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Red13のブログ一覧

2017年04月29日 イイね!

4月の読書

4月の読書
4月はちょっと色々ありまして、
本読んでたのは月の前半だけだったような…

大作ブログを企画するとだいぶそっちに時間を費やしてるのもありますが、
…ちと諸用で箱根の麓まで2往復してたりしたもので。
さすがに400kmは遠い&疲れる。(; -´ω`-)ウムウム















 クリスチアナ・ブランド 『領主館の花嫁たち』 (1982)

原題『THE BRIDES OF ABERDAR』


400年の古い歴史を持つヒルボーン家、アバダール屋敷。
しかし、250年前からこの屋敷には呪いが掛けられたかのように、
一族の娘や、嫁いできた花嫁に次々と怪異が降りかかり、程なく命を落とすという悲劇が続いていた。


ヒルボーン家の幼い姉妹と、その家庭教師として屋敷にやってきたテティが、屋敷の呪いに翻弄されていく様を描く。

…去年の5月に読んだ『クリムゾンピーク』に似ているシナリオ。
ただ、あっちは "怪異" の原因は生身の人間でしたが、この物語では幽霊です。
あっちは結構現実的な作り込みの物語でしたが、こっちはやや耽美的なゴシックファンタジー。
本作の魅力は、19世紀イギリス貴族の生活様式を追体験できるところではなかろうか。
プラス、幼い姉妹が育っていく途中で抱く思春期特有の様々な葛藤をリアルに描いている。
“呪い” の狂気に蝕まれていくテティの変貌ぶりや、性格が正反対の姉妹の軋轢など、
「女の怖さ」「人の心の醜さ」等も描き出す作風は、ベテラン女性作家ならでは?

少しダークな雰囲気を纏いながらも、貴族のエレガントな生活様式を楽しめる作品。















 ディック・フランシス 『大穴』 (1965)

原題『ODDS AGAINST』


以前読んだ『興奮』でもそうだったし、今回の『大穴』でもそうなんですが、
もしかしてフランシスの作品は “本当はひとかどの人物である主人公が、敢えて惨めな無能を演じて敵を油断させて事を運ぶ” という展開が基本ルートなのだろうか?( ̄▽ ̄;)

「競馬シリーズ」と言いながら、どっぷり競馬の話では無いのがフランシスシリーズ。
『大穴』というタイトルから連想すると八百長の話なのかな?と思いますが、
競馬場の土地をめぐるマネーゲームという意外なテーマ。
まぁ、その中に競馬通がニヤリとする細かい小ネタが散りばめられているワケで、
本作でも、実際にあったレース妨害行為の描写が出てきます。
(フランシス作品で、シャーガー誘拐事件をモチーフにした作品は無いのかな?読んでみたい)

推理あり、アクションあり、最後は意外な金融ネタ。
ただの競馬ネタと思っての食わず嫌いでは損する、読み応えのある一冊。















 門田 隆将 『死の淵を見た男』 (2012)


さて。
ワタクシの読書感想文経歴の中で、明らかに毛色の違う一冊です。
小説でもなければ海外モノですらない。

空き時間にチョコチョコ読書しているワタクシを見て、会社のおっちゃんが「これ読むか?」と貸してくれたモノ。
ワタクシなりにこの読書感想文のラインナップには海外小説しか入れたくないという偏屈な拘りもあったんですが、日本人としてこの一冊は読んでおかにゃいかんのちゃうか?と思い、ここでも扱う事にしました。

福島第一原発。
ついこないだも某なんちゃら大臣が「復興はマラソンで言うと30km地点」とか言ってアレしたソレのヤツ。

あの時、現場で何が起こっていたのか。
テレビが報じるのは "外野" の喧騒だけ。
現場の "プロ" 達のプライド、覚悟を、淡々と語る証言集。
やはり、外野の証言と現場の証言はその温度差が激しく、
また、自身の意図しない形で非難を浴びた者もあり。

"有事" に、あたふた右往左往する責任者と、
為すべきことを成す為に、なりふり構わず全力を尽くす責任者。
そらぁ…ついていきたいのはどっちやねん、って。




Posted at 2017/04/29 13:13:06 | コメント(2) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2017年03月30日 イイね!

