
中国の沿岸幹線物流を、トラック輸送から鉄道や水上輸送に切り替える、「モーダルシフト」が一段と推進される。交通運輸部が策定した、「運輸構造調整推進に関する3カ年行動計画」が、国務院常務委員会の審議を通過し、近く公布される運びだ。
長江と黄河という、2つの大河の流域で発展してきた中国は、この大河を結び、北の北京から南の杭州をつなぐ、京杭大運河を沿岸経済交通の要としてきた。ところが、内陸部の発展とモータリゼーションで、瞬く間にトラック輸送が拡大。現在の全国貨物輸送量に占める、道路輸送の比率は78%を占めるようになった。近年は環境保全の観点からも、一度により大量の荷物を運べる、鉄道や水上輸送の活用が求められている。モーダルシフトは、国務院が定めた3カ年大気汚染防止プロジェクト、「藍天保衛戦」(青空防衛線)の重要施策に盛り込まれた。
運輸構造調整推進に、関する3カ年計画は、北京・天津・河北とその周辺エリア、長江デルタ地域、汾河と渭河の流域にある、汾渭平原を主な対象に設定。その上で、コモディティ貨物輸送の、「道路→鉄道」、「道路→水運」を進める内容だ。
2020年までに、全国の鉄道貨物量を17年比で、11億トン(30%)増やす。北京・天津・河北で40%、長江デルタで10%、汾渭平原で25%ずつ増量していく。また、水運貨物量は17年比で5億トン(7.5%)の増加をめざす。一方、沿海港湾のコモディティ貨物道路輸送量を、4億4000万トン減らすことが目標。
これらの目標を実現するために、今年から全国規模で(1)鉄道輸送能力の引き上げ、(2)水運システムのレベルアップ、(3)道路貨物輸送体制の見直し、(4)複合一貫輸送(マルチモーダル)の導入、(5)都市グリーン配送の推進、(6)各輸送手段間の情報資源統合――の6大行動を展開する。
中国の物流システムは、足元で道路輸送の比率が、極端に高い不均衡な構造だ。全国貨物輸送量に占める道路輸送に比率は、08年の74%から17年に78%へと拡大した。半面、鉄道輸送比率は13.2%から7.8%に低下している。17年の鉄道貨物輸送量が08年比で11%増加したのに対し、道路貨物輸送量は91%も拡大した。道路貨物の輸送量の拡大には、中国で発展が著しいEC(電子商取引=ネット通販)の拡大がある。
なお、日本の国内貨物の輸送比率は概ね、自動車が50%、内航海運45%、鉄道5%という比率になっている。EC市場の拡大で宅配便の取扱量が大きく伸びているのは、日本にもあてはまる。京杭大運河は、すでに水量が減少するなどによって北部では、北京-天津の短い区間のみしか活用できないが、南は済寧から杭州まで利用可能。これまで2つの大河の支流や黒龍江などの、多くの河川や様々な運河によって、水上輸送の動脈を作ってきた中国では、水上輸送の活用がもっと進んでもよいだろう。(写真は現在も活用されている京杭大運河。写真提供:123RF) サーチナ 2018-09-14 07:12
Posted at 2018/09/15 12:09:24 | |
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