前編の終わりに「続く」と書いたまま忘れてたので続きを書きます。
前編はこちら。
https://minkara.carview.co.jp/userid/1478360/blog/42784124/
S65搭載のM3の登場が2008年、MA103搭載の911の登場が2011年なので、設計がより新しいMA103の方が燃費も良くCO2排出量も少なく、環境性能的にはMA103の方が優れているのですが、自動車評論家の投票によって決定する某評価では以下のリンク先のように
https://ja.wikipedia.org/wiki/インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー
排気量が3L~4Lの間の部で2008年から2012年まで、S65が生産されている期間を連続して受賞しています。2011年から2012年の間はMA103と被るのですが譲っていません。評価基準が不明ではありますが、評論家の支持を得ていたのはS65の方だということでしょうか。
両者のスペックは似ていますが、水平対抗6気筒とV8のキャラの違いを感じます。
同回転数で比較すると爆発回数が少なく、1シリンダーあたりの排気量の大きなMA103の方が1発ごとの爆発を大きく感じます。それなのに完全バランスのおかげで振動は本当に少なく滑らかに回るという不思議な感じです。耳栓して音を聞かなければ高級車のように感じるのでは。極低回転で街中を流している時も、高回転まで回しても、どの領域でも滑らかに回ります。
S65はアイドリング付近の回転数の時の音はV8特有のドロドロした感じがありますが、回せば回すほど音の粒が揃って官能的になっていきます。
ここからは完全に個人の好みになりますが、自分はフラットなトルクの方が好きです。よく官能的なスポーツエンジンとして可変機構なんかでトルクが大きく変動するエンジンが挙げられますが(某社の某TECなんかはその代表例です)、個人的には不自然な感じが好きになれません。MA103のトルクの谷はまさにそれに近いですが、トルクの立ち上がりで官能を感じるどころか不満しかないです。それと比べると自分にとってのS65は「抑揚もドラマもない」つまらないエンジンではなく、「全域がクライマックス」なエンジンです。どこかで谷に躓くことなく心地良い回転の上昇が8400rpmまで続きます。
ここまでMA103下げでS65上げの内容が続きましたが、S65の大きな欠点といえば信頼性でしょう。スロットルアクチュエーターとコンロッドベアリングが消耗品扱いというのは量産車のエンジンとは思えないです。どちらも修理費が高額で、コンロッドベアリングの寿命はエンジンブローを引き起こす可能性があり、予防的対処が必要なので厄介です。
それとここまでに書いたMA103の否定的要素のほぼ全てはポルシェによる意図的なデチューンによるものです。MA103の名誉のために触れると、MA103は搭載される車種によってチューニング具合というか仕様が異なります。
375馬力 981ボクスタースパイダー
385馬力 981ケイマンGT4
400馬力 991.1カレラS
430馬力 991.1カレラGTS (またはカレラSにオプションのX51 Power Kitを追加の場合)
ここまでの内容は981ボクスタースパイダーのエンジンに基づいていますが、このようにMA103の中で最弱です。911カレラSのエンジンをデチューンしたものですが、カレラSのエンジンにはトルクの谷が無いですし、ピークトルクが6500rpmまで継続しますし、6500rpm以降のトルクの落ち込みも穏やかです。従って自分の不満はカレラSではだいぶ改善されると思われます。
そしてカレラGTSのX51 Power Kitはシリンダーヘッドとカムシャフトとインテーク周りが別物で単なるECUチューンでは無いのですが、カレラSより更に高回転での伸びが上乗せされているので8000rpmまで回らないにしてもS65に引けを取らないのではないかと予想しています。
振り返るとこれらのエンジンの時代がNAエンジン黄金時代の終焉だったと思います。AMGには6.2Lという大排気量のV8がありましたし、アウディには4.2Lで450馬力のV8エンジンがありましたし、BMWには5.0LのV10エンジンもありました。これらのエンジンの後継は全て排気量を縮小しターボ付きになり、今ではレクサスのV8という例外を除くとスーパーカーしか存在していません。環境問題による仕方のない時代の流れであって、これからガソリンの高騰なども予想され維持も難しくなっていくかもしれませんが、楽しめる間はこの絶滅種を楽しみたいと思います。
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2022/08/13 17:10:29