3月の読書

3月の読書
先月おサボリしたので2ヶ月振りの読書感想文。

…なのに2冊だけですよwww





と、その前に、
ワタクシが読むジャンルがなぜ『海外小説』なのか、とふと考えてみた。

基本、国内のモノにあまり興味が無いのは昔から(歴史の選択も世界史を選んだ)なんですが、
一言で言えば「視野を大きく持ちたい」というのはありますね。
小さな島国の中のコチョコチョした話より、もっとスケールの広い世界にいたいというか。
それに、簡単に情景がイメージできる(…というか最近だと画像検索すれば一発で出てきてしまいますが)日本国内の風景より、
全然違う世界が舞台の方が想像力が刺激されて楽しいというのもあります。
トラベル気分を味わう…とまではいきませんが、その地域の事を少し知ろうとするキッカケになったりもする。
それに、作品によっては「海外から見た日本」というのもわかるし、日本人には無い視点で語られたりしていて面白いのもあります。

そして、ワタクシ、なんでかノンフィクションにはあまり惹かれない。
でも、フィクション(特に小説)って、実は意外と
ノンフィクションの自叙伝とか以上に「著者のパーソナル」が現れていたりするんですよね。
よりデフォルメされているとも言える。
著者自身の経験というのがあって、それをベースに色々と肉付けして話を膨らませたものが小説だと思っています。
そんな所なんでしょうかね。




















 ロバート・A・ハインライン 『宇宙の戦士』 (1959)


"巨匠" の代表作。
宇宙時代の一軍人の成長を描いたSF。
「パワードスーツを着た歩兵が、惑星へカプセル降下突入して地上戦を行い、回収艇で母艦へ戻る」
という世界観が、後の "ガンダム" のルーツになったと言われる作品です。
が、宇宙モノにありがちな「それ大してSF要素無くね?( ̄▽ ̄;)」とも感じる作品(笑)。
(同じハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』もそんなんでしたね)

物語の前半部は、新兵である主人公の地球での基礎訓練時代の話。
後半部では異種生命体との戦闘の描写もありますが、
正直「SF軍隊モノ」というより「一人の軍人の成長物語」であり、ぶっちゃけSF要素抜きでも成り立つお話。
作中で "機動歩兵の不文律" として出てくる信条も、それアメリカ海兵隊やん、と思ったけど。
……まぁ、そんな事を言ってしまうと、世の中の「SF作品」の殆どにダメ出しする事になってしまいますがww

とはいえ。
じゃあ話がつまらないのか? というと、否。
「若者の成長を描く」という安定の内容に、"非日常要素" として軍隊エッセンスが入り、
確かに、オトコノコにはワクワクの内容ですね。
女性ウケはしない話かもw















 ジャック・コグリン & ドナルド・デイヴィス 『運命の強敵』 (2009)

原題『DEAD SHOT』


1月に読んだ『不屈の弾道』の続編。
正直、初作よりワクワク感は落ちる。
主人公 カイル・スワンソンの "立場" が特殊になり、変に特別感を持たせた事で逆に一種のダルさが出ているような。
"超法規的スペシャルチーム" という設定は、最初こそ胸躍るモノだが、長い目で見ると確実に物語から緊張感を奪う。
その点、毎回ハラハラヒヤヒヤさせられるグレイマンの方がキャラは立っている(キャラが物語の中でイキイキと立ち回っている)ように思う。

シナリオもどうにも、人によっては嫌悪感を覚えるかもしれない描写が所々あり。
クライマックスシーンも、やや「え?それで終わり?」感があった。
ドラマ的な盛り上げが物足りないのは否めない。
この辺り、元職業軍人が描く "リアルさ" の良し悪しでしょうか。

でも別につまらないワケではないですし(笑)、
3作目も既にまとめ買いしてるので次も読みます。









Posted at 2017/03/30 22:11:32 | コメント(1) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2017年01月31日 イイね!

