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Red13のブログ一覧

2020年06月29日 イイね!

6月の読書

6月の読書赤ターボが異音モール状態でなかなかアレです。
シャラシャラチャラチャラ似たような音が複数箇所から出てるしw
1ヶ所クラッチは確定。あとはタービンなのか駆動系なのかよーわからん。
ペラシャもなんか怪しいような…(¬_¬)


過走行の宿命とはいえ、あっち直してもまたこっち。
こっち直したらまたそっち。
モグラ叩きかワニワニパニックかw
いつになったらサーキット全開できるのか。


もーさ、一晩寝たら新車になってねぇかな…←










 ルシアン・ネイハム 『シャドー81』 (1975)


先月の最後に読んだ “完璧な強盗小説” というキャッチコピーでコレを思い出したので、引っ張り出してきて再読。
誰も死なない、誰も傷付かない痛快ハイジャック。
ベトナム戦争をパロディ的に扱う所、戦争の道具(戦闘機)を使いながら誰も傷付けない、という諷刺作品でもある。

しかしもう50年近く前の作品なのに、今読んでも全然古さが無い。
世界的に見れば747もまだ現役で飛んでるし、戦闘機の世界もこの頃からそんなに進んでないし。

作中で鍵になる戦闘機は架空機ですが、
現代に生きる我々としてはF35がまんまイメージに合う。
むしろ、著者はF35を知っていたんじゃないのか!?と思えるくらい。
でもま、「燃料に1/3まで軽油を混ぜても飛べる」とかいう設定は「んなワケあるかいww」とツッコんでしまうがw
いや、実際ジェット燃料ってどうなってるのか知らないですけど…

初見の時には流していた部分で、軍内部の人物像や権限・管轄の話なんかが、結構細かく描かれている事に気付く。
“政治ゲームとしてのベトナム戦争” をより浮き彫りにする為の要素なのか、単に好きだから書いたのか?(笑)















 マーク・サリヴァン 『緋い空の下で』 (2017)

原題『Beneath A Scarlet Sky』


これは全力で太鼓判!
何がなんでも必読図書!



1943年6月、イタリア・ミラノ。
イタリアがWW2に参戦してから3年、戦況は枢軸国側にとって芳しくなく、ムッソリーニ政権への批判が高まる中、
街は次第に同盟国である筈のナチスドイツによる支配色が強くなっていく。
17歳の少年、ピノ・レッラはそんな戦時下でも気ままに女の子を追いかけて日々を過ごしていたが、連合軍の空爆が始まった事で生活が一変する。
スイス国境近くの教会へ疎開したピノは、神父から毎日山登りをして体を鍛えるように指示される。
連日、明かりの無い夜明け前に出発し、幾多の難所を越えて戻ってくる。
それは、ナチスから逃げてきたユダヤ人をスイスに逃れさせるガイドのトレーニングだった。

半年余りで何十人ものユダヤ人を越境させたピノは、18歳の誕生日の2週間前、突如父親からミラノに呼び戻される。
18歳になるとドイツ軍に徴兵され、ほぼ確実にロシア戦線送りになるという。
それを防ぐ為に、叔父のコネを使って “志願入隊” し、戦場に出ない部隊に入るよう説得される。
パルチザン活動を続けたいピノは反発したが、葛藤の末ナチスの軍服に袖を通した。
疎開していた時に、レーサー志望の青年から運転を教えて貰っていたピノは、ひょんな偶然からナチス将校の運転手に取り立てられる。
ハンス・ライヤース少将。イタリアに於けるナチスのNo.2だった。
ピノはその立場を利用して貴重な情報を探るスパイになった。



ジュゼッペ・“ピノ”・レッラは実在の人物で、本作は “限りなく事実に忠実な小説” だという。
完全なる伝記・自叙伝では無く、多少の膨らましはあるとの事だが、それは戦後50年以上、70代後半になって初めて自身の戦争体験を語ったピノの年齢的な問題もあるのかもしれない。

戦禍によりミラノが荒廃していく様。
パルチザンとして戦う弟や親友からナチスに入った裏切り者と叫ばれ、憎きナチス将校に付き従いながらもその特権を享受するambivalence。
ドイツ軍の軍事施設を作る為に不眠不休で強制労働させられる連合軍やパルチザンの捕虜。
“ポーランドのアウなんとかという所の労働キャンプ” に送られる、貨車に押し込まれた人々。
それらに何かをしてやりたくても何もできない自分。
知人も次々と命を落としていくのを目の当たりにし、痛みと悲しみと虚しさに苛まれながらも、運命の恋に心救われ拠り所として生きていく姿。
“幸せ” とは、遠い未来ではなく、その時その瞬間にあるのだと思わせる。

しかし、最も苛烈な現実は、終戦目前の「ナチ狩り」とも言える “反動” である。
パルチザンや市民によるナチス&ファシスト(ムッソリーニの黒シャツ部隊)への報復行為は、捕食者の立場が逆転しただけで、残虐で醜く歯止めが効かない。
心はイタリアの為にスパイ活動をしているパルチザンでありながら、第三者から見れば「ナチスの軍服を着たイタリア人」であるピノにもそれは重くのし掛かる。


「目には目を」も一つの正義ではあるだろうし、「同じことをされてもいい覚悟があるならやればいい」とはワタクシ自身のポリシーでもありますが、
「やられたからやり返す」では相手と同じレベルになるよ、というのもワタクシ自身の思っている事。

