もし日本で「プライヴェート・トレイン」が実現したならば、当然に同様の扱いとなるものと予想される。
 どなたか、有り余る資産をお持ちの方がいらしたら、建造を検討されてはいかがだろうか。

ブログ一覧 | 鉄道 | 日記
Posted at 2021/07/19 00:38:11

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