1月の読書

1月の読書
1月。
走行会の準備であーだこーだ忙しくしておりますが、
意外と本は読めてたらしい(笑)。

基本、仕事中の空き時間に読んでますからねぇ。( ̄▽ ̄;)
面白い本はすぐ読んじゃうし。
んま、ソンナコンナデ。















 S・M・ハルス 『ブラック・リバー』 (2015)


「わたしのためにフィドルを弾いて」
病で最期が迫った妻からの願いを、60歳の元刑務官ウェズは叶えられなかった。刑務所の暴動で負った凄惨な傷のせいで。
ウェズは妻の遺灰を携えて、かつて住んでいた刑務所の町 ブラックリバー を訪れる。
そこでは妻の連れ子との18年振りの再会と、暴動の首謀者の仮釈放を決める公聴会での証言がウェズを待つ。




「黒い河」というタイトルと、こんなイントロからは、なんかもうサスペンスしか想像できないんですが…実は違います(笑)。
淡々とした語り口で壮年男性の心理描写を丁寧に描く著者は、執筆当時まだ20代だったという。

模範的刑務官であり、かつて町一番の名フィドル(バイオリン)奏者だったウェズ。
その彼の手の指9本を砕いた、暴動の首謀者ウィリアムズ。
とある事件により、喧嘩別れと言うにはあまりに深い溝を持ったまま18年を過ごした義理の父子。
二人を繋ぐ細い糸だった、妻であり母であるクレアが亡くなった今、父子はお互いの距離をどう測るのか。


日常の風景の中で各登場人物の心理描写を淡々と描くという作風で、
正直、普段ワタクシが読み慣れている冒険アクション系から比べると、退屈です。(;´∀`)
が、"過去" の謎解きがあるので先は結構気になります。
派手さは無いけど、丁寧な文体もあって、読んだ後にしんみりと「うん、良い話だったね」という印象。
…別に心に残る傑作ってわけでも無いけどね(笑)。
芸術的要素の描写も物語上で鍵になると共に、ワタクシ自身、昔少し齧っていた世界でもあるので
読んでてちょっとウズウズしました。また楽器やりたくなった。















 ジャック・コグリン & ドナルド・デイヴィス 『不屈の弾道』 (2007)

原題『KILL ZONE』


グレイマンシリーズが一段落したので、似たようなシリーズを開拓しようと手を出したモノ。
著者は元海兵隊スナイパー。主人公カイル・スワンソンは正に著者自身の分身なのだろう。

同時期・同ジャンルのシリーズ物として、どうしてもグレイマンシリーズと比較してしまうのは仕方ないことかと思うが、
こちらの方がより "軍隊的" で "現場的" な空気。
今思えば、グレイマンはムービーヒーローのような面があり、やや突拍子も無い場面演出や良くも悪くも王道的なシナリオで、なんだかんだ言ってご都合主義な展開も目立つが、
こちらは本職の経験談が多く含まれているので、より泥臭い。
グレイマンに比べて、描写もより直接的な(要は、少しグロい)ものもあったりして、そこに好みは分かれるかもしれない。
が、「スタンドアローンの超兵士によるワンマンアーミー大活躍」という所は全く同じで、ハラハラワクワクの醍醐味も安定品質。

ただ、グレイマンシリーズと大きく違う点が一つあり、本作では架空の武器 が登場します。
照準・測距・風の影響の弾道補正まで、本来スナイパー自身が頭で考えて計算してやる作業を全て自動で行う試作スナイパーライフル 『エクスカリバー』。その実戦テストを行う主人公カイル。
元本職ならではの「こんなんあったら良いのにな」を詰め込んだのでしょう。

コート・ジェントリーとはまた違った魅力の愛すべき男 カイル・スワンソン。
続編も買いました。















 ルシアン・ネイハム 『シャドー81』 (1975)


ハワイに向かう747旅客機 PGA81便がロサンゼルスを離陸した直後、ハイジャック通告を受けた。
最新鋭戦闘機が、いつでもジャンボ機を撃ち落とせる態勢で81便の真後ろに尾けたのだ。
犯人は約200名の人命と引き換えに、アメリカ政府に対して2000万ドル分の金塊を要求した。