「破壊と略奪」という戦争のリアルな側面を抉り出しながら、英雄譚冒険小説としてのクオリティも半端無く高く、美しい恋愛にも触れられ、男達の成長物語でもあり、
しかもそれが作り話ではないという所。これがとにかく凄い。



あと、みんカラ的ピックアップポイントとして…
ピノが最初に運転した少将のクルマが6輪のゲレバであるw
そのゲレバは英軍機の機銃掃射を受けて廃棄され、次のクルマはただ「フィアット」とだけ表現されているが、何だったのか気になる気になるw

また、ピノに運転を教えた “レーサー志望の青年” は、アルベルト・アスカリという。
本作の物語には掛からない部分であるが、ピノは戦後フェラーリのセールスマンをしていた時期があり、その後自身もフェラーリを所有しサーキット遊びを嗜んでいたとか。アスカリ繋がりでF1関係者とも親交が多かったという。















 アーサー・C・クラーク 『都市と星』 (1956)

原題『The City And The Stars』


ふと久しぶりにSF、というか
アーサー・クラークを読んでみたくなり、
未読だった作品が新訳で出たところだったのでチョイス。

SFというと一般的にはスターウォーズとかアルマゲドンとかそういう系をイメージする方が多いかもしれませんが、
個人的にはSFというと、哲学・宗教・科学の思考実験のようなイメージ。
クラークの作品群や、レムの『ソラリス』、イーガンなんかも正にソレ。
クラーク作品は特に「宇宙に於ける人類の立ち位置」「人類の往く末」を、科学の土台の上で哲学的に真摯に夢想する。

一見ユートピアに見える完成された世界は、その実ディストピアである、というのはSFでよくある題材だが、
クラークの場合、そこで悲劇的な展開にも破壊的な展開にもならず、融和の末に昇華する方向に行く。

クラークの多くの著作で共通するのが、人類を「揺り篭から出ていく子供」として描いていること。
『2001年』シリーズのボーマン船長、『幼年期の終り』のジャンやジェフ、そしてこの『都市と星』のアルヴィンは、
いずれも(それぞれの作品内に於いて)人類の変革の最初の1人となるが、彼らには全て “導く親” のような存在が居る。
その “導く親” の庇護の下を離れて1人で歩き始める人類。
その過程、その変革。
その結果、良いことも悪いことも起こるとしても、より高次元の存在に進んでいこうという向上心と好奇心。
それがクラークの変わらぬ柱であると思う。

またクラーク作品の特徴として、「(基本的に) “敵対的な地球外知性体” が出てこない」というのがある。
『幼年期』のカレルレン、本作の “使徒” やヴァナモンド等、実際に “存在する” 者は友好的・共存的であるし、『2001年』のように間接的にその存在を示すオブジェクトだけが出てきたりと、
ハリウッド映画に多く見られる「問答無用で地球侵攻」や 「異星人のオールスターバーゲンセール」的ノリがどうも白けるワタクシのような人間には、クラークのこのスタンスが心地いい。

「成熟した知性を持つ存在が排他的行動をとるだろうか?」 と本作の登場人物も喋っていて、
読み方によってはこれは人類そのものへの皮肉とも取れるが、クラークの場合は純粋に理想を語っていると感じる。

久しぶりにアーサー・クラークを読んで、
60年以上前の作品でこの科学的根拠の盤石さ、神憑り的な先見性、壮大な想像力、(逆に言えば、科学の世界はその頃で既にほぼ行き着く所まで行ってしまっていたとも言えるか)
やはり彼がSF作家の頂点だと思うし、今後も超える人物は出てこないと思う。
だし、結局、人類の究極の進化≒理想の生命体は精神体のみの存在になる、というニュータイプ理論を、半世紀以上前から一貫して論じているクラークにジークジオンww















 アーサー・C・クラーク 『幼年期の終り』 (1953)

原題『Childhood's End』


はい、勢いに乗って続けてクラーク。
これはワタクシが中学生の時に読んでドハマりした1冊。
もうボロボロですわ。この後、改装版が1回と新訳が1回出てますが、新訳は重要な登場人物の名前が変わってるので何か嫌w


人類が宇宙への競争に明け暮れ、いよいよその最初の打ち上げが目前となった時、人類はその競争に遅れを取ったことを知る。
しかもその遅れが、数週間数ヶ月のものではなく、幾千年もの遅れであったことを。

突如現れ、全世界の大都市上空に静止した宇宙船。
その異星人は一切姿を見せることなく地球を管理し、すべての争い・病気・貧困は一掃された。
異星人 “オーバーロード” の登場で地球は一つになり平和になった。
しかし、オーバーロードの真の目的は謎のまま。
そしてオーバーロード来訪から50年が過ぎた時、
遂にオーバーロードが地上に降りてその “姿” を明らかにする。



…という第一部のインパクトが強すぎて、
何度も読んでいるのに後半があまり頭に入っていないので改めて読んでみた。

上↑の『都市と星』の項でだいたい言いたいこと言ってしまっているのでアレなんですが、
本作の最大のメッセージは「宇宙は人類の物ではない」「人類には、自分達が思っている程の価値は無い」というところ。
そして、これもクラークの他の多くの作品と重なる要素ですが、
いわゆる “ニュータイプ論” に通ずる内容がより具体的に描写されている作品。
それは “変容 <メタモルフォーゼ>” とも言える、人類の高次元への進化の過渡期。
オーバーロードはその “変容” を促し、待ち、観察し、見届ける為に派遣された中間管理職。
そこにも皮肉というかアイロニーというかセンチメンタリズムがある。
クラークの特徴はこれなんだと思う。
圧倒的な科学根拠でリアルに物質宇宙を描くと同時に、非常に詩的でエモーショナルな切り口で心に訴えかける。
ロマンチックであり、科学的。

人類の存在価値を問う哲学的思索SFの大家。


Red13指定 必読図書










Posted at 2020/06/29 13:00:14 | コメント(0) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2020年05月31日 イイね!

