• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

midnightbluelynxのブログ一覧

2022年12月21日 イイね!

糖酒

糖酒 昨夜は海の幸を堪能したのみならず、地元の酒・ラムも愉しんだ。

 現地で呑むことができるラムは2種類あり、精糖の過程で産出される(廃)糖蜜を醸造したもの(工業生産ラム。一般的にラム酒と言えば、この製法)と、当に精糖の原料であるサトウキビの搾り汁から醸造したもの(農業生産ラム)がある。
 廃糖蜜は性状が安定していて、各地に輸送の上でラム酒以外にも様々な食品原料として多用されるのに対し、サトウキビの搾り汁は直ぐに酸化してしまうため、醸造所をサトウキビ生産地に置かなくてはならず、即ち大消費地やインフラの整った地域から遠いためコストが高く、ラム酒生産量の3%程度しか流通していない…とされる。

 「農業生産ラム」の新鮮で爽やかな味わいと、雑味を誤魔化す香料や着色料の入っていない「工業生産ラム」のパンチの利いた味わいの両方で、心地良く酔わせてもらった。


 今日は終日移動日で、朝の便に搭乗して那覇、乗り継いで宮古~多良間というルート。
 佳い酒のお陰か、帯同する同僚ともども朝早く目覚め、朝食を摂って早めにチェックアウト。空港へ向かう前に、改めて島の中を巡ることにした。

 島の中心地に、古い蒸気機関車とディーゼル機関車、そして客車・貨車が保存されている。
 1983(昭和58)年まで、島内のサトウキビ収穫用に活躍していた専用鉄道の車両(シュガートレイン)で、2007(平成19)年に近代化産業遺産の指定を受けている。
 
 専用鉄道は2フィート6インチ(≒762mm)の軽便規格で、島内を一周する環状線と、枝分かれする支線からなり、総延長30km弱。最盛期には8輌のディーゼル機関車と300輌以上の貨車・作業用台車が、製糖工場の稼働に合わせ24時間体制で運行していたという。
 蒸気機関車・ディーゼル機関車は、当地に保存されている車輌のほか、観光鉄道に活用できないかと本島に持ち込まれた各1両があり、計画頓挫で一時は放棄されていたものの、現在は那覇市内の壺川東公園で保存・展示されている(但し、蒸気機関車は腐食が著しく下回りのみ)
 また南大東島の中でも、観光資源として復活させる動きがあるようだが、現時点では具体的な整備計画が見えていない。


 車輌だけでなく、島内には何か所か軌道や集積場(駅)・機関庫など施設の跡が残されている。
 こちらも、観光案内図に示されているところを幾つか回った。
 島内中心部にある機関庫は、現役当時のまま今でも倉庫として使われている。路線廃止後も暫く機関車が周辺に放置されていたようだが、現在は全て片付けられてしまった。
 軌道関連では、道路を横断する部分で踏切の跡(レール内側にガイドレールを敷設してある)や、やはり踏切跡で道路工事をしている現場で、路外に置かれている掘り出されたレールを見ることができた。



 最盛期に来てみたかったものだと惜しみつつ、こうして当時を偲ぶ車輌や軌道が残されていることに感謝し、願わくば一部でも復活の日を迎えてほしいと祈る。
 動力源にはラム酒、、、ではなく燃料用に精製したアルコールを用いれば、CO2の排出を実質的にゼロに抑えられ、観光の振興と環境対策を両立できよう。








 レンタカーを返却し、空港売店で「ラム」をお土産に購入。
 名残惜しい初の南大東島訪問を終えた。
 暫くは天気予報で示される島名を眺めながら、麗しき滞在とシュガートレインを懐かしむことだろう。

 さてさて、次に向かう先も、沖縄の離島・多良間島。
 宮古島からは空路の他、行程2時間ほどのフェリー便(日曜を除く毎日運航)もあり、南北大東島のような「絶海の孤島」(沖縄本島から400㎞弱)ではないが、強風や波浪など天候次第で空路・フェリー共に欠航が多いと、現地で工事に携わる代理人さんから知らされていた。
 工事用の機材と車輌を持ち込む都合上、航空便は使えないのでフェリー一択なのだが、タイミングが悪いと1週間も欠航が続き、作業が始められないまま待ち惚けを食らうこともあるという。
 
