midnightbluelynxのブログ一覧

　銀座の職場に近い晴海通りを、毎日定期的に行き来する車輌がある。
　朝は西進して霞ヶ関方面へ、夕方は東進して豊洲IC方面へ、ほぼ決まった時間に通過する。

　赤色灯をルーフに戴くマイクロバス。窓は完全スモークにされ、運転席と座席の間も厳重にカーテンで仕切られている。


　
　確認したわけではないが、小菅の東京拘置所と霞ヶ関の裁判所との間を、被告人を乗せて往復する便と思われる。



　朝はともかく、夕方に拘置所へ戻る便から見えるこの時期の銀座の街角は、罪人にとって眩しかろう。光り輝く目抜き通りでショッピングを愉しむ人々の姿は、身柄を拘束された立場の人間にとって目の毒に違いない。


　自らの犯した罪を悔い、いつか家族とこの街を歩きたいと思い償いに邁進するか。
　もはや極刑に処される身と為り果て、この世の思い出とばかりに眺めるのみか。
　身に覚えのない咎で裁かれ、絶望しながら怨嗟の眼差しで見つめるか。

　「塀の向こう側」に堕ちたことがない人間には、想像すら及ばない。



　邪道外道も踏み外した極道もんなら、堅気に迷惑を掛けぬよう生涯閉じ込めておいてほしいものだが、銀座のイルミネーションが励みとなって更生の道が開けるなら、それもよかろう。　
　まさかそれを狙って、マイクロバスの走行ルートを決めている訳ではないだろうが。
　

　街の灯りは、どんな立場の人間にも等しく、美しく輝く。