
家庭ゴミで、「これ、どうやって捨てたらいいの」と困るのが天ぷらなど揚げ物をした後の油。いわゆる廃油ではないだろうか。そのまま流しの排水口に捨ててはいけない。環境汚染の原因になるし、排水管を詰まらせる原因にもなる。
実際、ディスポーザー(生ゴミ粉砕処理機)を備えたマンションで排水管詰まりを起こす原因で最も多いのが、この廃油だという。天ぷら油を排水口に捨てると、管の途中で油が冷えて固まってしまう。そこにディスポーザーで砕いた食べ物が流れてくると、油に付着してたまる。そこへまた砕いた食べ物が流れてきて……結局、排水管が詰まってしまうのである。
ぼろ切れや新聞紙に染みこませたり、凝固剤で固めたりしてから燃えるゴミとして捨てる方法も、捨てるための処理に手間がかかるし、費用もかかる。理想的な処理方法が思い当たらず、途方に暮れた結果、「もう、家では揚げ物をしない」という人も出てくるほど、やっかいな問題なのである。
マンション共用部に廃油回収ボックス
この廃油問題をみごとに解決する方法がある。阪急不動産が分譲する「ジオ・シリーズ」のマンションで採用されているもので、共用部に天ぷら油など廃油を回収するボックスを置いているのだ。
マンション居住者は手に持ちやすい器に廃油を移して、エントランスホールなどに置かれたボックスまで持って行く。ボックスのフタを開けて、廃油を注ぎ入れる。これで、廃油の処理が完了するので、簡単だ。
では、捨てた廃油はどうなるか。回収した油はバイオディーゼル燃料に精製。系列の阪急バスの燃料として使われるのである。精製したバイオ燃料1リットルでバスは約1キロ走行可能という。
廃油をムダに捨てる罪悪感から解放
この廃油回収ボックスがあれば、廃油をムダに捨てる、という罪悪感から解放されるだろう。それだけでなく、世の中の役に立つように廃棄できる気分のよさもある。廃油を、大手を振って捨てることができるアイデアだ。
非常によいアイデアなのだが、残念ながら、首都圏での採用例はまだない。阪急不動産が分譲するマンションは首都圏にもあるのだが、阪急バスが首都圏に走っていないので、回収されないのだ。
明治から大正にかけて、阪急電鉄は、路線や沿線の街づくりで、全国の鉄道会社のお手本になった。始発駅に系列のデパートをつくり、沿線に遊園地と憧れを集める高級住宅地をつくる……同じことが首都圏の多くの私鉄で模倣された。
同様に、「廃油回収ボックス」と「バス燃料への再利用」の工夫も、首都圏のマンションで取り入れてほしいものである。
Posted at 2016/09/10 11:41:04 | |
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