 そして南大東~那覇~宮古までは順調に飛び、最終行程の多良間便に搭乗しようとカウンターに向かったところ、非情な「欠航」の通告。聞けば機材の故障が原因で、そもそも予備機材も無く逼迫した運航体制だったため、已むなく欠航に至ったのだとか。

 明日面会する予定だった多良間島の現場代理人さんに連絡し、お詫びと取り敢えず予定の延期をお願いした。
 併せて、今日の多良間での宿泊を延期(明日の午前便で渡れればキャンセル)・宮古での宿泊を手配。航空会社都合で欠航となった補償として、宿泊代相当の金銭は貰えている。まだ冬休み期間ではないので、以前も宿泊したことのある繁華街のホテルを押さえることができた。
 新型コロナ禍後の経済対策で実施されている、宿泊者への補助(金券を支給)も適用してくれる、とのことで、私はたまたま携帯に画像で保存していたワクチン接種証明書を、帯同する同僚は急遽奥方にワクチン接種証明書の画像を送ってもらい、それぞれチェックイン時に提示して食事やお土産の原資を得た。

 機材故障に因る欠航には面食らったが、その後の手配はとんとん拍子に進み、穏やかに宮古での夜を迎えた。
 早ければ明日の午前便で多良間入りし、現場で代理人さんと面会。業務をこなし午後の便で宮古に戻り羽田便に乗り継げたら、クリスマス前には余裕で東京へ戻れる。

 ただ、悪天候(強風に伴う波浪)でフェリーは既に明日の欠航が決まっている。
 フェリーを止めた強風で、航空便が欠航しないとも限らない。機材故障とて、当該機材が設備の整った那覇に居れば対応も早かろうが、離島に居た場合はどうなることか。
 不安を頭の片隅に抱えたまま、床に就いた。

Posted at 2024/05/03 02:07:39 | コメント(0) | トラックバック(0) | 鉄道 | 日記
2022年04月01日 イイね!

国有

国有「鉄道・バス事業への公的資金投入 経営統合や運行・管理の集約を推進」

 政府は1日、コロナ禍に因る旅客減少で経営難に陥っているJRおよび民鉄各社に対し、公的資金を投入して公共インフラである鉄道・バス輸送の経営を安定させることと併せ、運行・管理を集約してコスト削減を進める方針を発表した。
 これまでも、地方赤字路線の維持を目的として補助金が投入されてきたが、鉄道・バス輸送を担う企業本体への公的資金投入は前例が無く、政策の公平性の観点から批判を受ける可能性がある。
 そこで政府は、公的資金の受け皿となる企業の経営面での透明性を高め、効率化を進めるべく、運行・管理の集約も並行して進めることにしたものとみられる。

 どのような形で運行・管理の集約を行うか、推進役を担う国土交通省内部では、戦前に施行された「陸上交通事業調整法」に基づき、現在の東急・小田急・京急・京王の各社および周辺のバス事業者を経営統合して発足した「東京急行電鉄(大東急)」の例を参考に民鉄各社の合併を促すか、経営規模が比較的大きいJR各社に鉄道施設を売却して運行・管理を統合する方法が検討されている。
 ただ、複数の民間企業を事業統合するのは、雇用の維持や投資家保護、独占禁止法との整合など、解決するべき課題が多岐にわたり、実現までには相当に時間を要するものと思われる。
 一方、JR各社との統合は、統合される企業とJR各社との個別交渉が中心となり、比較的短期に調整が進められるものと考えられる。
 JR各社に統合される場合、JR各社ともにコロナ禍の長期化でキャッシュフローが縮小しており、公的資金は主として民鉄各社の鉄道施設取得のために投入されるものと予想される。旧鉄道省~国鉄の後身であるJRが民鉄各社の路線を引き継ぐことになれば、実質的に明治期以来の「鉄道国有化」が推し進められることとなる。(AFO-JIJII)



「東武東上線 JR東日本に売却」

 東武鉄道は1日、同社が運行している東上線(池袋~寄居)および越生線(坂戸~越生)を、JR東日本へ売却する交渉に入ったと発表した。同日、政府が鉄道・バス事業への公的資金投入を通じた経営統合およびJR各社への集約を推進する施策を発表しており、これを受けてのことと思われる。
 東上線は、沿線の宅地開発が進み通勤・通学輸送で大きな利益を上げてきたが、コロナ禍の長期化で通勤客を中心に利用者が大きく減少して採算が悪化、沿線人口の高齢化で将来的にも需要回復が期待できない状況に陥っていた。
 また東武鉄道のメイン路線である「スカイツリーライン」とは直接的に線路が接続しておらず、東上線独自の設備投資が必要で、車両のメンテナンスなど管理コストが膨らむ要因となっていた。