5月の読書

5月の読書コロナ的なアレのソレで皆様いかがお過ごしでしたでしょうか。
一応、行動制限解除な事になってますが、どうなることやら…

ワタクシは全く変化無くふつーにいつも通り仕事してましたし、
なんやかんや主に夜中にあっちゃこっちゃ隠密行動しておりましたが、
やっぱそれでも日常生活にも遊びにも色々影響が出て難儀しました。

ゆーて、これで終わりだとは思ってないし思ってはいけない。
いきなり即全開では事故りますやん。
ジワーっとパーシャルで様子見ていかないとねぇ。















 ハーラン・コーベン 『偽りの銃弾』 (2016)

原題『FOOL ME ONCE』


元特殊部隊ヘリパイロットでイラク派遣経験有りのマヤ
その時のある作戦で民間人を殺してしまい、現在もPTSDに悩まされている。
その作戦行動の映像が内部告発サイトで暴露され、マヤは一時非難を浴びて “時の人” になった。

そんな時に、目の前で夫ジョーを射殺される。
そして4ヶ月前のイラク派兵中にマヤの姉、クレアも殺されていた。

夫の葬儀後、幼い娘の監視用に設置した隠しカメラに、死んだハズの夫が映っていた。
夫と姉を殺した銃が同一と判明。
夫の死亡証明書の手配が遅れているとの理由で、遺言書の開封が延期される。
夫ジョーは本当は生きているのでは?という疑念が生じる。夫の実家もなにやら胡散臭くて怪しい。
マヤは自分を尾行しているクルマがいることに気付く。
姉クレアは殺される前の数ヶ月間、ストリップクラブに頻繁に電話していた事がわかる。



とまぁ…よくぞこんなに大量のギミックを詰め込んだものだと思うが、まだこれでも話の半分くらい。
多層構成というか、剥いても剥いてもまだ謎が出てくる。
それを550頁程で纏めてくる手腕は確かに巧い。
敵だと思っていた者が味方になり、身内が信用できなくなり、読み手すら騙してくる。
ハイテンポでジェットコースター的に目まぐるしく話が動くのに、ちゃんと纏まって締まるのは凄い。
が、なんとなくやっぱりどこか映画的というか、外連味というか、「凄いの書いたったで」的な著者のドヤ感がチラ見えするw

ウィキリークスのような内部告発サイトが物語の重要な小道具になっている辺り、時世に乗っているが、
…2歳児がそんなに喋ったり動いたりするか…?というツッコミ心が終始消えなかった。










 マリー・ルー 『レジェンド 伝説の闘士ジューン&デイ (2011)

原題『LEGEND』


古本屋でなんとなく手にとってジャケ買いした一冊。
久しぶりにファンタジー系読みたかったし。
(と言っても、別に魔法も竜も出て来ませんがw)


異常気象による洪水で地形が大きく変わった近未来のアメリカ。
カリフォルニアを中心とする共和国<リパブリック>は、エレクターと呼ばれる独裁指導者が軍政を敷き、東の<コロニー>と敵対する。
政府や軍関係者は裕福な暮らしを送る一方、スラムでは疫病が蔓延し、軍による住民の隔離も日常的な光景。

全ての国民は10歳になると “審査” と呼ばれるテストを受け、そのスコアによってその後の人生がほぼ決定する。
その審査で1500点満点を取り、軍のエリートとして歩み始めた天才少女ジューンと、
1000点以下の落第で強制労働所送りになり、そこから脱走してきてコソドロとして生きる少年デイ
追うもの追われるものとして出会った2人は、次第にお互いの中の “自分には無いもの” に惹かれていくが…



ディストピア世界を舞台にしたティーンズのピュアな恋愛ラノベ、とでも言うか。
あまり難しい事は気にせず気楽にサクッと読めるやつ。
逆に細かいツッコミを入れだすと楽しめなくなるやつ←


(著者も認めているが)影響を受けているというのか、敢えてのオマージュなのか、モロにジョージ・オーウェルの『1984』を彷彿とさせるし、
著者自身が幼少期に天安門事件をその目で見た事(マリー・ルーというのはペンネームなのかアメリカ国籍での名なのか、コピーライトにはXiwei Luとある)も本作の世界観の土台になっているのだろう。
前半はそれほどでもないが、後半、物語の核心に迫ってくるとなかなかのディストピアっぷりである。

そういう意味では、只の “ティーンズ向けラノベ” という枠に収めて捉えるのは勿体ない作品。
それでいて、2人の無垢な恋模様は実に清々しく、
爽やかな恋愛をメインに据える事で、センシティブなテーマで作品全体が重くなりすぎないように上手くバランスを取った巧みさとも取れる。

物語としてはまだ序章が終わった程度で、続刊があるそうなので探してみようと思う。









 ジャン=クリストフ・グランジェ 『クリムゾン・リバー』 (1998)

原題『Les Rivières pourpres』


2000年に映画化されたのでご記憶の方もおられるかもしれませんが、
基本、映画見ない&血が出るのは尚更w なワタクシはそんなことはツユ知らず。
「フランスミステリ史に輝く金字塔」という大袈裟な謳い文句に眉唾感はありつつ、確かに文学作品って意外とお国柄・特色があるので、たまにはちょっと毛色の違う “おフランス” もいってみようかと。

