midnightbluelynxのブログ一覧

　このところ連日、職場から離れたところ(特設の会場)で業界関係者と面会する仕事が続いている。
　契約上の拘束力に基づき、面会相手が事前に相応の提出書面を準備・その根拠となる資料を持参していただくのだが、概ね粛々と対応していただける方がマジョリティである一方で、少数乍ら協力的でない方もいる。

　
　書面上の記載に誤りが多く……、もとい誤りしかなく、一体何をどう書き込んだものか、判別に苦しむ例に当たると、一瞬気が遠くなる(笑)が、そんなのはまだ可愛らしい。
　そもそも提出書面の作成が少なからず面倒で、マニュアルを一読しただけでは理解しにくい。間違っているなりに、何とかして書面を作ろうと努力していただいているのだから、その点はこちらも汲み取らねばならない。


　「元請が来いっていうから来たんだ、文句があるか」
　「契約の条文なんて知らねえ。一日拘束しやがって日当出せ」
　「書面なんか作ってねぇ、そんな事務ができるなら、違う仕事で飯食ってらぁ」
　「根拠？そんなものはねぇ。手帳にメモしているか、(指で頭をさして)ここだけだな」　

　このような関係者に逢うと、遠くなりかけた意識が戻り、逆に闘志が湧き上がる。
　インサイダーに身を置きながらも、かくも前近代的な契約意識、粗暴な態度、野卑な言動に触れると、やはりこの業界は他に比して半世紀は劣後しているように感じ、絶望的になる。



　今日の夕刻に見掛けた珍客は、これまた強烈だった。
　後輩が担当する面会のテーブルを這い回る、丸々と太ったゴキブリ。
　初冬の気温では体が動かず、緩慢な奔りだが、この時季にかくも巨大な個体を目にするとは思わなかった。


　面会場所は、会議や研修以外の目的には使われない、ドライで無機的な空間にして、ゴキブリが発生する要素が無い。
　どうやら、面会者の荷物の中から出てきたようだ。

　昨今の寒さを、ズボラな方のカバンの中でしのぎつつ、仕舞われていたお菓子か弁当かのお零れで食い繋いでいたのかも知れぬ。


　私が即座に不要となった面会資料の用紙で叩き潰し、抹殺した。
　


　ゴキブリの出現自体もそうだが、周りの反応にも驚かされた。

　「先輩！あれ、あれ」
　「ボク、ゴキブリだめなんですぅ」
　「すいません、退治できますか？」

　私なぞゴキブリに対する嫌悪を通り越し、憎悪の領域に達しているため、繁華街の路面上で見掛けた個体は漏れなく踏み潰すよう心掛けている。
　さすがに素手で触る気はしないが、紙束で叩き、丸めて潰すくらいのことは、半ば義務的にこなせる。


　しかし、衛生状態や住宅環境が向上してからの生活が長い後輩世代は、そうでもないようだ。
　個人的にはむしろ、面会々会場に現われた珍客＝ゴキブリよりも、ゴキブリを退治することすらも躊躇う後輩の反応の方が、少なからず気に掛かった。


　併せて、ご覧の各位にも注意賜りたい。
　愛用のカバンや、久方ぶりにクローゼットから出したコートのポケットに、もしかしたら蠢く黒い影が……。