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タツゥのブログ一覧

2014年08月12日 イイね!

ゼロカウンター

今日はゼロカウンターについて考えてみたいと思います。

ゼロカウンターとは、コーナリング中において、前輪の向きと車体の向きがほぼ一致した状態、すなわち舵角がゼロのカウンタステアを当てた状態を言います。

見た目がカッコいいのと、プロドライバーが”舵角を少なく”と繰り返し発言するので、ゼロカウンターで走行することが最速の走り方なのではないか?と思っている人もいるのではないかと思います。

実際に最速ラップをたたき出す人達の走りを見ると、ゼロカウンター状態になっていないので、ゼロカウンターが最速の走り方でないことは明らかなのですが、その理由を考えてみることにします。

まず、タイヤの横方向グリップ力を決める要素を挙げてみましょう。

1、タイヤと路面の摩擦係数
2、垂直荷重
3、タイヤ横滑り角(=スリップアングル、スリップ角)
 ※横滑り角とはタイヤの転がる方向とタイヤが実際に進行する方向との角度のこと

ゼロカウンターと関係あるのは3のタイヤ横滑り角です。
タイヤは横滑り角がないと横方向のグリップ力を発生することができません
これ大事です。

正しくは、「横方向の力がタイヤの接地面に加わると、タイヤが変形するため、タイヤの転がる方向とタイヤの進行方向に角度差が生じる。」ですが、事象としてはどちらも同じです。

タイヤは横滑り角がないと横方向のグリップ力を発生できないという事実を踏まえて、ゼロカウンターについて考えます。

具体的な数値で説明した方がわかりやすいので、具体的な数値で考えます。
ただし、計算が面倒なので荷重移動と内輪と外輪のハンドル切れ角の差は無いものとします。

例えば、僕のS2000(車重m:1350kg)が横加速度a:1.2Gで旋回していたとします。

このときに必用な1輪あたりのタイヤの横方向グリップ力Fy(N)は

Fy=m×a/4
 =1350×9,806×1.2/4
 =3971(N)

垂直荷重は車輌に働く地球の引力に等しいので、重力加速度を9.806m/sec2とすれば、1輪当たりの垂直荷重Fz(N)は

Fz=1350×9.806/4
  =3309(N)

次に、タイヤの横方向グリップ力(=コーナリングフォース)と垂直荷重、横滑り角の関係を表したグラフから、3971Nのコーナリングフォースを発生するために必用な横滑り角を求めます。

これは実測結果を用いるしかないので、以下の文献から引用しました。
タイヤの力学と操縦安定性
フラットベルト式 サスペンションタイヤ試験機

①と②に出てくる実測結果はタイヤサイズも試験設備も異なるのですが、重ねてみるとそこそこ同じ結果になっていました。
僕のS2000で使っている255/40R17の場合はもう少しグリップが高いと思うので、今回は②のグラフを1.1倍したもので考えることにしました。(1.1倍にしたのは後々都合がいいからです)



グラフから3971Nのコーナリングフォースを発生させるためには、約8°のスリップアングルが必用だということがわかります。

つまり、普通のグリップ走行かゼロカウンター状態かに関係なく、S2000が1.2Gで旋回しているときは、4輪のタイヤ横滑り角は8°以上になっているということです。

この状態を絵で表してみます。
旋回半径は23mです。

1、前後タイヤの横滑り角が等しいとき


2、ゼロカウンター状態のとき


ゼロカウンター状態では、前輪横滑り角よりも後輪横滑り角の方が大きくなります。
前輪の横滑り角が最大のコーナリングフォースを得られる角度だとした場合、後輪の横滑り角は必要以上に大きな横滑り角になるということです。

仮にタイヤの特性上、横滑り角が過大でもコーナリングフォースの低下がないとすれば、過大な横滑り角でも問題がないように思います。
しかし、実際は転がり抵抗が増えるので、加速が悪くなったり、滑り角が大きいだけに磨耗が多くなり、いいことはありません。


今回の内容については、実測結果を基にしているわけではないので、本当のところはわかりませんが、前後に同じタイヤもしくは同じような特性を持ったタイヤを使う場合には、ゼロカウンター状態で走ってもいいことはないので、実際にはゼロカウンターで走る人がいないのだろうと思います。
Posted at 2014/08/12 23:51:35 | コメント(2) | トラックバック(0) | サーキット走行理論 | 日記
2014年07月12日 イイね!

