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Red13のブログ一覧

2020年08月30日 イイね!

8月の読書

8月の読書クソ暑さも少しマシになってきた…かも?
ちょっとここ最近、プラモに手を出したり毎月ポンポン服を買ってたりしてますが、
そろそろちょっと財布の紐を引き締めてクルマのメンテ貯金せねばと思いました。( ̄▽ ̄;)
とりあえずクラッチ&MTマウントの部品は既に揃ってるんですけどね。
その後、リアデフOH、車高調OHと大型メニューが続く予定…
言ってる間にまたタイヤ亡くなるし、羽根とかディフューザーとか欲しいし…
いつになるやらw










 マーク・グリーニー & H・リプリー・ローリングスⅣ
   『レッドメタル作戦発動』
 (2019)

原題『RED METAL』


マーク・グリーニー、今年はグレイマン出ないのかと思ったら、こんな仕事してたのね。
元・米海兵隊中佐との共著による新作(新シリーズ?)。


2020年12月、総統選挙を控えた台湾に中国が軍事圧力を掛け、統一反対派が総統になれば軍事侵略すると宣言。
米軍はそれに対応して空母打撃群を東シナ海へ派遣。
ところが、海軍情報部トップ(男性)と太平洋艦隊副指令(女性)の不倫スキャンダル動画がネット上に流される。米艦隊の動きを鈍らせようとする中国によるサイバー攻撃と見られたが、
元海兵隊で国防総省統合参謀本部のコナリー中佐は独自に調査し、中国ではなくロシアによる攻撃と知る。
統合参謀本部は一触即発の状態にある中台関係しか眼中になく、コナリーが上官に進言しても握り潰された。

ロシアは自国が開発しながらも西側に奪われたケニアのレアアース鉱山の奪回を目論んでいた。
台湾の緊張を囮に利用し、ロシアの大規模な侵攻作戦が動き出す。



冒頭の中台関係は現実味有りすぎなんですが、
今回は台湾はメインではなく、東ヨーロッパと東アフリカが舞台のお話。

独行工作員の潜入アクションであるグレイマンシリーズと打って変わって、
軍隊vs軍隊、特に機甲戦(戦車等の車両戦闘)が存分に描かれる。
他にも、潜水艦の戦闘、歩兵vs戦車のゲリラ戦、戦車同士の追撃戦、航空支援や迫撃砲、A10攻撃機 vs Su57ステルス戦闘機。
現代最先端の武装がこれでもかと登場。
実際に数々の戦場を目にしてきた元軍人ならではのリアルな描写。
(リアルすぎて、各登場人物や部隊の所属や肩書きがめっさ長ったらしいのはご愛敬w)

敢えて主人公と言えるメインキャラを立てず、
その場面場面で非常に多くのキャラクターの視点から語られるのも、(ほぼジェントリー一人の視点となる)グレイマンシリーズとの大きな違い。

ロシアの急襲に対応する為、急遽編成されたドイツ駐留米軍(NATO軍)とドイツ陸軍混成機甲部隊の臨時連隊長。
前日までカフェでコーヒーを淹れていたポーランド民兵の女性が、数日間の激戦で民兵を率いるリーダーになっていく様。
航空支援を行う戦闘ヘリのパイロット。
アデン湾に忍び込み、ロシア部隊の貨物船を攻撃する米原潜の艦長。
アルプスの気象観測所でロシアの仕掛けたレーダー装置を発見し、銃撃戦を展開するフランス軍の落下傘部隊。
ロシア側の主要人物もキャラが立っていて、
最先端の装備・戦術を好む若手大将と、昔ながらの装備で老獪な戦術を駆使する老大将。それぞれの部隊構成がハッキリ別れているのも面白い所。
また、前半のハイライトとなるヨーロッパ戦線では、なんと武装列車が登場。
今の時代に敢えて、という奇策が見事にハマる。


これぞミリタリー、これぞコンバットという軍事アクション。
グレイマンにはない戦略規模の話が面白い。

そして、台湾の話は続編で、という流れ。















 ウィル・マッキントッシュ『落下世界』 (2016)

原題『FALLER』


男が目覚めた時、自分が何者か、今居るのはどこなのか、殆どの記憶が消え去っていた。いや、記憶を失っていたのは彼だけではなかった。その場に居た誰もが記憶を失っていた。
僅かな手掛かりは、ポケットに入っていた手書きの地図の様なメモ、女性の写真、落下傘兵の人形。

そして彼らが居たのは、虚空に浮かぶ島だった。
どこまでも続く青空のどこかに、きっと別の島がある。そう考えた男はパラシュートを自作して島から飛び降りた。



という設定だけで面白い。
アイデア勝負のSFに於いて、この “キャッチーさ” は重要。

読み進むとすぐに、もう一つのストーリーラインがあり、そっちは第三次世界大戦が目前に迫ったアメリカが舞台とわかる。
この二つのストーリーがどう重なってくるのか、先が気になる構成でサクサク読める。

世界を崩壊させるマッドサイエンティスト、人間をコピーする、ミニブラックホールで無限のエネルギー、「貴方を殺した罪で貴方を逮捕する」、などなど
“SFあるある” を大量に詰め込んだオモチャ箱感。
反面、科学的説得力は申し訳程度で、SFというよりファンタジー。
一応二回読んだ方が良いかな?( ̄▽ ̄;)















