
久々の月5冊。
お盆休み約1週間、全く本読んで無かったのに。(°∀°)
過去1年色々読んできた中で、そろそろ再読したいなぁと思ってるのが何冊かあるので
来月あたりから再読を挟んでいくかも。
色々経験してきた後で今一度立ち戻ってみると、また見え方が違うことってあるじゃない。(* -`ω-)
9月度はジェントリーの新作が控えているので、
ここでグレイマンシリーズ一挙読み返しってのもアリか。
ジョン・ル・カレ 『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』 (1974)
『TINKER, TAILOR, SOLDIER, SPY』
先月の『寒い国から帰ってきたスパイ』に続いて、ジョン・ル・カレの代表作、にして最高傑作の呼び声も高い一冊。
イギリス情報部〈サーカス〉の中枢にソ連のスパイがいる。
現役を退いた元情報部員スマイリーは、スパイの探索の為に密かに呼び戻された。
膨大な記録を調べ、かつての同僚たちからも証言を集めた結果、幹部5人の中の誰かがスパイだと突き止める。
その5人は役職ごとにティンカー(鍵屋)、テイラー(仕立屋)、ソルジャー(兵士)、プアマン(貧者)、ベガーマン(乞食)という暗号名を持っていた。
…という話。
"元・本職" の著者ならではの込み入った描写が続いて、確かに大作・名作ではあると思うけど。
…うーん…
な〜んか読むのが大変なんですよねー…(; -´ω`-)
面白いっちゃ面白いんだけど、なんか
重いというか、難しいというのか、
でもそーいうのともちょっと違うような…なんだろうね。
場面のイメージがあまり変わらないというのがあるかもしれない。
頭の中で映像化した時に全体的にトーンが暗い。お色気要素も無いし(笑)。
ページをめくる手に躍動感が宿らない(笑)。
文学的にケチをつけるわけではなくて、
この著者の作風が僕にはちょっと合わないという認識、発見。(;´ω`)
3部作の1作目ですが、続きは読まないにしよう。
レイモンド・クーリー 『テンプル騎士団の古文書』 (2005)
原題『The Last Templar』
著者はイギリスとアメリカでテレビドラマ等を手がける脚本家。
なので、仕事柄「絵的な見え方」を常に意識しているであろう事から、
さっき述べた "頭の中で映像化した時のイメージ" が非常に鮮やか。
「ヴァチカンの至宝展」が開催されるニューヨークのメトロポリタン美術館。
そこへ、テンプル騎士団の甲冑とマントを纏い、馬に乗った4人の騎士が乱入。
警備員を剣で斬り殺し、館内で破壊の限りを尽くし、展示物の一部を強奪して逃走。
…という冒頭のシーンからして、さすが "掴み" が凄い。
日本では多少馴染みが薄いが、アチラでは陰謀モノの題材として "ナチス" と双璧といわれる "テンプル騎士団" ネタ。
知名度は高いもののその実態には謎が多い、という所が「解釈の余地=フィクションの余地」に富んでいるということでしょうね。
個人的にはテンプル騎士団というと、
『アサシンクリード』シリーズの悪役として馴染み深い。
『アサシンクリード』でのテンプル騎士団は、中世から現代に至る今でも世界を裏で操る巨大な秘密結社という設定でしたが、
本作で描かれるテンプル騎士団も
「世界の在り方を転覆させうる切り札」を持ち、それを公表されては都合が悪いヴァチカン側がそれを闇に葬ろうとし続ける歴史、という一面を描きます。
本作のメインテーマは一言で言えば
「せやから結局、宗教ってなんやねん」っていうトコ(笑)。
特にキリスト教の欺瞞にザクザクと切り込んでいく辺りはなかなか好印象。
「教会はもはや全く人々の支えとなっていないのです。
それどころか戦争や虐殺の言い訳に利用されている。」
「キリスト教、ユダヤ教、イスラム教。信徒たちは自分たちの聖典に書かれている事を守るためなら命懸けで戦う。
だがその根拠は何だ?何千年も昔の神話や伝説か?
滑稽な戯言を寄せ集めたおとぎ話によって、いまだに人の命が支配されている。」
「キリスト教もユダヤ教もイスラム教も、共通したルーツはアブラハムだ。
アブラハムがその3つの宗教の父であり、唯一神信仰の祖である事をわかっているか?