ドライビングスタイル2の続きの続き

先週は、大阪出張行ったり、テスト現場に張り付きでいたり、会議と打ち合わせに出席しまくったりでなんだかよくわからないうちに終わってしまいました。

さて、そんなわけで前回の続きです。
前回、走行ラインで大事なことは、最小旋回半径の大きさと位置であると書きましたが、前回は半径の大きさについて見てみました。

今日は、位置について見てみます。
今回も前回同様にTC1000の1~2コーナをS2000で走ったときのシミュレーションをします。

最小旋回半径は僕の推奨値である47mとします。
位置は、前回の位置とその前後で計算します。

まずは走行ラインです。
赤:前回の走行ライン、青:赤より最小半径を15m奥(2コーナ寄り)、黒:赤より最小半径を20m手前
図中の□のところが最小旋回半径の位置を示しています。


速度変化
最低速度の位置の差=最小半径の位置の差です。
タイム差は赤と青の差を表していて、下に行くほど青の方がタイムがよくなります。


ラップタイム(走行距離分の補正も入っています。)


最高速度


結果を見ていただいてわかるように、今回計算した範囲では最小旋回半径の位置を奥にすればするほどラップタイムもよく、かつ3コーナ手前の最高速度も高いことがわかります。

ちなみに僕の走行ラインは、黒の走行ラインが最も近いです。
シミュレーションとの比較を見てみます。
赤:僕の実測 、黒:シミュレーション(半径47m)

赤:僕の実測 、黒:シミュレーション(半径47m)


走行ラインも速度変化もおおよそ合っていることがわかると思います。
シミュレーションでは走行ラインを元に速度を計算しているので、走行ラインが同じなら、速度変化も同じになります。
実測の結果も同様に、走行ラインが決まれば、速度変化もおおよそ決まります。

つまり、僕の速度変化が現在の状態になっている原因は、ほとんどが走行ラインが原因ということです。
走行ラインは僕自身が決めていますから、僕自身が最適でない走行ラインを選び、その分遅いタイムで走っているということになります。

そこで、普通はこう思うわけです。

「なんで、シミュレーションで最もタイムの良い、青のラインで走らないの?」

ここが最大の悩みどころなのですが、自分が思ったように走れないのです。
もちろん走行ラインを合わせるだけなら青のラインで走ることは可能です。
しかし、青の走行ラインで走ろうとすると、速度が落ちすぎてしまいます。

なぜ速度が落ちすぎるかと言うと、最低速度になる手前付近でテールスライドしまうからです。
テールスライドする原因は横Gが高く、かつ前荷重になっているからだと考えられるので、前荷重にならないようにします。

前荷重にならないようにする=減速しないなので、速度が落ちません。
速度が落ちないので、同じ旋回半径で曲がると横Gが上がります。
横Gが上がると、前荷重でなくても前後両輪が滑ります。

そこで、旋回半径を大きくしなkればならないのですが、少し大きくしただけではやっぱり滑ってしまうので、曲がり始めの状態の速度を落とします。
すると全体的に速度が落ちます。
結果全体的に遅くなります。

ごちゃごちゃ書きましたが、青の走行ラインで走ろうとすると、恐らく摩擦円の縁を使って走れないので、結果としてタイムが上がるどころか下がってしまうのが現状です。

この原因がクルマにあるのか、運転に問題があるのかわからないのですが、感覚的には運転に問題があるように思っています。

ここで、話を強引にドライビングスタイルに戻します。
黒の走行ライン、すなわち最小旋回半径の位置が手前側にあるような走行ラインを走った場合、最低速度になるところまでの減速Gが比較的高めです。(速度変化が大きい)
これに対し、青の走行ラインは最低速度になるところまでの減速Gが比較的低めです。(速度変化が小さい)