 マイケル・フィーゲル『ブラックバード』 (2017)


『湾岸の黒い怪鳥』ではありませんw
クロウタドリの事で、
日本では馴染みが無い(沖縄周辺に飛来)ですが、渡り鳥の代名詞としても使われる。


国内テロを専門とする殺し屋の中年男。
卵アレルギーの彼が、マヨネーズを入れられた事でキレてバーガーショップで乱射する。
その場にたまたま居合わせ、友達の輪から1人外れて所在無さげにしていた8歳の少女に何かを感じた男は、彼女を守るように連れ帰る。

なぜこの少女を連れてきてしまったのか?男は自問する。
“裕福ではない家庭” の末っ子だった少女は、逃げようと思えば逃げられる機会を何度も得ながら、結局男に付いて行った。
こうして2人の奇妙な疑似家族生活が始まる。

男は父として師として、少女に “生きる術” を教える。
少女はやがて男の “仕事” を手伝い始める。
しかし、“組織” の勢力争いに少女が巻き込まれた事で2人のバランスは崩れ始める。



『オッサンの殺し屋と少女』というと、いくつも映画のタイトルが浮かびそうだが、
個人的にはこれを読んでいる途中で『ロリータ』を思い出した。
2人が全米中を(渡り鳥のように)逃避行するという土台に、思春期少女の成長物語。
最初はオッサンの側が保護者然としてイニシアチブを取るのだが、
少女が成長するにつれてその力関係が拮抗、しだいに逆転していく様。
少女はあくまで男と “家族” に、仕事の “相棒” になりたかった。
しかし男は、次第に “独り” に戻ろうとする。その方が強く在れる、と。

ギリシャ語には「愛」を表す言葉が4つあるという。
家族愛なのか師弟愛なのか男女愛なのか、
この2人の “愛” はいったいどんな言葉で表されるのだろう。
家族の絆の物語であり、切ないラブストーリーであり、そのどちらでもない。


テロリズムに関しては、(ちょっと陰謀論めいた所はあるが)
誰かが得をするために、或いは社会全体が健全化する為に、仕組まれたヤラセの茶番劇である、との見解。
それに世間の目が向いている間にコッソリと重大な何かを行う為のスケープゴート。
主人公の雇い主が誰なのかは明かされないが、“国家” 側であるようなことが仄めかされる。


必読図書とまでは言わないけど、良作である。




Posted at 2020/08/30 11:11:09 | コメント(0) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2020年07月31日 イイね!

7月の読書

7月の読書今まで、
←この毎月の読書感想文のトップ写真を撮る時だけしか使ってなかった折り畳みのちゃぶ台机が、
今やガンプラ作業机として大活躍中ww
この写真を撮るために上に乗っていた作業中のガンプラを片付けるのが面倒でした(爆)。

作品ナンバー②では塗装もしようと思ってるのに、
こんだけ雨続きだと全然出来なくて作業停滞中。(・ε・` )

しかし…
諸兄方の作例とかを検索しまくってたら、
スマホに出てくる広告がガンプラ一色になった件www















 ヴィクトリア・エイヴヤード 『暁の嵐』 (2018)

原題『War Storm』


レッドクイーン四部作、完結。
終わって一安心なのと残念なのと、半分半分くらいかな。

1、2はしっかり憶えているけど、3の内容が怪しかったので
また例によって、復習がてらの全巻一気読み。
(今月内に読み終われるかハラハラでしたがw)


多少ネタバレを含んでいきますが…
1~2巻では「よく作り込まれたファンタジーモノだなぁ」という感じだったのが、
3巻に世界地図が載せられ、「ん…?これってアメリカじゃね?」となり、実は現実世界の遠い未来の話だと判明。
言われてみれば地名もなんとなく名残のあるものが。
崩れた地下鉄網が特徴の廃墟の街ネアシー=ニューヨーク、
湖の畔の要塞都市デトラオン=デトロイト、
空軍基地デルフィー=フィラデルフィア、等々。

乱暴に言えば、アメリカ北東部で5つほどの国が魔法戦争をやっているという話w
だが、上手いこと現代社会の問題(人種問題・男女差別・ジェンダーマイノリティ)を抽象的に取り上げたり、
王政・独裁・民主主義の良し悪し、人類の争いの歴史を揶揄するような部分、神話のオマージュなども見られ、
非常にハイレベルに纏まっている作品であるとオススメします。

入口はファンタジーRPGで、読み終えると大河ドラマ。

登場人物それぞれの個性も際立っていて、ふつうこれだけ多くのキャラを出すとどれがどれやらわからなくなるもんやけど、上手く際立たせてイメージしやすくしてある。

主人公《稲妻娘》メアと、《亡国の王子》カルの、互いの信念を貫くが故に近づいては離れてを繰り返す恋愛模様…というよりもっと深い繋がりが強く描かれる最終巻。
名脇役エヴァンジェリンとプトレイマスの妹兄コンビも、親の政治の道具として使われる運命に遂に反旗を翻し、親離れの成長を見せる。
人を操り、人を裏切り、自ら《悪の化身》と成り果てたメイヴンは遂に自らが裏切られる側に。
メアvsメイヴンの因縁のラストバトルは実にこの2人らしい静かで泥臭い争い。

「裏切り」がシリーズ全体のテーマだったので、
ラストで何か「えー…それ有りぃ?(;´д`)」的な(後味の悪い)展開になるんじゃないかと危惧していたけど、
さすがに割りとすんなり綺麗に纏めてきたかなと。


ただ…
四部作と言いつつ本国では既に続編の話がどうとか?
終わり方も色々繋げられるようにボヤかしてあるなぁとは思う。
映画化も進んでるみたいやけど、上手くいけばハリポタみたいなヒットシリーズになるかもね?




