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2020年11月15日 イイね!

共産

共産 公共放送・NHKラジオ第一放送の朝時間帯情報番組「マイあさ」内のコーナー「著者からの手紙」から、『垂直から水平へ。的場昭弘著「未来のプルードン 資本主義もマルクス主義も超えて」』に注目。

 元・経済学専攻の学生として、久方ぶりに政治・経済・社会を理解するに助けとなる重厚な理論に触れた思いである。


 的場昭弘氏は、神奈川大学副学長・経済学部教授の任にあり、マルクス経済学の研究家として知られる。
 多くの方は、既にマルクス・レーニン主義を掲げたソヴィエト連邦および東欧の衛星諸国が破綻、大陸中国やヴェトナムも経済面では資本主義化して隆盛を極める中、何をいまさら「マルクス経済学か?」とお思いだろう。
 冷戦終結を前後して学生生活を送った私も、大学の選択授業で「マルクス経済学論」があったのは記憶しているが、一切受講しないまま卒業してしまった。

 互いに核兵器を突き付けあい、不毛なイデオロギー論争に明け暮れた異常な対立構造がベルリンの壁と共に崩壊し、我々は平和でより良き世界へ足を踏み入れた、自由主義体制・資本主義経済の優位性が確定したのだと、誰もが思っていた。
 そんな状況下で、オワコンと化した「マルクス経済学」など顧みられようもない。

 通っていた予備校の政治経済の先生なぞ、「大学でマルクス経済学習うなら、いまからロシアへ亡命して革命を起こしてください」などと茶化していたのを思い出す。


 しかし、その後の社会・経済を俯瞰すれば、我々が勝ち得たはずの「より良き世界」が幻想に過ぎなかったことを、痛いほど思い知らされる。

 資本主義経済は飽くなき膨張を続け、グローバル化の果てに封建時代ですら無かった醜い格差社会を生み出し、大多数の人々が閉塞感に喘ぐ。
 産業が近代化する過程で生じた歪を解析し、その解決策を体系化したマルクスが生きた時代と比べ、何が違うというのか。むしろ経済の状況は悪化し、文明社会としては退化していないかとすら危惧する。

 その閉塞感打破のソリューションを探るに際し、改めてマルクス経済学を学び、エッセンスを汲み取ることは、決して無意味でも時代遅れでも、況してや反社会的な行為でもない。極めて有効な知的行動と心得る。


 まもなく大統領選本番を迎えるアメリカにて、臆することなく社会主義を標榜する民主党左派勢力が存在感を増している。
 これは、左右の別なくアメリカ市民の精神に根差す「自由への渇望感」と、国家や資本の支配から独立した自由な市民が主導する「下からの社会主義」が、深くシンクロしているからだと考える。
 このムーブメントを短絡的に「アメリカの共産化」などと評するのは、現職トランプ大統領の野卑な物言いに増して愚かしいことを、的場昭弘教授の研究が証明してくれよう。

 ルソーが定義するところの自然状態、もしくは唯物論における原始共産制においても「自由」は存在したが、トランプ大統領が「ファースト!」「グレイト・アゲイン!」と叫び散らかす「国家」は、後天的かつ人工的・便宜的に作り上げられたもので、人間にとって根源的な存在たりえない。


 我が国においても、マルクスの名を口にすれば脊髄反射的に、即ち自律的な思考や判断を経ることなく保守派からの苛烈な攻撃に晒され兼ねない。
 そのマルクスがライヴァル視したとされるフランスの思想家・プルードンの思索を辿ることで、左側からも右側からも手垢に塗れた「マルクス経済学」を超越し、誰も見たことの無い新たな領域に到達できるのでは、との期待が膨らむ。


 かつて戦乱や恐慌に直面し行き詰まった古典的な自由主義体制および資本主義経済は、部分的に社会主義・共産主義的な政策(ケインズが理論的支柱を建てた積極的な財政出動など)を導入し、命脈を保った。
 やはり行き詰まり感を否定し得ない現在、コンピュータや自動車の分野で生産体制の改革が進み、資本主義経済の貌を変えつつある。
 川上の資源から川下の小売までに関与して市場を独占し利益を揚げてきた大企業が衰退、代わって高性能の部品や独創的なソフトウェアの開発・製造・販売を手掛ける新興企業が台頭する中、大企業を頂点とする権威的・官僚的で硬直した垂直分業から、各社対等でしなやかな水平分業体制へのシフトが指摘されている。

 これは当に、冒頭インタヴュー記事のタイトル「垂直から水平へ」そのものではないか。


 リアルかつダイナミックな実経済が、生き残りを賭け我らに先んじてプルードンの理論を学習し、既に血肉としているのだとしたら、極めて興味深い。


 佳き書物の紹介に触れ、老いと共に冷めつつあった知的好奇心、或いは知性への敬意が、再び熱を帯びるのを自覚した。









 


Posted at 2021/06/15 21:55:23 | コメント(0) | トラックバック(0) | オピニオン | 日記

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何シテル?   04/18 19:29
 建設業界で禄を食む文系出身(経済学専攻)のプロフェッショナル・エンジニアが、愛車整備・政治経済・文化学術・スポーツそして土木施工の現場で日々記した野帳を公開し...
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