これを無理やり言い換えると

最小旋回半径位置が手前の走行ライン:ブレーキを残す走り方
最小旋回半径位置が奥側の走行ライン:ブレーキをあまり残さない走り方

と言えるように思います。
何が言いたいかと言うと、日本式とか欧州式というのは、もしかして最小旋回半径位置の違いのことを言いたいのではないか?という気がするわけです。

前回までは、コーナ中の最低速度=最小旋回半径の大きさの違いがドライビングスタイルの違いであるという観点で話を進めてきましたが、さらに最小旋回半径の位置もドライビングスタイルの違いとして着目すべき項目のような気がします。

ところで、僕がサーキット走行を始めたばかりのころ、サーキット走行理論に悩んでいるときに読んだ雑誌の記事で今でも心がけていることがあります。

それは、WRCドライバーのマルク・アレン選手の言葉で、マルク・アレン選手曰く

「アクセルには全開と全閉しかない」

実際ロガーを見てもそういう傾向があったそうです。

これを読んでびっくりしました。
全開と全閉しかないというのは大袈裟としても、ほとんどパーシャルを使わないような走りをしているってことです。
僕としては、いくら4WDと言えども、グラベルでは十分なグリップが得られないので、アクセルコントロールは大事だと思っていたのに、全開と全閉しかないと言い切っていたのは驚きでした。

マルク・アレン選手はWRCではシリーズチャンピオンは獲れなかったものの、優勝は何度もあり、まさにトップラリーストです。
そのマルク・アレン選手が全開と全閉しかないと言うのですから、当時僕が乗っていたS13シルビアであれば、アクセルコントロールなんて不要に決まってます。

それ以来、心がけている走り方は、アクセルコントロールしなくてもいい走り方です。
減速が終わったら即全開。
つまり僕の目指している運転スタイルは、「マルク・アレンスタイル」です。

実際は全くできていないのですが、今回シミュレーションをやってみて、減速後にアクセルを即全開にできるような走り方が理論上は速いということが確認できたので、今後も引き続きアクセルコントロールしなくてもいいような走り方で走れるようにいろいろ試してみたいと思います。
Posted at 2014/07/12 22:55:24 | コメント(3) | トラックバック(0) | サーキット走行理論 | 日記
2014年06月30日 イイね!

ドライビングスタイル2の続き

前回の続きを書こうとしたところ、いろいろ計算しなくてはならないことが多く大変遅くなりました。

それでは続きです。

僕のブログには、走行分析の中に、荷重移動や車輌姿勢という言葉がほとんど出てきません。

なぜ出てこないかと言うと、どちらも今持っているロガーでは測定できないからです。
測定できないものを論じたところで、確認の方法がありません。

その代わり、測定できる項目である横Gと前後G(Gサークル)を確認することにしています。
荷重移動ができていようがいまいが、横Gと前後Gが十分高ければそれでいいのです。

もし、横Gも前後Gも相場よりも低い場合は、その原因として荷重移動を考えます。
しかしながら、荷重移動は横Gと前後Gによって発生する事象なので、横Gと前後Gだけを見ていればおおよそわかります。

したがって、荷重移動なんていちいち考えなくても、横Gと前後Gだけ見てればおおよそのことはわかるので、あまり出てこないというわけです。

ということで、今回も荷重移動は無視して、走行ラインと速度のみで、ドライビングスタイルを考えることにします。

その前に、ドライビングスタイルを語る上では、目標とする最適な走り方を明確にする必要があるため、まずは最適な走り方を考えることにします。

最適な走り方とは最適な走行ラインをタイヤの摩擦円の縁を使って走った結果得られる速度で走ることなので、実質的には最適な走り方=最適な走行ラインとも言えます。

走行ラインで大事なことは、最小旋回半径の大きさと位置です。
これさえ決まれば、あとは必然的に走行ラインが決まります。

最適な最小旋回半径の大きさですが、おそらくこれは数値解析的に求める以外に解を得ることができないので、数値解析=サーキットシミュレーションで求めます。

しかし、闇雲にサーキットシミュレーションをしようとしてもうまくいかないので、まずは作図法と僕の経験から得た最小旋回半径の算出式で半径を求めます。
次に、この半径を用いて最小旋回半径の大きさと位置を調整して最適な走行ラインを求めます。

