
3夜連続ブログアップw
"グレイマン祭り" だった
先月、
5→1→2→3→4と読んだ所で月末になり、
その後もう一回5を読み始め、それが終わったのが今月10日くらいでした。
なので、今月実際読んでる量は4冊なのですが、
新たにカウントするのは2冊のみです。(;´∀`)
レイ・ブラッドベリ 『10月はたそがれの国』 (1955)
原題『The October Country』
8月に『華氏451度』を読んで、この著者の本質は短編だなと感じたので、
いくつかある短編集の中から、なんとなく一番好みっぽい雰囲気のを読んでみた。
「10月」という本を10月に読む、のは、まぁ半分狙いました(笑)。
一番最初のデビュー短編集に、新作5編を追加した新装版、とのこと。
実に19編もの物語が入っています。一番短いのだと10頁程度。
なので、サクサク読めるかと思いきや…
どの作品も、なにかどこか不思議な、少し不気味な、ダークファンタジー的な物語ばかりで、
まず「この物語はどういう世界観設定なんだ?」と読み探っていく作業が19回発生します(笑)。
我々が生きる現実世界を舞台にした物もあり、完全にファンタジーな物もあり、ほんの少しだけ何かが変な物もあり。
全ての物語に共通する=この1冊のテーマは
「死」 です。
いろんな形で「死」を取り扱う19の物語。
「なんだかなぁ…?」な話もあり、「おおぉ!」となる話もあり。
ワタクシが気に入った話は5つくらい有りましたが、人によって結構変わってくるかもしれませんね。
ただ、先にも述べたように、全体的に少し "薄気味悪い" 世界観が多いです。
ホラーではなく、怪奇系。或いは、ちょっと病んでる系。
でも、『みずうみ』という物語は是非読んで欲しいです。
この本の帯に書いてある文句をそのまま引用すると
『みずうみ』は世界で一番短くて残酷で美しい物語
このたった10頁の物語一つを読むためだけに、この短編集を買う価値があると思う。
ウラジーミル・ナボコフ 『ロリータ』 (1955)
原題『LOLITA』
「ロリコン」「ゴスロリ」「ロリキャラ」
すっかり日本語として定着している
「ロリ」という言葉。
その意味する所ももはや説明するまでも無いでしょう。
でも、その語源であり元ネタであるこの『ロリータ』という小説を理解している人が、いったいどれだけいるのだろう?
今、世に溢れている「ロリ」という概念と、元々の『ロリータ』は同じなのか?違うのか?
どうもどこかでネジ曲がっているような気もする。
…ならば、これは一度 "オリジナル" を知るべきだな、と思って読んでみた次第。
以前『ファウスト』や『ドラキュラ』を読んだ動機も同じ。
"元" を知らずに、知ったか顔でそれを語るのは恥ずかしいと思うので。
まず。
この『ロリータ』という作品に対して、多くの人が
「エロいんちゃうん?w」という先入観を持っていると思います(笑)。
確かに、
"再婚相手の連れ子に手を出す義父" という構図だけなら、もう立派に完璧にエロ小説ですが、
残念ながら "そういうの" を期待して読むとガッカリするどころか逆ギレするかもしれませんw
そういう描写は無くは無いけど、序盤にちょっと出てくる程度。
主人公がロリータと初めて "致す" 場面は様々な意味で重要なシーンですが、
そのシーンの描写は、非常に芸術性の高い崇高な比喩表現のオンパレードになっていて、普通に読んだら100%ワケワカメですw
じゃあ、この小説はいったい何なのか?
というと、これが非常に難しい。
単一のテーマではない、というか。
いや、確かに、"少女性愛" という大きな主題はあるのですが、その幹から伸びている枝葉がそれぞれ非常に熟成されています。
思春期少女の発達心理学的な要素もあり、
20世紀中期アメリカの生活様式を記した風俗小説でもあり、
アメリカ各地を旅して回るロードノベルでもあり、
非常に難解な推理小説でもあり、
多くの古典文献・小説・演劇からの引用を探してニヤニヤする教養作品でもあり。
様々な事象、問題、精神活動、行動表現が、ハイレベルでバランスされている、非常に ”濃度の濃い文学作品” です。
一度読んだだけでは半分くらいしか理解できない。
普通はこういった文庫にはよくある、カバーの返しや巻頭についている「登場人物一覧」が
無いというのも、多分、著者の意図によるんではないかと思う。
自分でその「登場人物一覧」や「地名」なんかをメモしながら読まないと、色んな事を見落とします。
一人の少女の人生を壊した男の回想文かもしれないし、
父と娘の親子愛の物語、と読むこともできるかもしれない。
自分と相手の二人だけの秘密を共有する共犯者として、自分が相手に対して一番影響力の大きい存在だと思っていても、
多感な少女の世界は決してそんな狭い中で完結するものではなく。
親がどれだけ子を管理しようとして目を光らせ、時に無理やり従わせたとしても、
子の世界の広がりの前ではそんな事は全く無意味なのだと、何の抑止力にもならないのだと、
そして、親のその盲目さが、時に、守れる筈の子を守れなくなるのだと。
己が加害者であるという意識を持ちすぎて、その罪とは別次元の所で相手が助けを求めているのに、そのサインに気付かない。
疑心暗鬼は百害あって一利なしですね。
…というような事を言うとネタバレになるかもしれませんけど。
でも、ほら、深いでしょ? 全然エロ小説じゃないでしょ?
ハッピーエンドでも、バッドエンドでもないし。
読後は、結構なやるせなさと、それでも一定の報われた感と、センチメンタリズムとともに、
「あの時こうしていればもっとマシな流れになったのに。でも、これも自分が歩んできた人生か…」というような、ちょっとした悟りの世界が垣間見えるかもしれません。
そして、読み終わった後でもう一度冒頭を読むと、…また一つちょっと残酷な仕掛けに気付く。
最後に、本作品で全編通して出てくる一つの概念に
「ニンフェット」というのがありまして。
これがいわゆる、現代語の「ロリ」に繋がったと思われます。
「少女の姿をした精霊、妖精。或いは悪魔、妖魔。」を意味する「ニンフ」からの造語ですが、作中では
「9歳から14歳までの範囲で、その2倍も何倍も年上の相手(異性)に対して、ニンフ(すなわち悪魔)の本性を現すような乙女が発生する」とし、それを「ニンフェット」と呼ぶ。
ポイントは、単純に "可愛い女の子" = "ニンフェット" では無いところ。
この概念、個人的にけっこー頷けるwww
思い当たる人物が何人か出てくるわwww
あ、もうひとつ解説すれば、
「LOLITA」という ”Lを重ねる名前" も
「
LILITH(リリス)」から着想しているそうで、
こういう所でも、この作品の構成要素が細部まで奥深いことが伺えるかと思います。