んが、読んでみて素直にこれは確かに素晴らしい作品だし、確かにフランス的だと思う。


かつてパリの花形刑事だったピエール・ニエマンス警視正。輝かしい功績も多い一方、激昂すると見境を無くし暴力に走ってしまう性格ゆえ、今は殺人捜査の一線からは外されていた。
ふいに上司から呼び出されたニエマンスは、奇妙な単独任務へ向かうことに。
ゲルノンという小さな大学町で若い男性の死体が発見された。
全裸で胎児の格好をして岩壁に押し込まれており、身体中に拷問の痕があり、両目をえぐられていた。

一方、ゲルノンから300kmほど離れたサルザックでは、小学校への泥棒と地下納骨堂への墓荒らしが同じ晩に起こった。
捜査にあたったのは、孤児院あがりの元不良少年、ドレッドヘアのアラブ2世でおよそ警官に見えないカリム・アブドゥフ警部
かつては自動車盗で生計を立てていたが、大学、兵役を経て、優秀な成績で警察学校を卒業。将来有望視されていたが、上司に逆らった為に地方へ飛ばされた。



この一癖ある警官2人を主人公として、彼らの視点で交互に事件が追われる。
初っ端からなかなかインパクトのある猟奇的な死体が出てくるのだが、それでいてどこか耽美的。死体の置かれ方(発見される “見え方” )も象徴的で芸術的。
作品全体に退廃的な空気も漂いつつ(これらを一言で表すのが文学用語で言うところの “ノワール” か)、背景にはアカデミックな知識も多分に散りばめられている。

謎が多く、しかもそれらが幾重にも折り重なって編み込まれた緻密なプロット。
かといって、わざと読者の裏をかこうと奇を衒うような事も無く(今月の1冊目ではそれが感じられた)。
ぶっちゃけ、半分ほど読んだ辺りで犯人の予想はついてしまうのだが、動機や背景の謎は依然残るのでグイグイ読み進めてしまう。また、犯人がその人物だとするとまた新たな疑問も出てくる。正にストーリーテリングの才。
被害者が実は罪人で、復讐に走る犯人に同情するシナリオや、
謎を追うのは警官でも、組織としての警察が事件を解決するワケではなかったり、
やるせない物悲しさを残す幕切れ等、そういう所がフランス的な部分なのかもしれない。


Red13指定 必読図書










 エリオット・チェイズ 『天使は黒い翼を持つ』 (1953)

原題『Black Wings Has My Angel』


50年代。WW2の戦勝からベトナム戦争の辛酸までの間、ある意味 “アメリカ黄金時代” とも言える、最後の牧歌的時代かもしれない?
「完璧な強盗小説」という謳い文句は、さてさてどうなのか。


ルイジアナ州の掘削リグで石油掘りをしていた〈俺〉は、ある町の小さなホテルで娼婦を呼んだ。
やってきたのは田舎町には不似合いな、とびきりのイイ女だった。
三日後にホテルを出た時、女と俺は一緒にコンバーチブルに乗り、コロラドを目指した。
最初は南へ向かう途中、早い段階で女は捨てるつもりだった。
だが「悪い金なんてない」と言い、金への執着やバイタリティを感じさせる女に可能性を感じた。
俺には計画があった。
共に脱獄を企て、失敗して命を落とした男が獄中で言っていた強盗計画が。



犯罪の企画・準備・実行・逃走を犯罪者視点で描くケイパー小説であり、クルマで旅するロードノベルの要素も大きい。
そして意外と、強盗シーンそのものの描写は淡白で、
終始変化していく〈俺〉と〈女〉の関係性、心理面、金を得る前と得た後の人の変化等の描写に重きが置かれている。

〈俺〉が最初、女を捨てるつもりでいたように、
〈女〉も最初は男を利用するつもりだった。

紙幣を縫い込んだ下着を穿いて逃げようとしたり、他の男のクルマに乗っていったり、捕まえて殴り合いをした後に愛し合ったり。
エネルギー溢れる時代なんやなぁと思う(笑)。
腹の探り合いをしていた2人が “計画” の為に協力して新婚夫婦の振りをし、次第に奇妙な絆で結ばれる。
しかし、次第に2人は逃亡のストレスから強迫観念に呑み込まれ、心に開いた闇の穴に落ちていき…

終盤、〈俺〉の精神が不安定になっているシーンで、
改行無しで長々と一息で綴る心理描写が、〈俺〉の切迫感・焦燥感を上手く表現している。


しかし、一冊前を読み終えて、これの冒頭数ページを読んだ時に
「あー、この雑さがアメリカやなぁw」と思ったww




Posted at 2020/05/31 02:22:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2020年04月30日 イイね!