具体例がないとわかりずらいので、TC1000の1~2コーナで計算した例をごらんください。
まずは、いつものように作図法で最小旋回半径と走行ラインを求めます。


TC1000の1~2コーナの推奨値は47.3mだったので、42m、47m、52m、57mの4種類の最小旋回半径を使った走行ラインでシミュレーションをしました。
2コーナ以降の走行ラインは全て同じとして、ラップタイムで比較します。

走行ライン


実際に走れそうな走行ラインにしようとすると、57mだけ他の3つと大きく違うラインになってしまいました。

速度です。 黒:42m、赤:47m、青:52m、緑:57m


42~52mまでは減速部も加速部もあまり違いがないのですが、57mだけは走行ライン同様に大きく違う結果となりました。

ラップタイムの計算結果


推奨値なだけに予定どおり47mのときが最も良い結果になりました。
57mは速度も走行ラインも大きく異なりますが、0.1秒以内の差で42mと同じラップタイムになりました。

ところで、TC1000の場合は2コーナから3コーナまでの直線距離が短いので3コーナ手前での最高速度がラップタイム与える影響は小さいのですが、直線距離が長いコースでは最高速が大事になります。

そこで、最高速を比較すると


最高速でも47mが最も良い結果となりました。

このシミュレーション結果で何が言いたいかと言うと、最適な最小旋回半径に対する差が大きければ大きいほどラップタイムが低下するということです。

しかし、47mと52mの差は0.017秒しかないので、ほとんど同じとも言えます。
もちろん、これがコーナ10個分になると、0.17秒も差がついてしまうので無視できないとも言えます。

僕レベルであれば、そもそもの運転の精度が低いので、誤差みたいなものだと思いますが、スーパーフォーミュラクラスになれば、この差は許されないはずです。

なので、レーシングチームでは、このようなシミュレーションを行った上で、最適な走り方ができるようにクルマのベースセッティングを決めていると思われます。

ここで話をドライビングスタイルに戻します。
前回も書いたように、いきなり最適な走り方ができるとは思えません。
従って、最適な走り方から少し余裕を持った走り方をして、修正していきたいわけです。

もし、42mの走行ラインを最適だと考えて、その通りに走ったとします。
完璧に走れたとして、最適よりも0.04秒遅い結果しか得られません。
また、途中で減速を開始してから最適でないことに気が付いても、減速開始地点が奥なので、もはや修正することができません。

ところが、52mの走行ラインを最適と考えて、その通りに走ったとします。
完璧に走れば0.017秒遅いだけなので、遅れは最小限に済みます。

さらに!、ここが重要です。
52mの走行ラインでは減速の途中で最適でないと気が付いてしまった場合、より半径が小さい側の走行ラインであれば走行ラインを変更することが可能なのです。

こんなイメージです。


上図のように205m付近から走行ラインの目標を途中で変更し、走行ラインに合わせて速度も落とします。


このようにラインを乗り換えたときのラップタイムは42.32秒となり、なんと47mのみで計算したときよりも速くなってしまいました。
実際はシミュレーションのような速度変化をするのは難しいと考えられるので、ほぼ同じタイムになると考えられます。

今までのところをまとめると、
1、最適な最小旋回半径からの差が大きくなるほどラップタイムは遅くなる。
2、最適な最小旋回半径よりも小さい半径を当初目標とすると、減速の途中で修正できない。
3、最適な最小旋回半径よりも大きい半径を当初目標とすると、ラップタイムの落ち幅が小さく、減速途中でも最適な走行ラインに修正できる。

つまるところ、荷重移動がGサークルへ影響を与えないとすれば、コーナリング速度が高い側から最適な走り方に修正した方が、ラップタイムの落ち幅が小さく、かつ修正の自由度も高いってことです。

なのでこの辺が、いわゆる欧州式をススメる人がいる理由なのではないかと思われます。

さらに続きます。
Posted at 2014/06/30 22:36:39 | コメント(2) | トラックバック(0) | サーキット走行理論 | 日記
2014年06月28日 イイね!

