
久々に、ちょっとは違うクルマに乗ってみたくなってカーシェアの車両をお借りしました。
今回の話のネタはそのクルマ、日産・サクラになります。
日産・サクラは純EV車で大きさは軽規格に収まる大きさ、つまりは「軽EV」ということになります。バッテリー容量は20kWhで、日産の初代リーフ初期モデルと容量は同じです。
メーカーのカタログスペック上は航続距離180kmとのことで、そこから算出する平均電費は9km/kWhとなります。ちなみに同じくカタログ上の電費はWLTCモードで124Wh/kmで、ここから算出する航続距離は約161kmとなります。(1/0.124×20=161.29)
モーター駆動になった点以外は、おおよそのパッケージングは日産・デイズに近しいものになります。また日産ご自慢の「プロパイロット」という運転支援パッケージの装着も可能です。
今回お借りした車両は、装備的におそらく最上級のGグレード相当でプロパイロットと純正ナビ付、シートヒーターとステアリングヒーターも付いていました。2022年登録で走行距離は2.6万km、装着タイヤはヨコハマ・ブルーアースの14インチタイヤで2022年製(=恐らく新車装着タイヤ)でした。

借受時点で、バッテリー容量100%(!)からスタートです。
まずは夕方の都内を20kmほど、下道で走り回ります。乗り出して思ったことは、乗り心地が結局は軽自動車の域を出ないことです。
車両前後方向の振動(ピッチング)が大きく、特に後輪を中心にぴょんぴょんと揺さぶられる感覚を受けます。また、タイヤから発生するロードノイズが大きく、路面状況によって音が大きく変わります。
タイヤの空気圧次第で動きは改善するかもしれませんが(残念ながら今回は測定・調整共にせず)、クルマの動きそのものに「イイモノ感」は感じられませんでした。
ある程度流れに乗って走行すると、モーターならではのいいところが見えてきます。
まずは停止から発進・加速・減速に至るまでロードノイズしかしないこと。振動がほとんどクルマの動きによるものだけになることです。次に駆動力の途切れ目がなく、アクセルの踏みしろと加速・巡航感がおおむね一致することです。
当たり前ですがEV車ですのでエンジンという振動源がなく、加えてモーター制御は電力制御ですからギヤの概念がありません。よってシームレスで滑らかに駆けていくことができます。エンジン車に乗り慣れているとちょっとした「目からウロコ」でもあります。

都内20km走行時点でのメーター表示電費です。およそ9.9km/kWh、バッテリー残量は88%となりました。ざっくりの区間電費は9.0km/kWhとなり、メーターとの数値に乖離があります。ここで冒頭コンビニでの外観撮影を済ませ、都市高速に乗ってみます。

到着したのは大黒PAの充電スタンド、この時点でメーター表示電費は借り受け時点から通じて10.4km/kWh、バッテリー残量は53%となりました。88%→53%までの走行距離はトリップメーターの60.6km、ざっくり計算するとこの区間の電費は8.7km/kWhになります。
(ちなみに平均車速は72分で60.6kmですから、50.5km/hとなります。)

ここで急速充電30分を試してみます。

まだ充電中表示ですが、ほぼ終了時点でのバッテリー残量は90%まで回復しました。

充電スタンドの表示上は30分で6.9kWhの充電ですから、充電器はサクラに対してざっくり15kWhくらいの容量で充電したことになります。この充電器は90kWhまで対応するタイプのようですが、サクラは30kWhまでの対応にとどまります。
また、充電が満タン近くになれば電気容量が下がりますので、常時最大容量で充電され続けるわけではないことに注意が必要です。

ここから自宅近くのコインパーキングまで移動した時のメーター表示電費は借り受け時点から通じて10.1km/kWh、バッテリー残量は52%となりました。走行距離61.9kmで90%→52%ですので、ざっくり計算するとこの区間の電費は8.1km/kWhとなります。
平均車速は59分で61.9kmですので63.0km/hとなります。
高速道路区間を走ると、サクラの良さはもう少し引き立ってきます。
トラック等の追い越しでも、この手のハイト軽自動車特有のふらつきが少ないのです。
また、ランプ等でそこそこのスピードのままカーブを曲がっていっても、クルマがフラフラする印象が少ないです。
正確には、ステアリングを回していく間のふらつきはちょっと大きいですが、カーブの間で同じ角度を保っているときはピシッとクルマが安定します。
高速になるとぴょんぴょんする動きは抑えられていく感覚ですが、代わりに左右にユサユサと揺さぶられる感覚があります。そもそものサスペンション設定が硬い印象を受けます。
また、シートの造りも軽自動車相応…というよりも、座面のみの高さ調整タイプであるゆえに腰回りのサポートがほぼありません。よって長時間の運転では腰がつらくなります。

最後に、クルマを返すために翌朝、自宅からステーションまで走らせて返却しました。
借受トータルでの電費は10.2km/kWhで走行距離は155.8kmとなりました。
ちなみに街中走行での走行距離は11.7kmでバッテリー残量が52%→45%、ざっくり計算での区間電費は8.14km/kWhとなりました。
総トータルで計算すると、バッテリー残量100%→53%→90%→45%ですので、トータルでは92%の使用で使用電力は18.4kWh、距離で割ると8.5km/kWhとなりました。
ちなみに道中でヒーターはほぼ使わず、シートヒーターとステアリングヒーターのみで対応しました。
まとめます。サクラのいいところはモーターに尽きます。静かでシームレスな走行感覚は同クラスのエンジン車ではまず味わえません。
乗り味の落ち着きのなさは、そもそものサスペンションの設定が硬めであることに尽きると思いますが、おかげでカーブなどでは安定感のある走りになります。街乗りであれば、空気圧を少し調整すればもう少しは乗り心地が良くなると思います。
航続距離の面で言えば、今回の8.5km/kWhで計算をすればだいたい120kmくらいが実用的な走行距離になります。(バッテリー残量90%→20%くらいで使用すると仮定した場合です。)街乗りや「たまに高速で出掛ける」のであれば、そう不便ではない走行距離です。
ただし、カタログ価格308万円で1充電120kmの乗り物と考えると割高感は否めません。
さらには、自宅で充電環境があるかV2Hとして「動く非常用バッテリー」とできる環境でないと、理屈的な「買い得感」を出すことができない乗り物でもあります。
加えてバッテリー本体の劣化もあるため、今の時点では長期保有には向いていない、言い換えれば「ガジェット」として定期的に買い替えていく使い方が適していると思います。
よって、電気自動車の乗り味が気に入って、かつ5年程度で買い替え続ける(か、クルマの保有を止める)ならばサクラはいい選択肢の一つだと思います。