Posted at 2020/07/31 11:11:09 | コメント(0) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2020年06月29日 イイね!

6月の読書

6月の読書赤ターボが異音モール状態でなかなかアレです。
シャラシャラチャラチャラ似たような音が複数箇所から出てるしw
1ヶ所クラッチは確定。あとはタービンなのか駆動系なのかよーわからん。
ペラシャもなんか怪しいような…(¬_¬)


過走行の宿命とはいえ、あっち直してもまたこっち。
こっち直したらまたそっち。
モグラ叩きかワニワニパニックかw
いつになったらサーキット全開できるのか。


もーさ、一晩寝たら新車になってねぇかな…←










 ルシアン・ネイハム 『シャドー81』 (1975)


先月の最後に読んだ “完璧な強盗小説” というキャッチコピーでコレを思い出したので、引っ張り出してきて再読。
誰も死なない、誰も傷付かない痛快ハイジャック。
ベトナム戦争をパロディ的に扱う所、戦争の道具(戦闘機)を使いながら誰も傷付けない、という諷刺作品でもある。

しかしもう50年近く前の作品なのに、今読んでも全然古さが無い。
世界的に見れば747もまだ現役で飛んでるし、戦闘機の世界もこの頃からそんなに進んでないし。

作中で鍵になる戦闘機は架空機ですが、
現代に生きる我々としてはF35がまんまイメージに合う。
むしろ、著者はF35を知っていたんじゃないのか!?と思えるくらい。
でもま、「燃料に1/3まで軽油を混ぜても飛べる」とかいう設定は「んなワケあるかいww」とツッコんでしまうがw
いや、実際ジェット燃料ってどうなってるのか知らないですけど…

初見の時には流していた部分で、軍内部の人物像や権限・管轄の話なんかが、結構細かく描かれている事に気付く。
“政治ゲームとしてのベトナム戦争” をより浮き彫りにする為の要素なのか、単に好きだから書いたのか?(笑)















 マーク・サリヴァン 『緋い空の下で』 (2017)

原題『Beneath A Scarlet Sky』


これは全力で太鼓判!
何がなんでも必読図書!



1943年6月、イタリア・ミラノ。
イタリアがWW2に参戦してから3年、戦況は枢軸国側にとって芳しくなく、ムッソリーニ政権への批判が高まる中、
街は次第に同盟国である筈のナチスドイツによる支配色が強くなっていく。
17歳の少年、ピノ・レッラはそんな戦時下でも気ままに女の子を追いかけて日々を過ごしていたが、連合軍の空爆が始まった事で生活が一変する。
スイス国境近くの教会へ疎開したピノは、神父から毎日山登りをして体を鍛えるように指示される。
連日、明かりの無い夜明け前に出発し、幾多の難所を越えて戻ってくる。
それは、ナチスから逃げてきたユダヤ人をスイスに逃れさせるガイドのトレーニングだった。

半年余りで何十人ものユダヤ人を越境させたピノは、18歳の誕生日の2週間前、突如父親からミラノに呼び戻される。
18歳になるとドイツ軍に徴兵され、ほぼ確実にロシア戦線送りになるという。
それを防ぐ為に、叔父のコネを使って “志願入隊” し、戦場に出ない部隊に入るよう説得される。
パルチザン活動を続けたいピノは反発したが、葛藤の末ナチスの軍服に袖を通した。
疎開していた時に、レーサー志望の青年から運転を教えて貰っていたピノは、ひょんな偶然からナチス将校の運転手に取り立てられる。
ハンス・ライヤース少将。イタリアに於けるナチスのNo.2だった。
ピノはその立場を利用して貴重な情報を探るスパイになった。



ジュゼッペ・“ピノ”・レッラは実在の人物で、本作は “限りなく事実に忠実な小説” だという。
完全なる伝記・自叙伝では無く、多少の膨らましはあるとの事だが、それは戦後50年以上、70代後半になって初めて自身の戦争体験を語ったピノの年齢的な問題もあるのかもしれない。

戦禍によりミラノが荒廃していく様。
パルチザンとして戦う弟や親友からナチスに入った裏切り者と叫ばれ、憎きナチス将校に付き従いながらもその特権を享受するambivalence。
ドイツ軍の軍事施設を作る為に不眠不休で強制労働させられる連合軍やパルチザンの捕虜。
“ポーランドのアウなんとかという所の労働キャンプ” に送られる、貨車に押し込まれた人々。
それらに何かをしてやりたくても何もできない自分。
知人も次々と命を落としていくのを目の当たりにし、痛みと悲しみと虚しさに苛まれながらも、運命の恋に心救われ拠り所として生きていく姿。
“幸せ” とは、遠い未来ではなく、その時その瞬間にあるのだと思わせる。

