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2017年08月17日 イイね!

伝説

伝説 麗しき休暇も、今日で終わり。
 リゾートの母屋で、最後の朝食をご馳走になる。

 三線を教えてくれた先生は、既に昨日早朝に島を発ち、朝食の席にはいない。
 他の同宿者も、偶然今日出発する人ばかりで、朝食を摂りながら、ここ数日に起こった出来事(長足の進歩を果たした長男の三線プレーや、マナナンバルの診察など)を互いに振り返った。


 この度の休暇では、島主がこの島を購入し、現地住民との共生を決意して以降、島での生活に必要な基礎的インフラ整備に携わった人々と、親しくお話しさせていただく機会があった。

 同宿者として、折に触れ楽しいエピソードを語ってくれたKさん、日帰り来島だったが、現在も対外折衝などで実務に深く関与されているHさん/島を出てからセブ市内で本格的な日本蕎麦店を開業し繁盛させたSさんなど、島主の著作にお名前が紹介されている、いわば「レジェンド」たち。

 勝手の違う異国で、異民族相手に、手探りでがむしゃらに動き回った筆舌に尽くし難いご苦労を懐かしく、しかし楽しそうに語る姿が、とても印象的だった。
 私も「若かりしレジェンド」の姿を思い浮かべながら、楽園の創成期を追体験させてもらった。


 一方で、創成期の状況や、「若かりしレジェンド」たちが掲げた理想を知ってしまうと、現状とのギャップもまた、見えてきてしまう。



 医療体制や小学校の整備等が進み、乳幼児死亡率の低下・高齢者の長寿化・就学目的での離島者が減少するなどして、島民は倍にまで増えた。
 日本人が関わることで暮らし向きが良くなったことを聞きつけた島外の者が、一時的に親戚を訪れているフリをして、実態としては不正に居住している例も多いようだ
 決して広くはない島の土地は、もはやこれ以上の人口増を吸収する余裕が喪われている。

 島を訪れる観光客も、雄大な自然や、島主の人間的魅力に惹きつけられた日本人の長期滞在とは別に、日帰りツアーも受け容れているが、その主力は圧倒的に大陸の中国人。
 私有地に勝手に入り込んだり、指定された接岸場所ではないところから上陸したり、島の近海に停泊した船上でカラオケパーティーを挙行し騒音を撒き散らしたりと、傍若無人な振舞いが目に付く。

 東京程ではないにせよ「爆買い」に勤しむ中国人観光客が、島に経済的な潤いを与えているのは間違いないが、前記の如き悪影響に加えて、土産物販売で大儲けする者が出現するなど、島民の間に埋め難い経済格差をもたらしている…との話も島主から聞いた。


 目下の課題だけではない。
 中長期的な視点に立っても、実務からは退いたとは言え、今なお絶大なカリスマ性を保つ島主が健在だからこそ、リゾートと現地住民との共生が成り立っているのだとしたら、未来永劫「楽園」が「楽園」たりうる状況を安定的に維持できるのか。

 不安は尽きない。



 しかし、力強い希望はある。
 現在マネジメントを担当している若き女性2名は、当地の男性と結婚して島の人々に混じり、プライヴェートは完全に現地流で過ごしている。
 子宝にも恵まれ、日本人来訪者や「レジェンド」たちだけでなく、島民みなに見守られ、可愛がられてすくすく育っている。

 外国人向けのリゾート経営と、生活する島民との関係が、短期的かつ急速に悪化する可能性は低いだろう。


 人材面だけでなく、インフラの強化・高度化にも余念がない。
 現在、大規模な浄化槽設備の築造と、海水から真水を精製する淡水化装置の設置工事が進んでいる。
 これまでも簡易な下水処理施設はあったものの、浄化能力は限定的で、汚水が排出される環礁内の海洋環境への負荷要因となっていた。
 これを微生物を用いて汚濁物質を分解する高度な浄化槽設備にリプレイスするのだが、一方で洗浄水に海水を用いることができない(微生物の働きを阻害する)ことが問題として残る。