もう、この説明文だけで超絶面白そうじゃないっすか。
ただのハイジャックものではなく、犯人は機内に居ないというのがポイント。
犯行に使用する戦闘機の調達手段も、これまた緻密に練られた途方も無いワクワクする計画。
そして、本作最大の美学とも思える点が、誰も死なない。旅客機に傷がつく事も無い。
ハイジャックものというと、≒パニックものなイメージですが、
本作は全編通して次から次へとスリリングな緊張感が続くものの、クールであり、ワクワクもする。
ハイジャック犯と旅客機機長と主任管制官の3人が状況の中心になっていくわけですが、その3人共が頭の切れるプロフェッショナルとして冷静に対応していく様はどこか美しさすら感じる。
一方、出しゃばってくるおバカなキャラもしっかりと登場し、ソイツはしっかりとしっぺ返しを喰らうという気持ちよさ。
終わってみれば、実は登場人物の誰も損はしていないのでは?と思ってしまうような、爽やかな読後感。

ひっっじょーにエンタテインメント性の高い、娯楽作品と言える一冊、傑作です。

Posted at 2017/01/31 21:12:03 | コメント(3) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2016年12月27日 イイね!

12月の読書

12月の読書今年一年、
この「◯月の読書」で取り上げた本は33作品 39冊となりました。

年間読書冊数としては、少なくもないけど多くもない…?
どうせならキリ良く40にしたかったけど、今読んでるのがちょっと間に合わなさそうなので…
まぁ、ゆーてもほぼ仕事の合間に読んでるだけですからコンナモンでしょ。(ーωー)

しかし、
本格的に読書趣味をやりだして(というのか再開してというのか…)から1年半ほどですが、
なんだかんだ、結構肥やしになっているような気がする。
「あ、コレの元ネタってアレやん(°∀°)」とかいうのがちょくちょく分かるようになってきたし。
そういうのがわかってニヤニヤできるようになると、また楽しいワケです。

「やっぱりジウジアーロのこの線の引き方が…」とか言ってるのと似たようなもんw

そろそろ胸張って「趣味:読書」と言えるくらいになってきたカシラ。































 カレス・L・パウエル 『ガンメタル・ゴースト』 (2013)

原題『ACK-ACK MACAQUE』



1959年、イギリスとフランスが政治経済に於いて統一され、フランスはエリザベス二世統治下のフランス州となった。

…という歴史改変を土台に敷き、その100年後の2058年から始まる物語。
主人公格の人物が3人おり、序盤はそれぞれの視点で交互に展開し、徐々にその3つが集束して1つの流れになる安定の展開。
メインテーマは「人格をデータ化してコピーし、元の肉体からサイボーグに人格を移し、半永久的な命を得る」というよくあるアレ。
…なんですが、ここにもう一つ現代的な要素が加わります。
「オンラインゲームのNPCが、実は有機コンピューター化された生身の存在だったら」
 ※NPC:Non Player Character ゲームシステム側が操作するキャラクター


ゲームの中という仮想現実世界に囚われた人格。
そこから自分で出る方法は無く、重要NPCなのでパラメータはほぼ不死身=自殺もできない。
本人にはそこがバーチャル空間であるという認識は無く、しかし何とも言えない違和感を感じている。


そのゲームキャラクターが、原題にもなっている「アクアク・マカーク」
マカークの本来の肉体は脳にケーブルを繋がれて眠り続けている。

そのマカークを救出する運動に巻き込まれた、英仏連合王国の(反抗期の)皇太子。
だが彼の方が、この人格コピー計画の核心に近い所に居た。本人は知らぬまま。


物語の展開としては、共通の敵(人格コピーの研究会社)をそれぞれ違う経緯から追う3人が、団結して壊滅させるというわかりやすい安心の内容。
3部作の1作目らしいので、とりあえず最初は単純明快にスカッと終わらせるという感じ?(笑)
が、"英仏連合王国" という設定をいまいち活用し切れていない印象もあり。


自分が誰かの器として造られたとわかった時、それに憤るアイデンティティは "自分" と言えるのか。
「死なない」のは幸せなのか、「死ねない」のは不幸なのか。
肉体を捨てて意識だけで生きることが果たして幸せなのか。
そんなテーマも含んでいますね。