4月の読書

4月の読書スティーヴン・ハンターの代名詞、 “スワガー・サーガ” の初期4部作と言われている物を古本で集めて来たので、
1ヶ月で4作一気読みしてやろうと思ったものの…
…4作と言っても7冊ありまして…w
マジでギリギリ今日の夕方読み終えたという。( ̄▽ ̄;)
しかも1ヶ月と言いつつ、先月の20日くらいからフライングで始めてたりした。










 スティーヴン・ハンター 『極大射程』 (1993)

原題『Point of Impact』


まずは既に読んでいる1作目のおさらいから。

ヴェトナム戦争に従軍経験のある元・海兵隊スナイパー、ボブ・リー・スワガーが、謎の組織の仕掛けた陰謀に嵌まり、大統領暗殺未遂犯として追われる。

改めて読んでみると「こんなに色んな要素を詰め込んであったのか」と驚く。
謎解き要素の伏線の多さや、答えに至るまでの二転三転の道筋、同じ物事を別のキャラ視点から見たときの描写の巧みさ。
最後のタネ明かしをわかって読むと、途中のボブの言動の意味がよくわかるし、尚更Coolなキャラだと思う。
何度も言ってますが、スティーヴン・ハンターはホンマ頭良いと思う。面白い。マジで。

元の感想文はこちら

『全てはここから始まった』


Red13指定 必読図書










 『ダーティホワイトボーイズ』 (1994)

原題『dirty white boys』


↑の『極大射程』の解説で、初期4部作の2作目として挙げられていた本作だが、コレを読んだだけではボブ・スワガーとの関係性はどこにも無い。
本当にこれがサーガの一部なの?と思う。
が。
次作『ブラックライト』で一気に話が繋がっていくという。


オクラホマ州マカレスター重犯罪者刑務所に収監されていた終身囚ラマー・パイは、シャワールームで黒人受刑者といざこざになり相手を殴り殺す。黒人たちの報復を恐れたラマーは看守を脅し、子分2人を連れて脱獄する。
迷い無く邪魔者を殺して進む、生まれながらの悪の化身ともいうべきラマーとその一行は、銃を手にいれ車を奪い店を襲い、警察を嘲笑うかのように姿をくらまし、爆走し破壊し続ける。



ダークヒーロー、ラマー・パイ
そのいとこのオーデル・パイと、元美術教師のリチャードの3人の囚人が、大胆さと狡猾さを併せた清々しいまでの “悪の華” を咲かせるのに対し、
それを追う警察官バド・ピューティは、不倫の泥沼にハマり、嘘で塗り固めた日々を過ごす。
この大袈裟なくらいわかりやすい対比が、ドラマにリズムをつけていて良い。
カッコいい悪役と、惨めな正義。

また、ラマーの精神的アイコンである “ライオン” を、
画家リチャードの視線から描く手法が素晴らしい。
ライオンにやたら執着するラマー。
自己のイメージを重ねているのだろうが、それをリチャードに絵にするように命じる。
ラマーにとってはそのイメージが非常に意味のある重要な事なのだ。
作中では遂にラマーの意図は語られずに終わるが、
そこをあれこれ想像する余地を読者に残している辺り(3作目を読んだ後にもまたそれを思い出させる辺り)がまた上手いと思う。

銃器に対するマニアックでリアルな拘りも素晴らしい。
「このモデルは弾倉が何発で、それをこのシーンで何発撃っているから残りの弾は何発」というような事をちゃんと計算してある。
当然と言えば当然なのだが、そういう “当たり前の事を当たり前にやる” のが物語の面白さを作る。

シリーズ通して、銃は単なる小道具ではなく
銃にまつわる背景・信念・哲学・美学やアメリカ銃社会、それを取り囲む産業の明暗も込められている。
日本人にはピンと来ない話もあるが、ある種、車のエンスー趣味の世界と通ずるモノもある。
敢えてそれを選ぶ理由・根拠や拘り、道具を持て余す素人や、逆にプロフェッショナルが使う事でより活きる道具。
結局は「人も道具も使い方」という所に行き着くのだが。










 『ブラックライト』 (1996)

原題『BLACK LIGHT』


起承転結の見事な “転” の内容になっているepisode3。

1作目から4年後。隠遁生活を送るボブの元に、
2作目の不倫警官バドの息子、ラスが訪ねてくる。
(ちなみに、ここでボブには4歳になる娘ができている。この娘が後にスワガー・サーガの3世代目の主人公を務めることになる)
これまで何人もの人間がボブのもとを訪ね、彼の知っている事実を公表して本にしたいと言ってきたが、ラスは違った。
ラスは、ボブの父、アール・スワガーの事を書きたいと言う。


物語の前半は、
ボブの父、アール・スワガー
ラマーの父、ジミー・パイが、互いに命を落とすことになった銃撃戦に至るまでの数日間にスポットが当たる。
アールがかつて従軍した硫黄島で戦死した戦友の息子、ジミー・パイ。
アールが後見人にも似た立場で面倒を見ていたジミー。
なぜその2人が互いに殺し合う事になったのか。

アールの最後の数日と、それを追うボブとラス。
過去と現在が交互に展開される。
そしてボブは、父アールの検死結果に不審な点が有ることに気付く。
弾痕の直径が異なる傷がある、と。
ジミーとの銃撃戦で受けた傷ではアールは死んでいなかった。
別の銃から放たれた弾丸で死んだのだ、と。

約40年前の過去を探り、アールの死の真相を暴こうとするボブとラス。
しかし、それが “不都合な真実” である者が2人の命を狙う。



と、
なかなか人物関係が複雑で、更に時間軸が行ったり来たりするので前半はちょっと頁をめくる手が重い。
が、後半に入ると一気に面白くなる。

序盤から散りばめられている情報を一つ一つ頭の片隅に留めておくと、終盤の興奮度合いがエライことにw
最後に投下される特大の爆弾も、序盤にそれとなく匂わせるくだりはあるものの、実に微かなさりげなさに埋められているので、「ん? なんかあるような気がするけど…?…まぁいいや」といった程度で、その辺りが実に上手いと思う。