この3つの宗教は同じ神=アブラハムを信仰していると主張するが、
神の言葉を巡って誰が一番正しい預言者かなどというつまらぬ争いを始め、それは今も続いている。」
ほんまそれなwww
本作で核になる部分は、
・中世当時のテンプル騎士団が、それら3つの宗教の融和を目指していた
・「イエスは神の子などではなく一人の哲学者であった」という "証拠" をテンプル騎士団が隠した
というポイントです。
そのどちらもがヴァチカンにとっては都合の悪い事なワケで。
でもやっぱり著者がキリスト文化圏の人だからか、ストーリー終盤のまとめ方は個人的には不満。
もっとザックリ切り込んで欲しかったけど、
…まぁ、そこそこ知名度&社会的地位のある人物がそこまで言っちゃうと色々と面倒な事になるんだろうから、しゃーない部分かもしれんけどね。
それこそがテーマに対する解答になっているという皮肉。
でも読んでいてヒジョーに楽しかったしワクワクした。
続編があるようなのでそっちも読んでみようと思う。
アンドレアス・グルーバー 『夏を殺す少女』 (2009)
原題『RACHESOMMER』
原題はドイツ語で「復讐の夏」。
本にしろ映画にしろ、海外モノの邦題って "残念" なのが圧倒的に多いけど、
本作は完全に邦題の勝ち! しかもこの表紙イラストがまた良い!(;´Д`)ハァハァ
正直白状しますと、この邦題と表紙絵でジャケ買いしたようなモン。
でも「これはアタリだ!」という妙な確信を持って買った。
そして実際、アタリでした。(°∀°)
上↑の『テンプル騎士団』もかなり面白く、けっこー(*´Д`)ハァハァしながら読んでましたが、
この『夏を殺す少女』は、それが霞むくらいの大当たりでした。
酔った元小児科医がマンホールに嵌って死亡。市会議員が山道を運転中にエアバッグが誤作動し死亡。どちらもつまらない案件のハズだった。
事故の現場に、一人の少女の姿が無ければ。片方の案件を担当していた先輩弁護士が謎の死を遂げなければ。
一見無関係な出来事の奥に潜むただならぬ気配。ウィーンの若手弁護士エヴェリーンは次第に事件に深入りしていく。
一方ライプツィヒの刑事ヴァルターは病院での少女の不審死を調べていた。
オーストリアの弁護士とドイツの刑事の軌跡が出合う時、事件が恐るべき姿を現し始める。
「中欧・東欧」「少女」という属性が合わさると、みょーにエロチシズムを感じるのはワタクシだけでしょうか?
いや、そんなことは無いはずだ!←
………という期待を裏切らないプロローグですよww
本作の面白さをネタバレしないように説明するのはなかなか難しいんですが…
とある法則による対象者を、 "少女" が事故死を装って殺していく、一方
とある症状で入院している同年代の少年少女達が、これまた何者かに次々と殺されていく。
とまぁー…やたら人が死にます(爆)。
が、その裏に隠された本作のメインテーマは、恐らく "事実を元にした" 犯罪であり社会問題。
そうこう言っている "今" にも行われているであろう、社会の闇。
フィクションでありながらもノンフィクションのメッセージ性も含んだ、社会派の内容と言えます。
が、ミステリー小説としての完成度も非常に高いし、これまた物語の舞台が広範囲に渡り、ちょっとしたドイツ観光の気分も味わえる。
社会の暗部を浮き彫りにする問題提起のシリアスさと、小説としての面白さが高次元でバランスされていて、
予想以上の傑作、"我が心の書棚" に収まる一冊になりました。
レイ・ブラッドベリ 『華氏451度』 (1953)
『FAHRENHEIT 451』
華氏451℉ = 摂氏(約)233℃
紙が自然発火する温度と云われる。
書物が忌むべき禁制品となった未来のアメリカが舞台。
書物は著者それぞれの主義主張が千差万別であり、「人々を惑わす」として禁書になった。
家々には、壁一面を覆うテレビ画面が何枚も設置された "ラウンジ" と呼ばれる部屋があり、
政府によって無意味な娯楽・当たり障りの無いニュース・仮想の家族が垂れ流される。
用意される娯楽は、エアカーでの暴走・スクラップ場での破壊解体・そして見せしめの焚書ショー。
書物を隠し持っている者は、通報され、昇火士が駆けつけ、全ての書物を家ごと焼き払う。
主人公は、陰徳された書物を焼き尽くす公務員 "昇火士" 。
ラウンジの放送で国民の思考を奪い、焚書で過去の知恵も葬る。
人々は何も考えず、与えられた情報と娯楽だけで満たされ、ただただ楽な方向へと流されていく。
50年以上前の作品ですが、…2016年の今もコレと似たようなもんぢゃね?( ゚д゚)
ポケGO騒動とかマジで同じ。この世界は確実にディストピアへ近づいている。
自分の目で見、耳で聞き、肌で感じ、頭で考え、自分の言葉で話す。
それがなにより重要であり、それが無い人間は人間ではない。
と、強烈に印象づける作品。
今アメリカではこの小説が教科書に載ってるそうです。
…という内容のメッセージ性も勿論重要なのですが、
このレイ・ブラッドベリ。
アメリカを代表する作家の一人で、今回初めて読みましたが…
文章が非常に詩的。ポエティック。美しい。
英語→日本語に訳してあるコレでそう感じるので、原文で読めたらさぞ美しい文章なんだろうと思います。
元々短編だったネタを長編化した作品ということですが、いまいち膨らまし切れていない印象もあり。
序盤に登場したキーキャラクターが途中で居なくなったまま結局最後まで回収されず、とか。
上司の昇火隊長が "禁忌" を犯して本の知恵を蓄えている素振りを見せるが、あまり掘り下げられず、とか。
物語としては少しツメが甘い部分があるものの、
内包したメッセージ性が非常に強烈で印象に残る作品。
一家に一冊必読図書かな。子供に読ませたい本。