ドライビングスタイル2

今日も雨です。
雨が降るといつも思い出すこの歌、いい歌ですなぁ。

さて今日のお題はドライビングスタイル2です。
ドライビングスタイルとは、サーキットでのクルマの走り方のこと言うのですが、走り方とは以下の二つのことを示します。

①走行ライン
②走行ライン上の速度

ハンドルの切り方やブレーキの踏み方は、この二つを達成するための手段で、それはそれで大事ですが、ラップタイムは走行ラインと走行ライン上の速度の二つだけで決まってしまうので、ここでは走行ラインと走行ライン上の速度の二つのことを走り方と言うことにします。

また、横Gや前後Gも走行ラインと走行ライン上の速度だけで決まるので、これらも走り方に含まれています。

前回のドライビングスタイルでは、オートスポーツ誌で取り上げられていた欧州式、日本式の違いについて自分の意見を書いてみました。

簡単におさらいすると

オートスポーツ誌の定義は

 日本式・・・加減速を重視し、ブレーキはクリッピングまで残す走り方
 欧州式・・・コーナリング速度を重視し、減速は直線で終わらせて、コーナは一定速度で走る走り方

というものでした。

しかし、ここで定義されている欧州式のような走り方では、実際には速く走ることができなし、そんな走り方をするドライバーを見たことがありません。

そこで、僕の考えとして

 
 どちらの走り方もほぼ同じであるが、
 日本式・・・比較的加減速重視
 欧州式・・・比較的コーナリング速度重視

という説を書きました。

さらに、先日いただいたコメントの返信には以下のように書きました。

 どちらも目標とする最適な走り方は同じであるが、 
 日本式・・・最適な走り方に速度が低い側から合わせ込む
 欧州式・・・最適な走り方に速度が高い側から合わせ込む

と返信したものの、いまいちしっくりこなかったので、さらに考えた説がこちらです。

 どちらも目標とする最適な走り方は同じであるが、
 日本式・・・最適な走り方に直接合わせ込もうとし、加減速を重視する
 欧州式・・・最適な走り方に速度が高い側から合わせ込もうとし、コーナリング速度を重視する


これらならしっくりきます。
いまいち意味がわからないと思うので解説します。

まず最適な走り方とはなんぞや?ということですが、サーキット走行において、クルマ(タイヤ含む)と路面状態が決まると、到達可能な最速ラップというのが存在し、到達可能な最速ラップを達成できる走り方が、最適な走り方です。

オートスポーツ誌の書き方では、それぞれが目標としている最適な走り方が異なるかのような印象を受けます。

しかし、スーパ-GTやスーパーフォーミュラをサーキットに見に行ったり、車載映像を比較してみても、ほとんど違いがありません。
違いはあるけどその差は小さいように見えます。

その理由は、目標としている最適な走り方がほぼ同じだからだと考えています。

例えばスーパーフォーミュラのチームはプロですから、プロが作ったサーキットシミュレーション専用のソフトで空力などを考慮したシミュレーションを事前に行っていると考えられます。

空力の効くクルマになると、直線を速く走る場合とコーナを速く走る場合で、どちらのがラップタイムがいいのかを事前に検討しないと空力仕様を決めることができないし、ギア比も決めることができないので、まともなチームなら間違いなくシミュレーションをしているはずです。

従って、その時点で目標とする最適な走り方を各チームとも持っていると思います。

もし、目標とする最適な走り方が同じチームでもドライバーによって異なる(シミュレーションにドライビングスタイルが考慮されている)ということであれば、その場合には、それこそがドライビングスタイルの差だと思うのですが、雑誌の記事などを読んでも、そこに差があるようには感じられません。

それに、仮にドライバーによってシミュレーションのパラメータ(走行ラインとか)が異なるとします。
そうすると、コンピュータはそれぞれのパラメータに対し結果を出すので、どちらかが速く、どちらかが遅いという結果が出てくるはずです。
普通は速い方の走り方が最適な走り方なので、そちらを目標とすべきだと思うのです。

つまり、スーパーフォーミュラなどのレーシングチームは、ドライビングスタイルを考慮しない最適な走り方を知っていて、実際のサーキットでは、路面状況やクルマの状況、さらにはドライビングスタイルなどに合わせてセッティグをして行くという作業をしているはずです。