 東上線を買収するJR東日本としては、都心西部から北関東方面へ直行する東武東上線を、高崎線および埼京線のバックアップルートと位置付け、設備増強や沿線再開発など積極的な投資を推進する方針。
 具体的には、現在の東上線の終点である寄居から八高線に乗り入れ、高崎まで直通運転ができるよう八高線の電化/東上線現行区間で単線となっている嵐山信号所~寄居間を含め、高崎までの全線複線化/川越駅を大改良し、川越線・大宮方面からの直通運転/池袋~北池袋間で並走する埼京線への分岐を新設し、埼京線および湘南新宿ラインとの直通運転等を検討している。

 一方で小川町~寄居間は八高線・東上線が並行しているため、沿線人口の多い東上線に集約し、この区間の八高線を廃止する。
 なお八高線は、東上線坂戸駅から分岐する越生線とも越生駅で接続しているが、小川町~越生間は非電化で利用者が低迷していることから、この区間の存廃も併せて検討する。八高線越生以南については、高麗川駅までの電化や、八高線車両(ディーゼルカー)の越生線直通運転など、両線を跨いで利用する旅客の利便性向上を図りたいとしている。

 東上線は大正期に「東上鉄道」として創業した路線で、その商号および路線名は、東京と上州、更に三国山脈を越えて上越までの鉄道建設を目指していたことから付された。
 東上線がJR東日本の路線網に組み入れられ、高崎方面への直通列車が運転されるようになれば、東上鉄道発足当時の目標が、約1世紀の時を超えて実現することとなる。(驚動通信)


Posted at 2022/04/01 17:14:46 | コメント(0) | トラックバック(0) | 鉄道 | 日記
2021年07月18日 イイね!

私有

私有 アメリカのニュースネットワーク・CNNの配信記事から『建造費390億円、自家用豪華列車のコンセプトを披露』に注目。

 鉄道に難する夢のある話題……と言えなくもないが、鉄道ファン一般の求めているものか、と問われると、些かヴェクトルが異なるような気もする。
 鉄道好きが愛でる「鉄道」とは、私的かつ独占的に豪華さや利便性を享受するものではなく、まさに「社会的共通資本」として公益に資するインフラとしての「鉄道」なのではないか。
 だからこそ、鉄道マンは被災地へ送る石油製品を満載したタンク貨車の妻面に「がんばれ」「まけるな」とメッセージを残し、それを見つけたファンを感動させるのである。


 さて冒頭記事の内容に戻ると、コンセプト云々とは別に、鉄道関係者が一体どこまで企画に携わっているのか?と疑問を呈さずにはおかない。

 まずは、車輌のスペックであるが、14両編成で全長400mとなっている。
 イラストを観るに、1両目は動力車、2両目からが実際の輸送に用いられる客室等を備える付随車となっていて、更に2両目後ろ側の台車からは連接構造(車輌間の連結部真下に台車がある)であるかのように描かれている。
 これは、仏・TGVや独・ICEの初期編成など、高速列車が採用する車輌構成に似る。

 一般的にヨーロッパで用いられている鉄道車輌は、国境を越えて運用される機会が多いため国際規格が定められており、車輌長は大きくても25~26.5mに設定している。
 仮に26.5mの車輌を14台連ねても、編成全長は371mにしかならない。
 つまり冒頭記事の列車は、1両当りの長さが現行規格よりも長く(約28.6m)なってしまう。

 この差は決して小さくなく、もし実際に走らせようものなら、駅ホームや信号機支柱に車体をぶつけまくり、まともな姿で目的地に辿り着くことはなかろう※。

※連接構造を採用していれば、車体中心部がカーヴ内側へ大きく迫り出す形になる。これが一般的なボギー構造(車体端部寄りに台車がある)の場合は、カーブ内側だけでなく、車体端部がカーヴ外側にも大きく迫り出す。