しかし、最も苛烈な現実は、終戦目前の「ナチ狩り」とも言える “反動” である。
パルチザンや市民によるナチス&ファシスト(ムッソリーニの黒シャツ部隊)への報復行為は、捕食者の立場が逆転しただけで、残虐で醜く歯止めが効かない。
心はイタリアの為にスパイ活動をしているパルチザンでありながら、第三者から見れば「ナチスの軍服を着たイタリア人」であるピノにもそれは重くのし掛かる。


「目には目を」も一つの正義ではあるだろうし、「同じことをされてもいい覚悟があるならやればいい」とはワタクシ自身のポリシーでもありますが、
「やられたからやり返す」では相手と同じレベルになるよ、というのもワタクシ自身の思っている事。

「破壊と略奪」という戦争のリアルな側面を抉り出しながら、英雄譚冒険小説としてのクオリティも半端無く高く、美しい恋愛にも触れられ、男達の成長物語でもあり、
しかもそれが作り話ではないという所。これがとにかく凄い。



あと、みんカラ的ピックアップポイントとして…
ピノが最初に運転した少将のクルマが6輪のゲレバであるw
そのゲレバは英軍機の機銃掃射を受けて廃棄され、次のクルマはただ「フィアット」とだけ表現されているが、何だったのか気になる気になるw

また、ピノに運転を教えた “レーサー志望の青年” は、アルベルト・アスカリという。
本作の物語には掛からない部分であるが、ピノは戦後フェラーリのセールスマンをしていた時期があり、その後自身もフェラーリを所有しサーキット遊びを嗜んでいたとか。アスカリ繋がりでF1関係者とも親交が多かったという。















 アーサー・C・クラーク 『都市と星』 (1956)

原題『The City And The Stars』


ふと久しぶりにSF、というか
アーサー・クラークを読んでみたくなり、
未読だった作品が新訳で出たところだったのでチョイス。

SFというと一般的にはスターウォーズとかアルマゲドンとかそういう系をイメージする方が多いかもしれませんが、
個人的にはSFというと、哲学・宗教・科学の思考実験のようなイメージ。
クラークの作品群や、レムの『ソラリス』、イーガンなんかも正にソレ。
クラーク作品は特に「宇宙に於ける人類の立ち位置」「人類の往く末」を、科学の土台の上で哲学的に真摯に夢想する。

一見ユートピアに見える完成された世界は、その実ディストピアである、というのはSFでよくある題材だが、
クラークの場合、そこで悲劇的な展開にも破壊的な展開にもならず、融和の末に昇華する方向に行く。

クラークの多くの著作で共通するのが、人類を「揺り篭から出ていく子供」として描いていること。
『2001年』シリーズのボーマン船長、『幼年期の終り』のジャンやジェフ、そしてこの『都市と星』のアルヴィンは、
いずれも(それぞれの作品内に於いて)人類の変革の最初の1人となるが、彼らには全て “導く親” のような存在が居る。
その “導く親” の庇護の下を離れて1人で歩き始める人類。
その過程、その変革。
その結果、良いことも悪いことも起こるとしても、より高次元の存在に進んでいこうという向上心と好奇心。
それがクラークの変わらぬ柱であると思う。

またクラーク作品の特徴として、「(基本的に) “敵対的な地球外知性体” が出てこない」というのがある。
『幼年期』のカレルレン、本作の “使徒” やヴァナモンド等、実際に “存在する” 者は友好的・共存的であるし、『2001年』のように間接的にその存在を示すオブジェクトだけが出てきたりと、
ハリウッド映画に多く見られる「問答無用で地球侵攻」や 「異星人のオールスターバーゲンセール」的ノリがどうも白けるワタクシのような人間には、クラークのこのスタンスが心地いい。

「成熟した知性を持つ存在が排他的行動をとるだろうか?」 と本作の登場人物も喋っていて、
読み方によってはこれは人類そのものへの皮肉とも取れるが、クラークの場合は純粋に理想を語っていると感じる。

久しぶりにアーサー・クラークを読んで、
60年以上前の作品でこの科学的根拠の盤石さ、神憑り的な先見性、壮大な想像力、(逆に言えば、科学の世界はその頃で既にほぼ行き着く所まで行ってしまっていたとも言えるか)
やはり彼がSF作家の頂点だと思うし、今後も超える人物は出てこないと思う。
だし、結局、人類の究極の進化≒理想の生命体は精神体のみの存在になる、というニュータイプ理論を、半世紀以上前から一貫して論じているクラークにジークジオンww















 アーサー・C・クラーク 『幼年期の終り』 (1953)

原題『Childhood's End』


はい、勢いに乗って続けてクラーク。
これはワタクシが中学生の時に読んでドハマりした1冊。
もうボロボロですわ。この後、改装版が1回と新訳が1回出てますが、新訳は重要な登場人物の名前が変わってるので何か嫌w


人類が宇宙への競争に明け暮れ、いよいよその最初の打ち上げが目前となった時、人類はその競争に遅れを取ったことを知る。
しかもその遅れが、数週間数ヶ月のものではなく、幾千年もの遅れであったことを。