とにもかくにも。
ここまで読み終えると、やはりこれは一連の物語だし、
“家族” “父と息子” の話になっているとわかる。
ただのシリーズ物ではなく「サーガ」と呼ばれる所以かなと。










 『狩りのとき』 (1998)

原題『TIME TO HUNT』


起承転結の “結” 。

まず前半は、反戦活動真っ盛りの1971年のD.C.から始まり、
後にヴェトナムでボブのスポッター(監的手:スナイパーの補助、支援を行う)を務めることになるダニー・フェンが巻き込まれた事件が描かれる。
兵役が残り1年程となり、もはや “ナム” へ送られる事は無いはずだったダニーが、新婚ホヤホヤだったダニーがなぜ “ナム送り” になったのか。

そしてヴェトナムで巡りあったボブとのチームプレー。
1作目で少しだけ触れられた “アンロク谷の戦い” が前半のハイライト。
壊滅目前の味方前線基地に迫る敵の大隊をたった2人で足止めし、鬼神のごとき戦果をあげた。

しかし帰還予定日の前日に、敵スナイパーの銃弾からボブを庇おうとして還らぬ人となったダニー。
彼を仕留めた東側スナイパーの視点からも物語は語られる。


と、ここまでは既に1作目で与えられている情報が主であり、物語が動き出すのは下巻に入ってから。

そして現在。
スワガー一家がスナイパーの襲撃を受けた。
当初、ボブは自分が狙われたと思い込んでいたが、
実は狙われたのはダニーの未亡人である妻ジュリィではないのかと気付く。
そしてヴェトナムでも敵スナイパーは、スナイパーである自分ではなくスポッターのダニーを狙っていたのではないかと。
陰謀の発端は71年のD.C.。
ボブは亡き戦友と妻子への想いを胸にまたもや “狩りの時” に身を投じる。



実に巧みなプロットで唸らせてくれる。
ただ、著者は1作目を書いた時点では特に連作にするつもりはなかったのか、幾つか辻褄が合わない部分が出てくる。
まぁ、そこは著者も素直に認めているし、アレはアレ、コレはコレと割り切って楽しむべし。
だし、そんな細かいツッコミなんかどうでも良くなるくらい「良く出来た物語」である。

“アンロク谷” の戦闘シーンの胸熱感(笑)は数あるタクティカルアクション小説の中でもトップクラスと言える。
スナイパーとスポッターの役割分担や信頼関係、戦術面の技術的な描写まで臨場感抜群。
これこそ “ボブ・リー・スワガーの伝説” を象徴する名シーン。

しかし、その派手なアクションのみならず、
本作では終始スパイ小説的な要素も色濃い。
潜入スパイを炙り出す囮捜査や、ソ連崩壊後も実質的に続く東西冷戦。


スワガー・サーガはまだまだ続くが、
とりあえずここまで一区切りを読んでみて、
マーク・グリーニーの『グレイマン』シリーズも当然スワガーから影響は受けているんだろうけど、
グレイマンはやはり色んな意味で “21世紀のエージェントヒーロー” なんだなと思う。
スワガーはあくまで20世紀のヒーロー。
本作で既に50歳のボブが今後どこまで時代に食らい付いていくのか気になる(笑)。




Posted at 2020/04/30 21:00:44 | コメント(0) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2020年03月30日 イイね!

3月の読書

3月の読書ガソリン価格の下落だけが明るい話題ですかねぇ。
和歌山の価格破壊っぷりが凄い。
まぁ、それも一消費者の短絡的な目線での話ですが。

外出自粛が叫ばれた先週・先々週、
ガソリン安と相まって、“クルマで遊ぶ” 系は盛況のようですね。
昨日も地元の裏山が昼も夜も賑やかでしたし、
ちょっと田舎の方へ行けばエンスー系やらBNY系やらシャコタン系やら、なんやかんかスレ違う。

これが、一週間後とかに振り返って
「危機感が無かった・軽率だった」となるのか、
せめてもの楽しみとして許容されるのか、どうなんでしょうね。










 S・J・モーデン 『火星無期懲役』 (2018)

原題『ONE WAY』


某 “火星でひとりぼっち” の映画人気にあやかろうと、出版社から作家に依頼する形で書かれた作品だとかw


息子の為に殺人を犯し、終身刑で服役中のフランクは、火星基地建設プロジェクトへの参加を持ち掛けられる。
刑務所で人生を終えるか、火星で生きるか。
フランクをはじめ、プロジェクトの参加者は老若男女の囚人7名。
だが、彼等は火星で一人また一人と命を落としていく。
酸素不足、過量服薬、二酸化炭素中毒…これらは事故なのか?自殺なのか?それとも?



ちゅーわけで、久しぶりにSFです。

…なんですが、結局は “密室サスペンス&サバイバル”
前半は結構SF要素多いけど、後半は完全に心理駆け引き。( ̄▽ ̄;)
せっかくだから「HAL9000」的要素が入ってれば面白かったけど、本作で人を殺すのはあくまで人です。
とはいえ、SF的検証&考察に手抜きは無し。説得力あってリアルでよろしい。

…結構面白く読めたのに、何でこんなにも感想が大して出てこんのやろ(爆)。
著者が「自分のアイデアでは無い」ものを書いているという部分が何処かに出てるのかな?
それか、ハードSFを期待してたら、そうでもなかった肩透かし感?