 現状でもシャワー等で必要な真水は、多くを貯留した雨水に頼っており、慢性的に水不足状態に在っては、トイレの洗浄水まで雨水で賄えない。
 そこで、洗浄水だけでなく生活用水まで含めて、真水を潤沢に確保できるよう淡水化設備の設置が決定されたそうだ。



 「楽園」で育つ子どもたちの成長を、私も穏やかに見守りながら、この先も「楽園」の現状と将来に注目し、できることが有れば協力(今回初めて、現地の小学校へ筆記用具や文房具を寄贈)していきたいと思っている。

 そして誰あろう私自身が、島に集う知性の刺激に触れたくて、また島を訪れることだろう。



 弊サイトの記事を見て、ご興味を抱かれた方は是非にもご旅行を。
 具体的かつ有意なアドヴァイスを、差し上げられるものと自負している。



Posted at 2017/08/20 21:03:38 | コメント(0) | トラックバック(0) | イベント | 日記
2017年08月16日 イイね!

触診

触診 昨日の午後、そして今日の午後と、連日親子で「マナナンバル」の診察を受けた。

 「マナナンバル」の役割や立場を完全かつ正確に日本語に変換するのは困難なのだが、実際に受診したことのある日本人のサイト等を拝読していると、「祈祷師」「呪術師」などと表現されている場合が多い。


 祈祷師または呪術師と言っても、何やらオドロオドロしい者では無く、また日本において事件化したような無責任な関わり方は一切せず、無免許ながら地域医療に携わる医師に近い重要な存在。
 診察の最初または最後に悪魔祓い的なおまじないを施すものの、デング熱など明確に感染症である場合はタッチせず設備の整った病院へ行かせるし、後述の通り薬剤も必要であれば積極的に処方・投与する。
 正式に制度化されている保健師とも連携し、今回の診察でも島で暮らしているヴェテラン女性保健師が立ち合ってくれた。




 当初は、つい先々月に三半規管の異常で緊急入院した私の診察を目的に、島主に伴われてマナナンバルが本拠を置く隣の島へ出向くことにしていたのだが、有り難いことにマナナンバルご自身が足を運んで下さった。

 また予定では私だけが受診するはずだったが、昨日の朝から長男が発熱・食欲不振など調子を崩し、何もアクテヴィティができないまま臥せっていたため、本人が「祈祷師さんに診てほしい」と要望して、真っ先に診察して貰った。


 厳つくも優しい眼差しのマナナンバルは、まず頭上から旋毛に向けて呪文を唱え、次いで右耳・左耳へ呪文(生憎、現地のビサヤ語を理解しないため、頭の呪文と同じかどうかは不明)と、長い吐息を吹きかける。

 診察そのものは、ほぼ触診に終始し、食欲を喪失していた長男は主に胃部を、眩暈を患った私は頭から足先までの全身を隈なく、マッサージされた。

 長男は消化の良いものを摂って安静にするよう指示。解熱剤と吐き気止めが処方された

 私については、まず全身が老人のように疲弊していると指摘(苦笑)。眩暈について直接的に原因云々の言及は無かったものの、脚(特に太腿)に水が溜まっていて、それが悪影響を及ぼしているのでは、とのこと。
 食事は、甲殻類•イカとチキンは避けるよう指示され、利尿剤が処方された。

 なおマナナンバルの診断は、保健師の女性が英語に翻訳、または現地ビサヤ語と英語に堪能な島主の助けを借りるなどして理解した。



 その晩は利尿剤の効果もあったか、最初が2200時・2回目が2230時・3回目は2320時・4回目は日付が変わって0230時と、一晩に4回もトイレに起きた。最初の3回は間隔が1時間に満たないが、その全てで大量の尿が出た。

 その出所がマナナンバルの見立てにあった、「足に溜まっていた悪い水」なのだろう。
 そう考えないことには、大量に排尿しながら脱水症状に陥らなかった(起きる都度、意識的に水分は補給するものの、飲用した量に比べて排出された量が圧倒的に多い)合理的理由が見出せない。



 思い返せばマナナンバルのマッサージは、頭の天辺から足先まで、リンパなど体液なのか、或いは気脈なのか、いずれにしても何らかの流れを意識して、全身を常に一定方向へ絞り上げるように施されていた。