突如現れ、全世界の大都市上空に静止した宇宙船。
その異星人は一切姿を見せることなく地球を管理し、すべての争い・病気・貧困は一掃された。
異星人 “オーバーロード” の登場で地球は一つになり平和になった。
しかし、オーバーロードの真の目的は謎のまま。
そしてオーバーロード来訪から50年が過ぎた時、
遂にオーバーロードが地上に降りてその “姿” を明らかにする。



…という第一部のインパクトが強すぎて、
何度も読んでいるのに後半があまり頭に入っていないので改めて読んでみた。

上↑の『都市と星』の項でだいたい言いたいこと言ってしまっているのでアレなんですが、
本作の最大のメッセージは「宇宙は人類の物ではない」「人類には、自分達が思っている程の価値は無い」というところ。
そして、これもクラークの他の多くの作品と重なる要素ですが、
いわゆる “ニュータイプ論” に通ずる内容がより具体的に描写されている作品。
それは “変容 <メタモルフォーゼ>” とも言える、人類の高次元への進化の過渡期。
オーバーロードはその “変容” を促し、待ち、観察し、見届ける為に派遣された中間管理職。
そこにも皮肉というかアイロニーというかセンチメンタリズムがある。
クラークの特徴はこれなんだと思う。
圧倒的な科学根拠でリアルに物質宇宙を描くと同時に、非常に詩的でエモーショナルな切り口で心に訴えかける。
ロマンチックであり、科学的。

人類の存在価値を問う哲学的思索SFの大家。


Red13指定 必読図書










Posted at 2020/06/29 13:00:14 | コメント(0) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2020年05月31日 イイね!

5月の読書

5月の読書コロナ的なアレのソレで皆様いかがお過ごしでしたでしょうか。
一応、行動制限解除な事になってますが、どうなることやら…

ワタクシは全く変化無くふつーにいつも通り仕事してましたし、
なんやかんや主に夜中にあっちゃこっちゃ隠密行動しておりましたが、
やっぱそれでも日常生活にも遊びにも色々影響が出て難儀しました。

ゆーて、これで終わりだとは思ってないし思ってはいけない。
いきなり即全開では事故りますやん。
ジワーっとパーシャルで様子見ていかないとねぇ。















 ハーラン・コーベン 『偽りの銃弾』 (2016)

原題『FOOL ME ONCE』


元特殊部隊ヘリパイロットでイラク派遣経験有りのマヤ
その時のある作戦で民間人を殺してしまい、現在もPTSDに悩まされている。
その作戦行動の映像が内部告発サイトで暴露され、マヤは一時非難を浴びて “時の人” になった。

そんな時に、目の前で夫ジョーを射殺される。
そして4ヶ月前のイラク派兵中にマヤの姉、クレアも殺されていた。

夫の葬儀後、幼い娘の監視用に設置した隠しカメラに、死んだハズの夫が映っていた。
夫と姉を殺した銃が同一と判明。
夫の死亡証明書の手配が遅れているとの理由で、遺言書の開封が延期される。
夫ジョーは本当は生きているのでは?という疑念が生じる。夫の実家もなにやら胡散臭くて怪しい。
マヤは自分を尾行しているクルマがいることに気付く。
姉クレアは殺される前の数ヶ月間、ストリップクラブに頻繁に電話していた事がわかる。



とまぁ…よくぞこんなに大量のギミックを詰め込んだものだと思うが、まだこれでも話の半分くらい。
多層構成というか、剥いても剥いてもまだ謎が出てくる。
それを550頁程で纏めてくる手腕は確かに巧い。
敵だと思っていた者が味方になり、身内が信用できなくなり、読み手すら騙してくる。
ハイテンポでジェットコースター的に目まぐるしく話が動くのに、ちゃんと纏まって締まるのは凄い。
が、なんとなくやっぱりどこか映画的というか、外連味というか、「凄いの書いたったで」的な著者のドヤ感がチラ見えするw

ウィキリークスのような内部告発サイトが物語の重要な小道具になっている辺り、時世に乗っているが、
…2歳児がそんなに喋ったり動いたりするか…?というツッコミ心が終始消えなかった。










 マリー・ルー 『レジェンド 伝説の闘士ジューン&デイ (2011)

原題『LEGEND』


古本屋でなんとなく手にとってジャケ買いした一冊。
久しぶりにファンタジー系読みたかったし。
(と言っても、別に魔法も竜も出て来ませんがw)


異常気象による洪水で地形が大きく変わった近未来のアメリカ。
カリフォルニアを中心とする共和国<リパブリック>は、エレクターと呼ばれる独裁指導者が軍政を敷き、東の<コロニー>と敵対する。
政府や軍関係者は裕福な暮らしを送る一方、スラムでは疫病が蔓延し、軍による住民の隔離も日常的な光景。

全ての国民は10歳になると “審査” と呼ばれるテストを受け、そのスコアによってその後の人生がほぼ決定する。
その審査で1500点満点を取り、軍のエリートとして歩み始めた天才少女ジューンと、
1000点以下の落第で強制労働所送りになり、そこから脱走してきてコソドロとして生きる少年デイ
追うもの追われるものとして出会った2人は、次第にお互いの中の “自分には無いもの” に惹かれていくが…