 シェイン・クーン 『謀略空港』 (2016)

原題『THE ASSET』


デビュー作の『インターンズ・ハンドブック』が面白かったので続けて買ってみたシェイン・クーン。
9.11テロ後の航空(空港)セキュリティにスポットを当てたお話。


航空保安警備のコンサルタントとして、1年の大半を出張先の空港と飛行機の上で過ごすケネディ。
最愛の妹を9.11テロで亡くし、しかも前日に些細な口論で喧嘩別れしたままだった事から罪悪感に苛まれ、半ば強迫観念に近い思いで世界の旅行者の安全に身を捧げる毎日。
だが、空港の保安警備は一見厳重になったが、保安員の怠慢は慢性的かつ深刻で、これではいくら自分一人が動いても何も改善されない、と失望感に沈んでいた。
そこへ届いたのが、複数の空港をターゲットにした大規模テロの兆候。
CIAから思わぬ形でスカウトされたケネディは、各分野のスペシャリストと共に未曾有のテロ計画に巻き込まれていく。



と、これまた元々映画畑の著者らしい「素人がある日突然スパイデビュー」な展開(笑)。
原題の “ASSET” は直訳すると「資産」だが、防諜業界用語(CIA語?)で「工作員」の意味。

9.11テロ後、アメリカは「国土安全保障省」なる組織を編成し、空港セキュリティの強化が図られた。
が、機械やシステムは進化しても人間が進化していないのはどこの世界も同じだそうで…
自覚に欠ける新人保安員、プライベートを優先する職務怠慢の主任保安員、機内持ち込み禁止品目の高い見逃し率(実に95%!)、荷物盗難の横行。
これらは著者の創作ではなく現実の事。
アメリカはGhone is goneされたKIXを笑う資格は無いらしい。

妹を失ったショックからの逃避と強迫観念から仕事に没頭する主人公ケネディが、自己啓発本にハマっているという設定もイマドキ感がリアル。
航空業界、ひいてはアメリカ社会全体へのアンチテーゼが根底にありつつ、ケネディが啓発本の受け売りから “自分自身” で考え行動するようになっていく過程も明快爽快で、これも世間への諷刺であるように思う。

クライマックスの纏め方がドタバタでちょっと首を傾げたくなるが、エンターテインメントとしても現代時事小説的な面でも良作。










 R・D・ウィングフィールド 『夜のフロスト』 (1992)

原題『NIGHT FROST』


シリーズ第3弾。
シリーズものの良い所は、
・新しく覚える情報が少なく済む
・「次何読もう…」という悩みから解放される(笑)
逆にデメリットは、
・知らない人にはどんどんハードルが高くなる
・惰性になりがち
てなもんですか。

本シリーズは毎回 “相棒” が変わりはするものの、
共通して、怒濤のモジュラー型(複数の事件が同時平行する)ミステリ。
それを、真面目と不真面目の双極が同居したオッサンが「俺の直感がそう言ってる」を合言葉に、時に名推理、時に迷推理で行ったり戻ったりしつつ、なんやかんやなんとかなっていく話(笑)。


今回は、インフルエンザで署員の半数がダウンしている中で、匿名の中傷ビラ、墓荒し、連続老女切り裂き魔、行方不明の少女等のtoughな事件の数々に、
いつも通り下品なジョークで切り込んでいく我らがフロスト警部。
新たな相棒は歴代最悪の憂き目に遇い、家庭崩壊の危機に立たされる。
事件の凶悪性も過去最高。「俺の直感」もやや陰りを見せる。
天敵マレット署長の説教もいつも通り耳栓でやり過ごし、お返しとばかりに深夜の署長室で出前の中華を貪る(カーペットにエビチリソースを垂らす)。



ほんま、何度も言うけど、両津勘吉(笑)。































「諸君らが愛してくれた志村は死んだ!

 何 故 だ !

無知蒙昧なる輩どもが外出自粛令を無視して遊び呆けたからである!
日本国国民は、我ら優良種たる児眠党政権によって管理・運営され、初めて生き延びる事ができるのである!

籠れよ国民!ジーク・安倍ンジャー!」






…という流れしか見えないんだが。
「志村けん陽性」の報の時点で頭にこれが浮かんだ。

著名人の訃報を利用するのは政治としては正しいだろうし、誰が頭であっても同じ事だろうし、誰が汚れ役になるかだけの話と思うけど、
政治家の先生方はこの期に及んでも保身や “事後” を見据えての駆け引きにお忙しいんでしょうなぁ。





Posted at 2020/03/30 20:00:06 | コメント(2) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2020年02月29日 イイね!

2月の読書

2月の読書「潰れるまで乗る」とか「いずれエンジン載せ換える」とか、
別に理想の話とか、ロマンの話として言ってる訳では無いんですが、
かなり現実的に色々考えさせられる事態がすぐ身近で発生しておりまして、
なかなか実際シビアな話だよなぁ…と真顔になっております。

んま…その話は後日改めてしようと思います。
むーん(・ε・` )















 ビル・シャット & J・R・フィンチ 『地獄の門』 (2016)


ナチス・日本軍・ロケット爆撃機・731部隊・伊400潜水艦・アマゾンの奥地・霧に包まれた秘密基地・チュパカブラ。
もー、厨二病臭しかしないB級映画全開のキーワードw
古本だったのでネタとして笑いながら買いました。

が。

読んでみたら、時代考証や事実の裏付けがめちゃくちゃしっかりしていて、恐れ入りました。
実在人物や史実、科学的データをカキ集めた所に遊び心を混ぜ合わせて、抜群の “歴史のif” を作り上げ、且つエンターテインメント性も際立っている。
そして、史実・事実を使って組み上げるということは、ちゃんとそのあとの史実に繋げなくてはいけない。(宇宙世紀ガンダムシリーズは正にこの難しさと面白さで成り立っているw)
ここの手腕も見事だなと思う。