イマドキな切り口でサクッと読める冒険小説です。
内容や表紙絵から見ると、国内だと "ラノベ" にカテゴライズされそうな気もする。




















 ディック・フランシス 『興奮』 (1965)

原題『For Kicks』



今月初めの乗馬ネタがココへ繋がる布石だったとか言いました(笑)。

えー、これに関しては作品の話に入る前にまず色々と語っちゃえますがw
著者ディック・フランシスは、元ジョッキー、イギリスの障害騎手です。
日本では障害競馬の認知度は低いですが、競馬には平地競走と障害競走(最近ではジャンプレースという言い方もする)があり、ディック・フランシスは障害競走専門の騎手でした。
リーディングジョッキー(最多勝)を取ったこともある人気騎手で、
障害競馬の世界最高峰と言われる "Grand National" にも8回出走(優勝経験は無く2着が最高)。

(ちなみに。
Grand National は、距離約7200m、障害数30というコースを最大40頭が出走して争うが、完走率は非常に低く事故も多い為、「世界一過酷なレース」と呼ばれる。
日本の平地競走の最長距離は3600m、障害競走でも4200mなので、その規模の違いがお分かり頂けるかと思う)



俗に「デヴォンロック事件」と呼ばれる1956年のGrand Nationalでの、不可解な現象の当事者となったことが、その後の小説家としての競馬スリラーシリーズに繋がったのではないかとワタクシ個人的には思う。
さぁ、「グランドナショナル デヴォンロック」でググりたまえ!(°∀°)


フランシス作品の内容を全て知っているワケではないですが、彼の競馬スリラーシリーズで扱う事件や謎は、全て実際にあった事件(のハズ)です。
よく管理された日本のJRAを見慣れている我々日本人にはあまりピンと来ませんが、本場欧州の競馬は常に様々な事件の舞台になってきています。
替え馬事件や、身代金目的の馬の誘拐、政治デモの一手段としてレースが妨害されたり、レース後に騎手が拳銃自殺したとか、はたまたオカルト的なミステリー話まで…
小説の題材には事欠かない…という言い方は不適切かもしれませんが。なんしそういう世界でもあるわけです。



この『興奮』で扱われるテーマも実際にあった事件をモチーフにしています。

障害レースで、番狂わせの大穴が続いていた。
その時の状況から推して、勝った馬には明らかに興奮剤が投与されていると思われる。
しかしいくら検査しても興奮剤の反応は出ず、馬体にも注射痕などは見つからない。
いったいどんな手口で不正が行われているのか…?


…まぁ、ワタクシは "元ネタ" を知っているのでトリックの仕組みは読む前から分かっていたんですが、
それを差し引いても推理小説として非常にハイレベルな傑作です。
潜入捜査のドキドキ感が終始貫かれ、味方からも嫌疑をかけられながらも謎を1ピースずつ解明していく気持ちよさ。
元専門家が書く物語なのに、いや、逆に元専門家が書くからこそか、
競馬そのものを知らなくても問題無く楽しく読むことができると思います。
フランシスの競馬シリーズは全てそういう感じらしく、
"競馬シリーズ" と言っていますが競馬がメインでは無く、あくまで舞台背景が共通しているというだけで
競馬に興味の無い人が読んでも充分以上に読み応えのある良質な推理小説のようです。




















 ピーター・トライアス 『UNITED STATES OF JAPAN』 (2016)



第二次大戦で日独が勝利した世界。日本統治下のアメリカ。

これだけで、脳裏によぎるのはディックの『高い城の男』
実際、この著者自身、ディックの『高い城の男』に影響を受けたと明言しているばかりか、本作を ”精神的な続編” と語っている。


ビミョーに有り得ない日本人名だらけなのはさておきw
まずは著者の日本文化への深い知識に素直に拍手。
現代日本人よりもよほど日本文化に詳しい。

さらに、其れを空想世界の中でリアルに描いている。
現代のスマホに相当するモノも、名称が "電卓" に変わり、機能も日本の技術でより高度に進化していたり、
ファーストフードの代名詞であるハンバーガーの代わりに、天ぷらバーガーなる物が出てきたり、
日独の勝利≒ファシズムの勝利であり、憲兵や秘密警察が闊歩していて天皇批判は即処刑だとか、
お約束の人型巨大兵器もしっかり登場します。