ディストピア世界を舞台にしたティーンズのピュアな恋愛ラノベ、とでも言うか。
あまり難しい事は気にせず気楽にサクッと読めるやつ。
逆に細かいツッコミを入れだすと楽しめなくなるやつ←


(著者も認めているが)影響を受けているというのか、敢えてのオマージュなのか、モロにジョージ・オーウェルの『1984』を彷彿とさせるし、
著者自身が幼少期に天安門事件をその目で見た事(マリー・ルーというのはペンネームなのかアメリカ国籍での名なのか、コピーライトにはXiwei Luとある)も本作の世界観の土台になっているのだろう。
前半はそれほどでもないが、後半、物語の核心に迫ってくるとなかなかのディストピアっぷりである。

そういう意味では、只の “ティーンズ向けラノベ” という枠に収めて捉えるのは勿体ない作品。
それでいて、2人の無垢な恋模様は実に清々しく、
爽やかな恋愛をメインに据える事で、センシティブなテーマで作品全体が重くなりすぎないように上手くバランスを取った巧みさとも取れる。

物語としてはまだ序章が終わった程度で、続刊があるそうなので探してみようと思う。









 ジャン=クリストフ・グランジェ 『クリムゾン・リバー』 (1998)

原題『Les Rivières pourpres』


2000年に映画化されたのでご記憶の方もおられるかもしれませんが、
基本、映画見ない&血が出るのは尚更w なワタクシはそんなことはツユ知らず。
「フランスミステリ史に輝く金字塔」という大袈裟な謳い文句に眉唾感はありつつ、確かに文学作品って意外とお国柄・特色があるので、たまにはちょっと毛色の違う “おフランス” もいってみようかと。

んが、読んでみて素直にこれは確かに素晴らしい作品だし、確かにフランス的だと思う。


かつてパリの花形刑事だったピエール・ニエマンス警視正。輝かしい功績も多い一方、激昂すると見境を無くし暴力に走ってしまう性格ゆえ、今は殺人捜査の一線からは外されていた。
ふいに上司から呼び出されたニエマンスは、奇妙な単独任務へ向かうことに。
ゲルノンという小さな大学町で若い男性の死体が発見された。
全裸で胎児の格好をして岩壁に押し込まれており、身体中に拷問の痕があり、両目をえぐられていた。

一方、ゲルノンから300kmほど離れたサルザックでは、小学校への泥棒と地下納骨堂への墓荒らしが同じ晩に起こった。
捜査にあたったのは、孤児院あがりの元不良少年、ドレッドヘアのアラブ2世でおよそ警官に見えないカリム・アブドゥフ警部
かつては自動車盗で生計を立てていたが、大学、兵役を経て、優秀な成績で警察学校を卒業。将来有望視されていたが、上司に逆らった為に地方へ飛ばされた。



この一癖ある警官2人を主人公として、彼らの視点で交互に事件が追われる。
初っ端からなかなかインパクトのある猟奇的な死体が出てくるのだが、それでいてどこか耽美的。死体の置かれ方(発見される “見え方” )も象徴的で芸術的。
作品全体に退廃的な空気も漂いつつ(これらを一言で表すのが文学用語で言うところの “ノワール” か)、背景にはアカデミックな知識も多分に散りばめられている。

謎が多く、しかもそれらが幾重にも折り重なって編み込まれた緻密なプロット。
かといって、わざと読者の裏をかこうと奇を衒うような事も無く(今月の1冊目ではそれが感じられた)。
ぶっちゃけ、半分ほど読んだ辺りで犯人の予想はついてしまうのだが、動機や背景の謎は依然残るのでグイグイ読み進めてしまう。また、犯人がその人物だとするとまた新たな疑問も出てくる。正にストーリーテリングの才。
被害者が実は罪人で、復讐に走る犯人に同情するシナリオや、
謎を追うのは警官でも、組織としての警察が事件を解決するワケではなかったり、
やるせない物悲しさを残す幕切れ等、そういう所がフランス的な部分なのかもしれない。


Red13指定 必読図書










 エリオット・チェイズ 『天使は黒い翼を持つ』 (1953)

原題『Black Wings Has My Angel』


50年代。WW2の戦勝からベトナム戦争の辛酸までの間、ある意味 “アメリカ黄金時代” とも言える、最後の牧歌的時代かもしれない?
「完璧な強盗小説」という謳い文句は、さてさてどうなのか。


ルイジアナ州の掘削リグで石油掘りをしていた〈俺〉は、ある町の小さなホテルで娼婦を呼んだ。
やってきたのは田舎町には不似合いな、とびきりのイイ女だった。
三日後にホテルを出た時、女と俺は一緒にコンバーチブルに乗り、コロラドを目指した。
最初は南へ向かう途中、早い段階で女は捨てるつもりだった。
だが「悪い金なんてない」と言い、金への執着やバイタリティを感じさせる女に可能性を感じた。
俺には計画があった。
共に脱獄を企て、失敗して命を落とした男が獄中で言っていた強盗計画が。



犯罪の企画・準備・実行・逃走を犯罪者視点で描くケイパー小説であり、クルマで旅するロードノベルの要素も大きい。
そして意外と、強盗シーンそのものの描写は淡白で、
終始変化していく〈俺〉と〈女〉の関係性、心理面、金を得る前と得た後の人の変化等の描写に重きが置かれている。