小道具として使われる “事実” は、戦争のみならず文化面、社会面にも多岐に渡り、
WW2中のアメリカ国内で、ドイツ系の養父母から養子を引き離す誘拐が国家主導で行われた事や、
複数の大学がユダヤ人学生の学位の格下げや剥奪、入学規制を行った事など、
あまり知られていない黒い歴史をしっかりと扱っている辺り、派手なパッケージに反して意外と丁寧に緻密に練られた作品と思う。

また動物学の知識も存分に活かされ、メインテーマとなる吸血コウモリの生態は勿論、絶滅した動物が “実はアマゾンの奥地で生存していたら” の if も見せてくれる。

とは言っても、キャッチーなアイコンを多用した盛りだくさんドタバタ展開で、やはりB級映画感は否めないがww
インディ・ジョーンズとかが好きな人にオススメ。















 ダグラス・リーマン 『キール港の白い大砲』 (1989)

原題『The White Guns』


“大砲” だったらgunじゃなくてcanonじゃねーの?w
第二次大戦を船乗りとして生き抜いた著者は、海における第二次大戦の様々な戦いを多くの著作で描いてきたそうですが、<本作は “終戦” にスポットを当てた集大成。
いわゆる “戦争もの小説” としても珍しい切り口と思って手に取りました。


ナチスドイツが崩壊し、降伏文書が調印された1945年5月。
英国海軍のマリアット大尉が指揮するガンボート〈801〉は敵地キールに入港した。
つい昨日まで、情け容赦ない敵に立ち向かい、仲間の船が沈められていくのを目の当たりにし、多くの仲間が勇気の代償を支払うのを見送ってきたが、
未だ黒煙たなびく港で彼らを待ち受けていたのは、憎むべき敵ではなく、戦いに疲れた人々の姿だった。

最恐の敵Uボートを次々と送り出してきた軍港キールは、破壊し尽くされ、瓦礫と破船の山の死の世界。
そこで目にしたナチスドイツの敵兵達は、階級章も記章も剥がされた軍服姿の疲れきった男達だった。
そんな “昨日の敵” を働き手として雇い、緊張と疑心暗鬼の中で占領軍の任務が始まる。

ソ連領からの難民船、機雷の除去、沈船の引き揚げ、毒ガスの海上処理、犯罪者の処刑、ドイツ市民への食料援助、闇市の摘発、潜伏SS将校の捜索…
戦争は終わったのに、まだ戦争は続いている。戦争の余波で更に命が失われていく。
『戦争が終わったら勝者も敗者もいない、いるのはただ “生存者” だけだ』

英国海軍と元ドイツ兵、敵も味方も男も女も、一緒に戦争の後始末をするうちに、更にその傷を深める者もいれば、人々を食いものにして甘い蜜を啜ろうとする者もいる。
しかし、やがて敵味方の垣根を越えて理解が生まれ、友情が育ち、そして愛が芽生える。



この作家、上手い。
それぞれのエピソードが個別に展開していくようで、大きく一つの流れに繋がっていき、縦糸横糸が綺麗にギュッと組み合う感覚。
〈801〉を中心とした船の任務で水兵の日々が存分に語られる前半が、閉鎖的環境の “内なる仲間” の話なのに対し、
〈801〉が退役し、乗員それぞれがバラバラに地上勤務になる後半は “外への巣立ち” 。
巣を無くした鳥達はそれぞれの生き方を模索するが、そこで明暗分かれるドラマ性が見所。

そして、個人的にこの著者の作風で気に入ったのが “無駄に語らない” ところ。
ある程度、読者に想像させて補わせる部分がある。
いちいち全部説明されるより、こちらの方が好きだ。

ドンパチ派手な戦争スペクタクルよりも、リアルで丁寧で
じっくり沁みる感動大作。
最後に出てくる「白い大砲」が意味するものも、なるほど見事な描写だなと思う。
こういう作品こそ映画化してほしい。


Red13指定 必読図書















 R・D・ウィングフィールド 『フロスト日和』 (1987)

原題『A TOUCH OF FROST』


シリーズ第2弾。安定の面白さ。

相変わらずのだらしなさ、行き当たりばったり、思いつき行動、面倒くさがり、下品な冗談ばかりだが、義理人情はまぁまぁ大事にする、デントン署の問題児フロスト警部。
前作以上の “同時多発” で襲い掛かる難事件の数々に、今回は更に人員不足という背景もあって、益々カオスな捜査活動を強いられる。
堅物のエリート署長の説教をのらりくらりと受け流し、ロンドンから左遷された素行不良の若手巡査を相棒に従え、顔見知りの街の小悪党から情報を仕入れ、独自の推理で真相を追う。

まぁ、こんなにいい加減な主人公の警察小説も珍しい(笑)。
前も言ったけど、両津勘吉的な雰囲気。
フロストも両津と同じく、上司からの覚えは悪いが部下・同僚からは案外評判が良い。
組織の一員でありながら、規則・規律などどこ吹く風。
自由きまま勝手に生きる姿は、現代社会の閉塞感へのアンチテーゼ的オアシスであるかもしれない。
常識に囚われない、型に嵌まらない事の大切さ(善かれ悪しかれ両面はあれど)を示してくれる “愛すべきオッサン” である。




Posted at 2020/02/29 15:15:17 | コメント(1) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記

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