 また問題の脚に対するマッサージで、右脚は比較的痛みが軽かった(マナナンバルの大きな力強い手で締め上げるため、最初はちょっと痛い)ものの、眩暈で倒れる直前に傷めていた左脚は、不調の後遺症状か終始強く鋭い痛みを覚えた。
 施術後は悪い水が抜けただけでなく、浮腫みが取れスリムになり、左脚の動きも軽くなった。

 加えて、私も長男が施術されたように胃部をマッサージされた結果か、胃袋が明らかに縮小した。
 普通の一食分は問題なく食べられるものの、御替りや子どもの食べ残しを口にしようとすると、胃の上部に強固な天井があるような感覚がして、それ以上食べられない。

 現在直面している健康上の問題だけでなく、将来に亘って肥満や高血圧を招かぬよう、過食を戒める秘術が施されたようだ。



 島に集う知性に触れて感化されたり、雄大な自然の只中に自身を置いてみたりと、日頃経験しないこと続きの休暇であるが、今回の「マナナンバル診療」は特に稀なる、神秘的かつ感動的な旅のエピソードとなった。




Posted at 2017/08/20 13:16:59 | コメント(0) | トラックバック(0) | イベント | 日記
2017年08月15日 イイね!

転寝

転寝 30年以上前だが、写真家・エッセイストの藤原新也が発表した作品が、大きな物議を醸した。

 貧困や下層カースト出身等の事情で、遺体が十分に火葬されず人間の貌を残したままインド・ガンジス川に投じられ、流れ着いた中州で野犬が手足を喰いちぎり、カラスがはらわたを啄ばむ光景。

 当時、某大手洋酒メーカーがシルクロードをテーマに展開していた広告キャンペーンに準え
 「ヒト食えば鐘が鳴るなり法隆寺」
 「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」
 とのキャプションを付けた。

 当該洋酒メーカーからは強硬かつ苛烈な抗議を受け、大スポンサーを喪失する事態を恐れた出版社が、発行する週刊誌上での藤原新也氏の連載を打ち切ってしまった。
 私企業が持てる経済的な影響力を行使し、基本的人権である表現の自由を侵害した…との批判もある。


 ショッキングな写真ではあるが、生きとし生ける物が須らく経験する、普遍的な「死」の一場面を切り取った感覚の鋭さは、称賛されて然るべきと考えている。




 寝苦しさと蚊の攻撃に辟易した私は、早起きして島の南東側に広がる砂浜「ポントク」へ出向き、流木を枕にして暫しうたた寝をした。

 まだ陽は高からず、絶間なく波が打ち寄せる海辺には蚊も居ない。海上を渡る涼しい風に吹かれながら渚に転がっていると、心地良いことこの上ない。

 だが傍から見れば、漂着した水死体と何ら変わらなかったかもしれぬ。
 しかも傍らには、島で放し飼いになっている犬が寄り添い、私と一緒に寝ている。
 こやつ、私が息絶えるのを待って、食おうとしているのか?



 休暇を楽園で過ごしてはいるが、ここは天国ではない。
 私自身もまだ、肉体を屍に換え、この世とおさらばするつもりもない。

 しかし、この状況を鳥瞰しながら思い浮かべたのが、冒頭の藤原新也だった。



 「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」とまでは言い切れないが、これだけは胸を張って断言できる。

 ニンゲンは犬とうたた寝するほど自由だ。



Posted at 2017/08/19 21:32:01 | コメント(0) | トラックバック(0) | イベント | 日記
2017年08月14日 イイね!