 因みに、近似の車輌構成である仏・TGVの車輌長は、編成前後の動力車部分(2両)が22.157m、動力車次位の客車(2両)が21.837m、その他中間車(6両)が18.7mとなっており、編成長は冒頭記事の列車の約半分(200m強。但し2編成を連結しての運用も多い)。車体幅を同じとして居住性を確保したいのであれば、車体長も近い値に納める必要がある。
 なお、日本の新幹線(フル規格)は1両当り25mで、東海道新幹線では16両が連なって400mの諞成長となっている。


 もう一つ。
 その車輌構成のうち、端部に専用の動力車を置く方式に、合理性が感じられない。
 時速200㎞以上の高速で恒常的に走行するのであれば、空力性能まで考慮してデザインされた専用の動力車を配置するのは合理性が認められるが、時速160㎞程度であれば既存の機関車でも十分に対応できる。
 専用の動力車を組み込んでヨーロッパ各地に乗入れようとすれば、それぞれの地域で用いられている架線電圧および信号システムに対応するべく、その全ての機器を搭載しておかねばならない。
 専用の動力車を持たない付随車のみの編成であれば、乗入れ先の地域で運行されている機関車を借り、牽引して貰えば済む。

 ヨーロッパの国際列車は、日本ではほぼ絶滅してしまった機関車牽引の客車編成が今なお多いのは、その方が動力系および保安系の構造を簡素化でき、かつ汎用性・冗長性が高いからである。


 このように、技術的には雑な面が多いが、そのコンセプト自体は批判されるようなものではなく、もし具体化のチャンスがあるならチャレンジしていただきたい。
 建造費用については、ほぼクローズな市場で取引されている日本の新幹線車輌が@3億円とされており、16両編成で48億円。より国際競争の厳しい欧州で製造してなお390億円を要するというのは、個人が独占的に使用する輸送手段としては、相当に高額であるのは間違いない。


 最後に、鉄道車両の「私有」について。
 これは日本でも一般的に見られる形態で、セメントや石油など品目別に製造された専用の貨車は、太平洋セメント・日本石油輸送など、それぞれの荷主が資金を負担して所有権を持つ「私有貨車」になっている。
 また、かつて運行されていた郵便車は旧郵政省が、現金輸送車は日本銀行が、それぞれ所有していた。

 財産としての所有権とは別に、各鉄道会社へ登録する「車籍」という手続きがあり、私有車もそれぞれ運行を手掛ける鉄道会社に「車籍」を置く。
 車籍の無い車輌は、単に線路上に置かれた「機械」「用具」でしかなく、旅客や貨物の輸送に供することはできない。

 もし日本で「プライヴェート・トレイン」が実現したならば、当然に同様の扱いとなるものと予想される。
 どなたか、有り余る資産をお持ちの方がいらしたら、建造を検討されてはいかがだろうか。

Posted at 2021/07/19 00:38:11 | コメント(0) | トラックバック(0) | 鉄道 | 日記
2021年07月17日 イイね!

名機

名機 鉄道関連記事が豊富な老舗有力経済誌・東洋経済が運営するニュースサイト「東洋経済ONLINE」の配信記事から『「SLの王者」D51形、日本全国を駆け巡った名場面~地域ごとに個性豊かな国民的機関車「デゴイチ」~』に注目。

 麗しき蒸気機関車、かつ「キャタピラー」「ユンボ」「ホッチキス」などと同様、ほぼ一般名詞化されている国産の名機「デゴイチ」の話題につき、鉄道好きにして、中でも機関車マニアの弊ブログ主が目を止めぬ筈が無い。


 記事の内容を補足するなら、4ページ目・函館本線のエピソードで、C62形(「銀河鉄道999」牽引機のモデル)の重連に触れているが、そのC62形とD51形の重連も名列車「急行ニセコ」で度々行われている。
 本来は、性能が同じ機で揃えた方が運転しやすいのだが、パートナーとなるべきC62形の検査や不具合といった事情で車輌不足に陥ると、D51形がピンチヒッターに起用されたようである。

 蒸気機関車の重連の場合、運行を主導する「本務機」は2両目の機関車で、「急行ニセコ」では当然にC62形が当たり、勾配区間でのブースターとして「前補機」にD51形が付く。
 デゴイチのエスコートでの登攀は、パワーの面では十分であろうが、ピークを越えてからスピードが上がってくると、足の長さの違い(C62の動輪径1750㎜に対し、D51は1400㎜)で協調は少々きつかったのでは、と想像する。