〈俺〉が最初、女を捨てるつもりでいたように、
〈女〉も最初は男を利用するつもりだった。

紙幣を縫い込んだ下着を穿いて逃げようとしたり、他の男のクルマに乗っていったり、捕まえて殴り合いをした後に愛し合ったり。
エネルギー溢れる時代なんやなぁと思う(笑)。
腹の探り合いをしていた2人が “計画” の為に協力して新婚夫婦の振りをし、次第に奇妙な絆で結ばれる。
しかし、次第に2人は逃亡のストレスから強迫観念に呑み込まれ、心に開いた闇の穴に落ちていき…

終盤、〈俺〉の精神が不安定になっているシーンで、
改行無しで長々と一息で綴る心理描写が、〈俺〉の切迫感・焦燥感を上手く表現している。


しかし、一冊前を読み終えて、これの冒頭数ページを読んだ時に
「あー、この雑さがアメリカやなぁw」と思ったww




Posted at 2020/05/31 02:22:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2020年04月30日 イイね!

4月の読書

4月の読書スティーヴン・ハンターの代名詞、 “スワガー・サーガ” の初期4部作と言われている物を古本で集めて来たので、
1ヶ月で4作一気読みしてやろうと思ったものの…
…4作と言っても7冊ありまして…w
マジでギリギリ今日の夕方読み終えたという。( ̄▽ ̄;)
しかも1ヶ月と言いつつ、先月の20日くらいからフライングで始めてたりした。










 スティーヴン・ハンター 『極大射程』 (1993)

原題『Point of Impact』


まずは既に読んでいる1作目のおさらいから。

ヴェトナム戦争に従軍経験のある元・海兵隊スナイパー、ボブ・リー・スワガーが、謎の組織の仕掛けた陰謀に嵌まり、大統領暗殺未遂犯として追われる。

改めて読んでみると「こんなに色んな要素を詰め込んであったのか」と驚く。
謎解き要素の伏線の多さや、答えに至るまでの二転三転の道筋、同じ物事を別のキャラ視点から見たときの描写の巧みさ。
最後のタネ明かしをわかって読むと、途中のボブの言動の意味がよくわかるし、尚更Coolなキャラだと思う。
何度も言ってますが、スティーヴン・ハンターはホンマ頭良いと思う。面白い。マジで。

元の感想文はこちら

『全てはここから始まった』


Red13指定 必読図書










 『ダーティホワイトボーイズ』 (1994)

原題『dirty white boys』


↑の『極大射程』の解説で、初期4部作の2作目として挙げられていた本作だが、コレを読んだだけではボブ・スワガーとの関係性はどこにも無い。
本当にこれがサーガの一部なの?と思う。
が。
次作『ブラックライト』で一気に話が繋がっていくという。


オクラホマ州マカレスター重犯罪者刑務所に収監されていた終身囚ラマー・パイは、シャワールームで黒人受刑者といざこざになり相手を殴り殺す。黒人たちの報復を恐れたラマーは看守を脅し、子分2人を連れて脱獄する。
迷い無く邪魔者を殺して進む、生まれながらの悪の化身ともいうべきラマーとその一行は、銃を手にいれ車を奪い店を襲い、警察を嘲笑うかのように姿をくらまし、爆走し破壊し続ける。



ダークヒーロー、ラマー・パイ
そのいとこのオーデル・パイと、元美術教師のリチャードの3人の囚人が、大胆さと狡猾さを併せた清々しいまでの “悪の華” を咲かせるのに対し、
それを追う警察官バド・ピューティは、不倫の泥沼にハマり、嘘で塗り固めた日々を過ごす。
この大袈裟なくらいわかりやすい対比が、ドラマにリズムをつけていて良い。
カッコいい悪役と、惨めな正義。

また、ラマーの精神的アイコンである “ライオン” を、
画家リチャードの視線から描く手法が素晴らしい。
ライオンにやたら執着するラマー。
自己のイメージを重ねているのだろうが、それをリチャードに絵にするように命じる。
ラマーにとってはそのイメージが非常に意味のある重要な事なのだ。
作中では遂にラマーの意図は語られずに終わるが、
そこをあれこれ想像する余地を読者に残している辺り(3作目を読んだ後にもまたそれを思い出させる辺り)がまた上手いと思う。

銃器に対するマニアックでリアルな拘りも素晴らしい。
「このモデルは弾倉が何発で、それをこのシーンで何発撃っているから残りの弾は何発」というような事をちゃんと計算してある。
当然と言えば当然なのだが、そういう “当たり前の事を当たり前にやる” のが物語の面白さを作る。

シリーズ通して、銃は単なる小道具ではなく
銃にまつわる背景・信念・哲学・美学やアメリカ銃社会、それを取り囲む産業の明暗も込められている。
日本人にはピンと来ない話もあるが、ある種、車のエンスー趣味の世界と通ずるモノもある。
敢えてそれを選ぶ理由・根拠や拘り、道具を持て余す素人や、逆にプロフェッショナルが使う事でより活きる道具。
結局は「人も道具も使い方」という所に行き着くのだが。










 『ブラックライト』 (1996)