そして、『高い城の男』で体制批判のアイテムとして登場した ”アメリカが勝利した世界を描く小説” にあたる物が、
本作では "オンラインFPSゲーム" として登場します。
 ※FPS:First Person Shooter 本人視点でのシューティングアクションゲーム 早い話が戦争ゲーム

そのゲーム「USA」の開発者と言われる退役軍人と、それを匿っている反体制組織を追って、帝国陸軍検閲局の主人公と秘密警察の女が奔走する、という話ですが、
各場面場面での背景描写や世界感の構築が非常に緻密で良くできている。
主人公の謎めいた過去が、物語の進行に連れて徐々に明らかになっていく様や、
一見、任務に忠実な冷酷な秘密警察員かと思える女も、疑いを知らぬ馬鹿正直故に実は無能であるという構図は、
キリスト教信仰を天皇崇拝に置き換えた、アメリカ社会への当てこすりであるのかもしれない。
中盤では、かつての或るゲーム「クーロンズゲート」のようなオリエンタルな怪しい異世界的な場所も出てきたり(ややグロ表現有り)、
後半の人型巨大兵器での戦闘は完全にガンダム系のソレ(ただしガンダムよりももっと "戦車" 的)であるし、
日本の伝統的側面のみならず、所謂 "Cool Japan" なサブカル関係にも多いにインスパイアされているのが見て取れる。


それら多岐に渡る "日本的要素" を、それぞれ非常に深い所まで理解し描いた上で、全体をバランス良く纏めている、正に傑作。
正直、『高い城の男』より面白い。
また、読後に強いメランコリーが残響する結末も、本作のメッセージ性を強調する重要な部分。
ハッピーエンドでは成立しない物語でもある。

とてもキャッチーでサクサク読める(というのも、一つの ”腕” だと思う)ので、是非どうぞ。
帯に書かれた文句は決して大げさではないです。(・∀・)

しかし、作中で「USJ」「USJ」と出てくる度に脳内で某テーマパークに変換されて大変だった件www


Posted at 2016/12/28 22:00:10 | コメント(1) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2016年11月29日 イイね!

11月の読書

11月の読書
1ヶ月以上、鼻炎でグダグダしていたので
殆ど読めてません。(;´д`)
辛うじて1作2冊。










 レイモンド・クーリー 『テンプル騎士団の聖戦』 (2010)

原題『The Templar Salvation』



8月に読んだ『テンプル騎士団の古文書』の続編。

なんだかなぁ…
小説と言うより、アクション映画のノベライズという色が濃い。
前作もそうだけど、映像化を前提としているのでしょう。

そのせいで、アクションシーンの派手さはあるものの
あざとい演出多数で苦笑するし、シナリオ全体もやや雑な印象。
展開が完全にご都合主義でツッコまずにいられないし、
敵方の背景の描写が乏しく、それなりにドラマ性のありそうな設定をチラ見せしているのに殆ど掘り下げず、ただのアブナイ男になっていて深みが無い。
「一方その頃」的な場面の同時並行が無く、同じ視点でだらだら続いていく流れで、"読み解く面白さ" に欠ける。
表面的な流れだけで、正に映像的な作風。
現代と中世が交互に展開して同じ場所に収束していくという手法ではあるけども、これもイマイチ躍動感に欠ける。

著者はあくまで脚本家であって小説家ではないと思う。
でも大多数にはこういうのがウケるんだろうとも思う。



超辛口バッサリwww


Posted at 2016/11/29 22:30:18 | コメント(1) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記

プロフィール

「@あすきー 別に昨今のインバウンドに始まった話ではなく、私がチビッコの頃でも珍しく光景ではなかったです。伊丹空港&新大阪が近い土地柄もあったかもですけど?」
何シテル?   09/25 19:16
派手な赤い車なんで、どこ行ってもすぐバレますw 死ぬまでMT宣言。 _/_/自分で運転した事あるクルマ_/_/ スバル インプレッサ...

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