ここで、もう一度、日本式、欧州式の話に戻ると、これは最適な走り方への合わせ込みの手法の違いを表しているというのが僕の考えです。

そもそも、最適な走り方が理論上存在していたとしても、100%それを実現することなんて無理です。
なので、最適な走り方への合わせ込みの手法がドライバーによって異なると考えられます。

これがドライビングスタイルの違いだと思うわけです。
目標とする最適な走り方は同じだが、そこへの合わせ込みの手法が異なるといことだと思います。

日本式の場合は、最適な走り方におおよそ見当をつけて、いきなりその走り方をしようとする手法です。
この手法の場合、理論上の最適な走り方に対し、ブレーキ開始地点が手前になったり、奥になったりします。

これに対し、欧州式は最適な走り方におおよそ見当をつけて、その最適な走り方よりも、少しコーナリング速度が高くなるような走り方をして、そこから最適な走り方に合わせ込む手法です。

この手法の場合、最適な走り方の走行ラインよりも最小旋回半径を大きくする必用があるので、少し手前から減速を開始します。

どちらも、理論上の最適な走り方になっていないので、到達可能な最速ラップタイムからは遅いというところは同じです。
どちらが遅いかと言うと、最適な走り方からのズレが大きい方が遅いので、どちらとも言えません。

しかし、プロドライバー達がやたらと欧州式をススメるのには理由があると思うのです。
ところで、彼らはその理由をなぜか荷重移動とか車輌の姿勢で説明しようとしますが、これは間違いです。

大事なので大きく書きます。

ラップタイムは、荷重移動や、車輌の姿勢で決まるのではなく、走行距離と平均速度のみで決まる

各場所での速度が高い理由として荷重移動や車輌の姿勢を説明に使うのは正しいのですが、荷重移動や車輌姿勢でラップタイムを説明しようとするのは間違いです。

ラップタイムが速い理由を説明するのであれば、まずは走行距離と平均速度について説明しなければなりません。
荷重移動や車輌の姿勢はその次の段階です。

途中ですが、お腹が減ったので、マックに行ってきます。
Posted at 2014/06/28 20:58:19 | コメント(4) | トラックバック(0) | サーキット走行理論 | 日記
2014年06月22日 イイね!

コースアウト感

先日、みん友のkazu xxさんがブログで自身の車載映像に対し、”エキサイティングな感じがしな-い”と書かれていました。

車載映像を見てみると、スキール音も聞こえるし、テールスライドもしていて、ハンドル修正もしているので、エキサイティング感がないわけではないのですが、確かに何かが足りません。

じ~っと見た結果、エキサイティング感の中の大事な要素である、コースアウト感が足りていないように感じました。

コースアウト感とは何かと言うと、
”この勢いで加速したら、そのままコース外側へ飛び出してしまうのではないか?”という感覚です。

この感覚はコーナ立ち上がりアクセル全開地点での次ぎの三つでおおよそ決まります。
①速度
②走行ライン上の位置と車輌の向き
③全開時の加速度

従って、コースアウト感というのは、コースアウトする寸前ではなく、アクセルを全開にした瞬間に決まるということです。

あまり良い例ではないのですが、僕がTC2000を走行したときの車載画像とデータで説明します。
場所は第2ヘアピンです。

僕の走行ラインとコース上の位置関係はこんな感じです。
残念ながら写真のクルマは僕のクルマではありませんが、たまたま同じような走行ラインを走っているようです。


車載画像


絵的に見ると、コース幅いっぱいに走っていて、コースアウト感があるように見えます。
しかし、車載映像を見るとそんなにコースアウト感はありません。

なぜなら、僕の場合は、実際に走っているラインよりも、だいたい1mくらい縁石よりも内側を走れるようにアクセル全開にしているからです。

もし実際に1m内側を走ろうとするともっと立ち上がりの旋回半径を小さい半径で走ることになり、その分だけ横Gも高くなります。
そうすると、摩擦円の縁に近づきます。

摩擦円の縁ギリギリで走行していると、テールスライドが起きたときに、そのままコースアウトしてしまう可能性があるので、少しだけコース内側を走れるようなタイヤグリップに余力がある状態でコース外側を走って横Gが下がるようにしています。