原題『BLACK LIGHT』


起承転結の見事な “転” の内容になっているepisode3。

1作目から4年後。隠遁生活を送るボブの元に、
2作目の不倫警官バドの息子、ラスが訪ねてくる。
(ちなみに、ここでボブには4歳になる娘ができている。この娘が後にスワガー・サーガの3世代目の主人公を務めることになる)
これまで何人もの人間がボブのもとを訪ね、彼の知っている事実を公表して本にしたいと言ってきたが、ラスは違った。
ラスは、ボブの父、アール・スワガーの事を書きたいと言う。


物語の前半は、
ボブの父、アール・スワガー
ラマーの父、ジミー・パイが、互いに命を落とすことになった銃撃戦に至るまでの数日間にスポットが当たる。
アールがかつて従軍した硫黄島で戦死した戦友の息子、ジミー・パイ。
アールが後見人にも似た立場で面倒を見ていたジミー。
なぜその2人が互いに殺し合う事になったのか。

アールの最後の数日と、それを追うボブとラス。
過去と現在が交互に展開される。
そしてボブは、父アールの検死結果に不審な点が有ることに気付く。
弾痕の直径が異なる傷がある、と。
ジミーとの銃撃戦で受けた傷ではアールは死んでいなかった。
別の銃から放たれた弾丸で死んだのだ、と。

約40年前の過去を探り、アールの死の真相を暴こうとするボブとラス。
しかし、それが “不都合な真実” である者が2人の命を狙う。



と、
なかなか人物関係が複雑で、更に時間軸が行ったり来たりするので前半はちょっと頁をめくる手が重い。
が、後半に入ると一気に面白くなる。

序盤から散りばめられている情報を一つ一つ頭の片隅に留めておくと、終盤の興奮度合いがエライことにw
最後に投下される特大の爆弾も、序盤にそれとなく匂わせるくだりはあるものの、実に微かなさりげなさに埋められているので、「ん? なんかあるような気がするけど…?…まぁいいや」といった程度で、その辺りが実に上手いと思う。

とにもかくにも。
ここまで読み終えると、やはりこれは一連の物語だし、
“家族” “父と息子” の話になっているとわかる。
ただのシリーズ物ではなく「サーガ」と呼ばれる所以かなと。










 『狩りのとき』 (1998)

原題『TIME TO HUNT』


起承転結の “結” 。

まず前半は、反戦活動真っ盛りの1971年のD.C.から始まり、
後にヴェトナムでボブのスポッター(監的手:スナイパーの補助、支援を行う)を務めることになるダニー・フェンが巻き込まれた事件が描かれる。
兵役が残り1年程となり、もはや “ナム” へ送られる事は無いはずだったダニーが、新婚ホヤホヤだったダニーがなぜ “ナム送り” になったのか。

そしてヴェトナムで巡りあったボブとのチームプレー。
1作目で少しだけ触れられた “アンロク谷の戦い” が前半のハイライト。
壊滅目前の味方前線基地に迫る敵の大隊をたった2人で足止めし、鬼神のごとき戦果をあげた。

しかし帰還予定日の前日に、敵スナイパーの銃弾からボブを庇おうとして還らぬ人となったダニー。
彼を仕留めた東側スナイパーの視点からも物語は語られる。


と、ここまでは既に1作目で与えられている情報が主であり、物語が動き出すのは下巻に入ってから。

そして現在。
スワガー一家がスナイパーの襲撃を受けた。
当初、ボブは自分が狙われたと思い込んでいたが、
実は狙われたのはダニーの未亡人である妻ジュリィではないのかと気付く。
そしてヴェトナムでも敵スナイパーは、スナイパーである自分ではなくスポッターのダニーを狙っていたのではないかと。
陰謀の発端は71年のD.C.。
ボブは亡き戦友と妻子への想いを胸にまたもや “狩りの時” に身を投じる。



実に巧みなプロットで唸らせてくれる。
ただ、著者は1作目を書いた時点では特に連作にするつもりはなかったのか、幾つか辻褄が合わない部分が出てくる。
まぁ、そこは著者も素直に認めているし、アレはアレ、コレはコレと割り切って楽しむべし。
だし、そんな細かいツッコミなんかどうでも良くなるくらい「良く出来た物語」である。

“アンロク谷” の戦闘シーンの胸熱感(笑)は数あるタクティカルアクション小説の中でもトップクラスと言える。
スナイパーとスポッターの役割分担や信頼関係、戦術面の技術的な描写まで臨場感抜群。
これこそ “ボブ・リー・スワガーの伝説” を象徴する名シーン。

しかし、その派手なアクションのみならず、
本作では終始スパイ小説的な要素も色濃い。
潜入スパイを炙り出す囮捜査や、ソ連崩壊後も実質的に続く東西冷戦。


スワガー・サーガはまだまだ続くが、
とりあえずここまで一区切りを読んでみて、
マーク・グリーニーの『グレイマン』シリーズも当然スワガーから影響は受けているんだろうけど、
グレイマンはやはり色んな意味で “21世紀のエージェントヒーロー” なんだなと思う。
スワガーはあくまで20世紀のヒーロー。
本作で既に50歳のボブが今後どこまで時代に食らい付いていくのか気になる(笑)。




Posted at 2020/04/30 21:00:44 | コメント(0) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記

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