 それでも、蒸気機関車が主役だった時代の掉尾を飾る看板列車の先頭に在ったD51形の雄姿は、残された画像を観るに誇らしげである。


 もう一つ。海外輸出機について。
 1ページ目に明示されている生産数で、差し引き69両が海外へ輸出されており、その一つである台湾で現存する個体(DT650形)が、記事の画像でも55・56枚目に紹介されている。
 69両の内訳は、その台湾向けが最多の37両(植民地時代の「台湾総督府鉄道」向け、および戦後の「中華民国鉄路管路局」向けの合計)、ソヴィエト連邦の実効支配下に落ちたサハリン(旧樺太)向けに30両、そして韓国向けに標準軌・極寒地仕様が2両となっている。

 1950(昭和25)年に製造された韓国向けの2両(D51-101・102/ハイフン付きの表示が正。実際の発注者は、朝鮮戦争の当事者である国連軍=米軍※)は、辛うじて輸出前に国内で撮影された画像が残されている(参考情報URL参照)が、朝鮮戦争休戦後の韓国々内での画像など具体的な状況が、米軍関係者の記録にあるのみで日本側には見当たらない。
 前線が南下・北上を繰り返す熾烈な戦火を潜り抜けて生き残り、韓国国鉄の形式表記「ミカ7」(車軸配置「ミカド型」7番目の形式を意味する)を与えられて、無煙化が進んだ1960年代までソウル駅周辺で入替作業等に当たっていたとされる。

※国内で撮影された画像には、「Type D51 for F.S.S」と明記されており、軍の調達ではなく、あくまで民生向けとしてGSA(連邦共通役務調達庁)傘下のFSS(連邦供給サーヴィス)であった可能性もある。


 これら69両とは別に、現在は大陸中国の支配下にある海南島にあった日本窒素肥料(現・チッソ他)のプラント向けとして5両が供出(当時は日本占領下で、国内向け1115両に含まれる鉄道省の制式機を譲渡し搬出)され、戦後も残存していたとされるが、こちらも詳細は分かっていない。

 植民地にルーツを持つ者としては、もはや彼の地で土に還ったであろうデゴイチの来し方に、思いを馳せずにはいられない。


 2ページ目の記述の通り、長期に亘る大量生産機であるが故の形態差に加え、各地の運用事情に即したカスタマイズが施された結果、現存する保存機・現役機は2両と同じ仕様の個体が無い。
 その仕様差は全て、その機が辿った鉄路の風物や、取り巻く経済・社会環境に由来する。
 
 運用実績を欠き保存機も無い四国を除く、全国に散らばるデゴイチを見掛けられたら、少しばかり詳細に観察していただき、形態の違いに注目願いたい。









Posted at 2021/07/17 14:56:57 | コメント(0) | トラックバック(0) | 鉄道 | 日記
2021年07月15日 イイね!

諸舎

諸舎 神戸新聞社を中心として西日本のローカルメディアが連携し話題を提供する情報サイト「まいどなニュース」から、本日付『明治から令和を生き抜いたJR四国の文化財、取り壊し前の探検ツアーに同行してみた』に注目。

 麗しき鉄道施設、中でも普段は立ち入ることが許されない、車輌メンテナンスに供される建屋の数々である。


 私が幼少の頃、最も身近な鉄道施設の一つが、京王帝都電鉄(現・京王)・井の頭線の「永福町車庫」だった。

 既に井の頭線車輌のメンテナンスは、西へ下った富士見ヶ丘駅に隣接して新設された「富士見ヶ丘検車区」に移管されていて、「永福町車庫」は系列の京王バスの整備工場となっていた。
 航空機の格納庫を思わせる巨大な建屋で、バスの整備工場としては些か過大なサイズであったが、祖父母や両親から「あれは昔、電車の車庫だったんだよ」と聞かされ、子ども心に建屋の変遷を納得したものである。

