チューニング振り返り、#5はブレーキ編です。
僕がブレーキに手を入れようと思ったのは、
フロントキャリパーの変色がきっかけでした。
マークX 350Sは純正でフロントに対向4POTキャリパーを備えていますが、
これがスポーツ走行すると悲しいくらい熱容量不足で過熱状態になるのです。
上の写真、塗ってないのにこれですよ。(笑)
他のメーカーがこのクラスの車でも片押しキャリパーを採用したりする中、
で、対向4POTを採用しているマークXは頑張っている方だと思うので、
純正の仕様にダメと言うつもりは全くありませんが、
カタログ上だけでなく、実使用において「スポーツセダン」をこの車に期待するとブレーキは期待に応えてくれるスペックではないというのは事実です。
最初は良く聞く「パッドとフルードを変えればOK」というのを信じて、
ディクセルのZとかプロμのHC+とかパッドを色々買いました。
やはり摩耗のスピードが尋常じゃないですし、プロμに至ってはパッドの塗装が弱すぎるので過熱して剥げて、パッドが周辺部品を巻き込んで錆びるという状態に陥ります。
それでも「重い車だからこういうもの・・・」と勝手に納得していましたが、
サス/ショックの検討を通して「根本解決しなければ終わらない」という頭になった自分は考えを改めます。「ちゃんと車に合ったブレーキに変えれば、こんな状態にはならないはずだ」と。
そもそも熱容量が足りていないのに摩材を変えて持ちこたえさせるって、アプローチがずれていたんですよ。
熱容量が足りなければ、熱容量か冷却性能を上げなければいけないんですよね。
具体的には、ローターを大きく、厚く。パッドを大きく、厚く。
これがブレーキ容量不足に対する正攻法です。
ローターを大きくするとなぜいいかと言うと、
当たり前ですが体積が増すので同じ発熱量でも温度が上がりにくくなります。
物理的に熱容量が増すということです。
一方で厚みはと言うと、ベンチレーテッドローターですからローターが厚いほど大きなベンチレーションが設けられるため、これで冷却性能が高まります。
これは僕がフロントに入れているφ360×36mmローターです。
ベンチレーションが純正ローターと比べて尋常じゃなく大きいですよね。
これでローター温度が50~150℃くらい下がるそうです。
大径かつ分厚いローターを使うにはレーシングキャリパーの投入が必要です。
パッドはレーシングキャリパーを使うと勝手に大きく厚くなります。
6POTのレーシングキャリパーはピストン数が多いので、必然的にブレーキパッドが大きくなります。
さらに、レース中にパッドが摩滅してしまってはいけないので、
パッド自体も普通のパッドよりも厚く、新品状態だと摩擦材だけで13mmくらいのものが採用されます。
これだけ厚いとピストンとローターが離れていますから断熱効果もあり、
ブレーキフルードを熱から守ることが出来ます。
またこうしてブレーキローターを大型化すると、ピストンがローターを押す径が大きくなるため、同じ踏力でもブレーキが効くようになります。
ということは、セミメタルパッドみたいなローター攻撃性の高いパッドでなく、
ロースチール材の弱いパッドでも制動力を確保することが出来ます。
選んだパッドはZONE 10F。
ちょっと国際コースでは摩耗が速いかなというのを悩み始めはしましたが、
このパッド、適正温度が常温~650℃です。限界温度は700℃。
これでもフェードしてしまって走れないということはないので、
これで明らかに熱容量が増して熱害からかなり解放されたことが証明されています。
はっきりと効果が確認出来たため、これだけでも
「ブレーキやるならキャリパーとローターをまず変えろ」という感覚が自分の中に根付きました。
キャリパー、ローターって一見高コストですが、"痛い出費"ではありません。
狙い通りの効果が出て、これ以上ブレーキで悩まなくなったからです。
もちろん、ブレーキチューニングの恩恵はこれだけではありません。
ブレーキをキャリパー、ローター単位で変える場合、
ブレーキパッドの特性を前後で弄ることなくブレーキの前後バランスを調整することが出来ます。
ブレーキパッドを前後で換えてしまうと、パッドの熱の入り方、タレ方が前後で大きく差がついてしまうことがあるので、走っていると前後バランスが変わってしまうということが考えられます。
例えばフロントには常温から効くパッド、リヤには200℃まで上げないと効かないパッドなどを入れるとそうなりますよね。
ローターとキャリパーのスペックで前後バランスを作ればそういう心配はなくなります。
チューニングと言う目線で言うと、こちらが特に拘りどころでしょうね。
当たり前ですが、前後バランスが調整できるということは、
フロントだけ大型ブレーキにするとリヤとのバランスが崩れてしまいます。
フロントが早期にロックするようになり、ABSが効いてしまって制動力がトータルで落ちてしまうなんて言うことも有りえます。
ブレーキはちゃんとやるならやはり"前後同時"。
所詮マークXだから、とか、ちょっとサーキット走るだけだから・・・という考えはこの時点でもう全くありません。
「最高のスペックにして走らせる」ことしか考えてないですから、キャリパーもストリート用ではなくレース用をほとんど悩まずチョイスしています。(笑)
レース用はダストブーツ無し、鳴き止めシムも無しですが、
キャリパー剛性が高く、ペダルタッチがとにかく最高です。
さらに最高なのは
マークX
ARTAガライヤ
GT300のレースカーの兄弟みたいなキャリパーだというところです。(笑)
「自分の車にはGT300の車とほぼ同じキャリパーが付いている」
って、これだけで既に滅茶苦茶嬉しいことですよね。
ちなみに埼玉トヨペットさんのS耐仕様マークXよりも僕のマークXの方が上級グレードのブレーキキャリパーが付いています。(ブレーキだけ)勝ったぜ!!と思いました。(爆)
ローターに関していうと、GARLANDレーシングローターはGT300やニュル24hにも供給されているローターそのものですから、ガライヤのローターとマークXのローター、どっちが上級かもはや分かりません。(笑)
初期投資は涙が出るレベルですが、その涙は車が戻って来てブレーキペダルを踏んだら感動の涙に変わります。
(泣いてないけど)
ブレーキって地味ですけど、尋常じゃないくらい愛着が増すので本当にオススメですよ。
その代わり、車のキャラクターを無視して鳴くときは激しく鳴きますけどね。(笑)
次回#6では、前後ブレーキのスペックを今のものに決めた経緯をご紹介します。
続く。