つまり、僕の場合は”コース幅いっぱいの走行ラインで走っているが、その走行ラインをタイヤの摩擦円の縁で走っていない”という状態です。

次にアクセル全開地点をデータで見てみます。


速い人の走行データと比較すると、僕の方が10mくらい奥でアクセル全開にしていて具合が悪いのですが、ここでは僕の走り方が僕のS2000ではそこそこ悪くない状態とします。
ただし、コースウト感はありません。

作図による全開位置の推定をすると、だいたい1250m付近でアクセル全開の加速カーブになっています。

これを走行ライン上の位置で見ると、このような位置になります。
青色が僕の実走ラインです。



車載映像の音を聞いてもこのあたりなので、1250mのところで全開にしているようです。

コースアウト感を出すためには、前述の速度、位置と向き、加速度の三つが大事なわけですが。速度は、最低速度地点からの距離がほとんどなく、当然全開加速をしていないので、最小旋回半径の大きさで決まってしまいます。

加速度はきちんとグリップしていることを前提にすれば車輌の加速性能で決まるので、位置と向きがコースアウト感を出すために必要となります。

ここで、ドリフト状態でないとすると車輌の向きは走行ラインと走行ライン上の位置で決まってしまうので、結果的には走行ライン上のどこでアクセル全開にするかが重要になってきます。

言うまでもなく、走行ラインのより手前側、つまり最低速度地点により近い地点でアクセル全開にした方が立ち上がりの速度があがるのですが、そのためには摩擦円の縁で走るとともに最低速度地点からすぐに旋回半径をどんどん大きくしなければなりません。

そのときの走行ラインが上図の赤線です。
緑線は逆に最低速度地点からの旋回半径を小さい状態で走行したラインです。

赤線はアクセル全開時の車輌の向きがコース外側にきつい角度で向かっているので、その分コースアウト感があります。
緑線は、ゆるい角度で向かっているのでコースアウト感はありません。

赤の走行ラインは、より手前からアクセル全開にできるものの、コース外側縁石付近の旋回半径が青の走行ラインよりも小さくなってしまうので、摩擦円からはみ出す可能性があります。

そのため実際はこのラインで走ると、縁石の手前でアクセルコントロールが必要になる可能性もあり
、必ずしも赤の走行ラインの方がいいということではなく、走行ラインを決めるときには、一度アクセルを全開にしたら途中でコントロールする必要がないような走行ラインを選ばなければなりません。

車輌の向きとコースの関係をわかりやすくしてみました。


桃色の矢印がアクセル全開時の車輌の向きです。

この地点の車載画像


クルマによりますが、このくらいの場所であれば全開にしても曲がりきれそうな気がするので、車載映像にコースアウト感がないのもうなずけます。

上の車載画像より、もう少し手前から全開にできると、たぶんコースアウト感があると思います。
この辺  (上の車載画像ではアクセル全開にするためにハンドルを戻しています)


ところで、少し話が変わりますが、コーナ立ち上がり時の進みたい方向は、常に現在の進行方向よりも少しだけ内向きの方向(水色の矢印)です。
コーナ立ち上がりの方向(黄色い矢印)が進みたい方向ではありません。

黄色い矢印の方向に進もうとすると、コース幅いっぱいに走りにくいので、外側の縁石に向かって加速すると考えたほうがうまく走れると思います。

最後に大事なことを忘れてました。
F1の車載映像を見ても予選などの一発アタックのときは、決勝よりもコースアウト感があるので、それはそれで大事だと思いますが、どちらかと言うと、きちんとコース幅とタイヤの摩擦円いっぱいを使って走れることが大事なので、車載映像のコースアウト感そのものは、あまり気にしなくてもよいと思います。

それと、僕程度の運転レベルだと、コースアウト感のある走りをしようとすると、本当にコースアウトしてしまう可能性が高まるので、この領域はもっとレベルが上がってからで十分だというのが僕の考えです。
Posted at 2014/06/22 21:23:03 | コメント(3) | トラックバック(0) | サーキット走行理論 | 日記

プロフィール

サーキットで車を速く走らせるために必要なこととはなにか?を研究するのが趣味です。 日光、TC1000、茂原、を毎年走行してます。 2010年まではもてぎで開...
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