雨季

雨季 当地は今、雨季に入っている。
 雨季と言っても、日本の梅雨時のように終日天気が悪いわけではなく、一日のうちに1~数時間、スコールに見舞われる。

 初日2日目、そして今日も運良く陽が出ている時間帯にスコールが無く、夜に寝入ってから比較的強い雨が降って来た。

 昼間の活動を制限されなかったのはいいが、アサインされたロッジの屋根が傷んでいて、雨漏りしてくるのには困った。


 屋根や壁を激しく打つ雨と、雨漏りの滴で短時間だが目を覚ました際、不思議な音が聞こえた。

 正確に言えば音自体は不思議なものではなく、対岸のマクタンやセブから聞こえてくる、ディスコミュージック。夜通しバカ騒ぎができるスペースがあるらしく、朝まで音が絶えることが無い。
 普段であれば、「あぁ、また聞こえてきたな」ぐらいで気にも留めないのだが、スコールの最中だけは、ディスコがすぐ隣の島、いや環礁内に浮かべた船で営業しているのかと思うほど、特に重低音が大きく聞こえた。


 音波は、水中では極めて伝播し易いという。
 研究目的で海中にマイクを降ろしていた学者の耳に、どこからか軍艦マーチが聞こえてきたので、もしかして戦没者の霊が彷徨っているのか……と戦慄したが、詳しく調べてみると数十キロ以上離れた造船所での進水式で吹奏されていた音楽が発生源だった。

 クジラが一定の節回しで鳴き声を上げ、仲間とコミュニケーションしたり、軍がソナーを用いて密かに潜航する潜水艦の探知ができるのも、音波が水中で伝播し易い性質を利用している。


 ここからは私の仮説であるが、対岸から私が寝ているロッジまでの数キロメートルを、膨大な量の降雨が満たしていた瞬間に、音波が効率よく伝わって大きく聞こえたのではないか、と推測している。

 だとすれば、当にバケツをひっくり返したような雨で、広大な空間が水没したような状態になっていたことになる。


 雨漏りは私が寝ているエリアの一部だけで、ママや子どもたちの寝床には及んでおらず、雨も程なく止んで、雨漏りもしなくなった。
 巨大な積乱雲から大量の雨が降り注ぐダイナミックな光景を想像しながら、対岸の音が至近に聞こえた理由を考えつつ頭を使っていたら、そのまま朝まで眠ってしまった。

 

Posted at 2017/08/18 23:34:02 | コメント(0) | トラックバック(0) | イベント | 日記
2017年08月13日 イイね!

三線

三線 ここに来ると、いつも知的な刺激を与えられる。
 電気もない、温かいシャワーもない、空調も無ければ蚊帳で虫を防ぐ他無いリゾートではあるが、人々の飽くなき興味を惹きつける大きな理由の一つが、これだ。

 今回はプロの三線ミュージシャンであり、その実本業は弁護士というユニークな同宿者に、親子で三線を習う機会を得られた。
 表面的に三線を教えていただくだけではない。法律家としてのご苦労や、達成の歓び、ちょっとだけ部外秘の内緒話が織り交ぜられた会話を通じて、人間的な魅力に触れさせて貰える。


 逆に言えば、温かいシャワーと快適な空調に拘り、虫に刺されるどころか見るのも嫌な俗人は、この楽園を愉しむ資格を初めから喪失しているのだ。


 宿泊者全員と島主で共にするディナーの席に於ける会話の一幕で、島主は「人類の歴史は、狩猟•採取で暮らしてきた期間が最も長い」「その頃の人類の方が、文明的では無くとも、自身や自然をマネジメントする能力に優れていた」と述べた。
 その通りだと、私も思う。

 ここでは、湧き出でるように海底に転がる雲丹を採取して、その場で食しても、ディナーの一品に並べても、誰も咎めない。
 ただ求められるのは、足るを知り無用な殺生をせぬこと、豊穣な海の恵みに感謝して口にすること、のみである。

 冷たいシャワーも、寝苦しさも、虫刺されも、克服するのは全て自身と自然をマネジメントすることではないか。
 いやいや、克服などと言っているようでは、私もまだ甘い。
 蚊の飛び交う居室で、 泰然自若として眠れるぐらいでなければ、島主が到達した領域にまで行ったとは言えまい。


 
Posted at 2017/08/17 14:16:25 | コメント(0) | トラックバック(0) | イベント | 日記

プロフィール

「育児 http://cvw.jp/b/1043160/47663127/
何シテル?   04/18 19:29
 建設業界で禄を食む文系出身(経済学専攻)のプロフェッショナル・エンジニアが、愛車整備・政治経済・文化学術・スポーツそして土木施工の現場で日々記した野帳を公開し...
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