給油

　『しばらく走らせていないからな…』
　仕事を早めに切り上げてガレージに向かう。
　明日から雨の予報だ。

　GT-Rに乗り込み、キーをACCまで捻ったところで気がついた。
　残燃料が少ない。
　『今夜のドライブは、ガソリンスタンドまでとするか…』

　燃料が少なく、軽やかに身を翻すGT-R。
　長く重いエンジンがフロントにあるが、ハンドルを切ると、後輪も逆位相に切れ、一瞬のタメを作って素早い車線変更を見せる。
　これが、GT-Rの際立つ味のひとつだ。

　通勤スペシャルのクルマを1両、2両とかわしてバイパスを走り、贔屓のガソリンスタンドに滑り込む。



　「ハイオク満タン、現金で…」ボソッと伝える。
　ガソリンスタンドの若い兄チャンが、「綺麗にしてますね」と、話しかけて来た。
　「あまり走らせていませんからね」と、またボソッと答える。
　年配の店員は、「新車から持たれてるんですか？」と、聞いてくる。
　さすが年配者だ。クルマを観察し、フタ桁ナンバーに気づいてそう聞いてきたに違いない。
　「ええ、新車から」

　ガソリンスタンドのクルマ好き店員2人と話ができて嬉しくなった。
　『しかしいかんな、照れ隠しでつっけんどんに答える癖は…』
　帰宅してビールを飲みながら反省する。