 その後、京王バスの整備工場としても、平成の御代を迎えることなく老朽化で1986(昭和61)年に解体されてしまった。


 「永福町車庫」は、井の頭線が小田急資本の「帝都電鉄」の路線であった1933(昭和8)年に建設され、形態としては冒頭記事で紹介されているJR四国・多度津工場の「会食所一号」に似るが、航空機用格納庫の転用ではなく始めから鉄道施設として建築された建屋である。
 昭和の初め頃までは、鉄道車輌のメンテナンスに適した大空間を構築する手立てに乏しく、分厚い煉瓦造りの壁面に木製の小屋組み、という組合せが多かった。
 しかし、1923(大正12)年に発生した関東大震災で煉瓦建築の脆弱さが露呈し、経済・軍事の両面で重要なインフラを支える施設の建築手法として、軽量・低コストで耐震性の高い素材および技術が求められていた。
 そこへ1932(昭和7)年に、巴組鐵工所(現・巴コーポレーション)が鋼製アングル材を三角形に組んでトラス構造とした「ダイヤモンドトラス」で特許を取得、30mもの大スパンで梁を跳ばし、柱の無い大空間を安価かつ迅速に構築できる技術が普及していった。
 「永福町車庫」は、まさに鋼製トラス構造の建築物黎明期の傑作に当たる。

 巴コーポレーションは、「ダイヤモンドトラス」で培った技術と利益を基に、更なる巨大建築物を手掛けており、各地のドーム球場や東京スカイツリーなども、同社の高い技術を採用している。
 云わば現在のランドマーク群の「原点」を、幼い私は印象に刻んでいたわけだ。


 一方で多度津の「会食所一号」は、敗戦後に現在地へ移築されており、もともと海軍西条航空隊の基地格納庫として建築されたのは1926(昭和元)年で、国産の「ダイヤモンドトラス」が普及するよりも古い。
 「ダイヤモンドトラス」は、ドイツが開発した組立式の航空機格納庫を参考にしているが、その格納庫自体も、商社が軍による調達を期し日本国内で営業攻勢を仕掛けていたという。
 公表されている資料には、「会食所一号」の構造材となっている鋼材のメーカーや、施工を手掛けた企業の情報が無く、詳細は不明だが、もしかしたら輸入鋼材および外国から導入した技術に基づき施工された建屋かもしれない。
 いずれにしても、鋼製トラス構造を採用した建築物としては国内最古級で、旧軍の施設だった経緯を含め、極めて貴重な存在であることには間違いがない。


 もう一つ、現在は展示館として用いられている「諸舎一号」も、気になって仕方がない。
 天井部の装飾や、階段手摺に洋風の意匠がふんだんに施され、油臭い鉄道の現場とは思えない瀟洒な雰囲気を醸す。
 こちらは、日頃は工場幹部が詰め、時に来客時の応接施設として迎賓館のように利用されていたのではないかと推測する。

  
 これら既に文化財となっている建物群で、近々解体工事が始まり、重機の露と消えるのは非常に残念である。
 せめて「諸舎一号」だけでも、貴重な鉄道文化財として残せないものだろうか。

 仮に全て解体を免れないとしても、3Dスキャナを用いて点群データを取り、仮想空間上に建物群を保存するとともに、「諸舎」「会食所」「職場」といった略称で建物を管理していたソフト面の記録もまた、遺漏なく残しておいてもらいたい。



Posted at 2021/07/15 20:17:12 | コメント(0) | トラックバック(0) | 鉄道 | 日記

プロフィール

「育児 http://cvw.jp/b/1043160/47663127/
何シテル?   04/18 19:29
 建設業界で禄を食む文系出身(経済学専攻)のプロフェッショナル・エンジニアが、愛車整備・政治経済・文化学術・スポーツそして土木施工の現場で日々記した野帳を公開し...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/8 >>

     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

愛車一覧

メルセデス・ベンツ Gクラス カブリオ メルセデス・ベンツ Gクラス カブリオ
 G320カブリオ(V6・ミッドナイトブルー)を愛車にしています。  息の長いGクラスで ...
その他 その他 その他 その他
 サントレックスの軽規格折りたたみトレーラーです。以前所有していたキャンピングトレーラー ...
メルセデス・ベンツ Gクラス ジュラシックワールド・オフィシャル (メルセデス・ベンツ Gクラス)
G550 as a movie star! Coming soon.
メルセデス・ベンツ Gクラス ドイツ連邦軍多目的車輌「ヴォルフ」 (メルセデス・ベンツ Gクラス)
 ドイツ連邦軍が1989年~1994年にかけて10,000両以上もの大量調達を果たした軍 ...
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation