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「めとき」は煮干し系のスープを使ったラーメン屋です。

かなり年をくったおっちゃんが一人で切り盛りしていて、そろそろヤバいんじゃないかという噂はあったんですが。


ここのと、同じく閉業したうちのと、それ以外で煮干し系のスープを「うまいっ！」と思った試しがありません。

あるとき、奇しくも同じところから同じ煮干しを仕入れていたことがわかって、なるほどとおもってたんですが、煮干しのスープってとにかく難しいです。

素材に左右される度合いが大きく、「うまいっ！」を引き出すのも難しい。

そもそも「うまいっ！」なスープを取れるいい煮干しはあんまり市場に出回ってません。

たとえ品揃えがよい店でも、一般の小売りの乾物屋にはないです。

しかも、同じ煮干しでもちょっと脂が乗っただけで、スープにしたときに雑味が出る。
食べるんなら脂が乗った方が旨いんでしょうが、スープを取るには脂が乗り過ぎてもダメなんです。

さらに、煮干しの材料になるマイワシとカタクチイワシは十数年の周期で漁獲量が増減するので、同じ味を保ち続けるのが難しい。
脂が増えてくるとき＝漁獲が減りだすサインだと言います。

マイワシの漁獲量とカタクチイワシの漁獲量はなぜか反比例するので、マイワシとカタクチイワシと、それぞれで「うまいっ！」を引き出せるようにしておかなければなりません。

「めとき」はおっちゃんが長年それを保ってきた稀有な店でした。

おっちゃんが引退する前に行っとかなきゃなと思ってたんですが、遅かった。

惜しい店を失いました。