遂にというべきか、とうとうというべきか、日産自動車の会長にして三菱自動車工業の会長でもあるカルロス・ゴーン容疑者と日産自動車代表取締役のグレッグ(グレゴリー)・ケリー容疑者が逮捕されました。
罪状は
「役員報酬50億円の過少申告」。
噛み砕いて言うと、平成23年6月~27年6月までの計5回にわたり、22~26年度のゴーン容疑者の報酬が計約99億9800万円だったにもかかわらず、計約49億8700万円と記載した偽りの有価証券報告書を提出したということ。
また、ゴーン容疑者が日産の資金を私的に支出するなど複数の重大な不正行為も確認したといい、こうした不正にケリー容疑者が深く関与していたことも分かっているそうです。
この一連の流れを受け、日産自動車は記者会見を開き、両容疑者を解雇の方向で動いているとのことで、日産やルノーのみならず、業界全体を激震させる事態にまで発展しているのは既報の通り。
ここで、ゴーン容疑者について簡単に触れておく必要があります。
1954年、ブラジル生まれ。
1978年、タイヤメーカーのミシュランに入社し、1990年に36歳で北米ミシュランの会長に抜擢。
1996年にルノー上席副社長に就任。
1999年6月、45歳で日産の最高執行責任者(COO)に就任。
2001年6月から社長兼最高経営責任者(CEO)となってから「リバイバルプラン」を策定し、大幅なリストラを断行、わずか1年で大幅赤字から黒字へ「V字回復」を成し遂げた。
その後、三菱自動車との提携を主導し、2016年12月に同社の会長に就いた。
2017年4月に日産の社長を西川氏に譲り、代表権のある会長となった。
・・・と、40歳前から出世街道をひた走り、ミシュランでは「コストカッター」の異名まで与えられた敏腕経営の持ち主だったわけですが、やがてルノーにヘッドハンティングされ、「業績回復請負人」として日産に送りこまれたことは、比較的記憶に新しいところでございます。
で、日産ではそのコストカッターぶりをいかんなく発揮した結果、日産COO就任からわずか3年で黒字化させたことも当時、業界を震撼させました。
その一方で、部品メーカーや工場勤務の人たちが大量に切られたことも事実でして、当時、金策に困っての自殺者が出たほどです。
しかし、世間ではそうしたことはほとんど話題に上らず、ゴーン容疑者の辣腕ぶりばかりがニュースで取り上げられました。
こうしたゴーン容疑者の「痛みを知る改革」はグローベル化へと軸足の中心を置くことになり、「インフィニティ」の分社化や「ダットサン」ブランドの復活などといったグローバル化への加速をし続け、ダイムラーや三菱を抱き込んでまで実現しようとした世界第二位の販売実績を作っていきました。
一方で、お膝元の日本市場はグローバル化の煽りを受け、必要最低限のラインナップで凌ぐ状況にまで陥り、固定の日産ファン以外からは見放され、他社への流出が続いているという悲しい現実がそこにはあります。
現状、
「サニーのような車に乗り換えたいけど、ある?」
「キューブが新しくなれば買い換えたいんだけど」
「マーチはもう旧いから、新しいハッチバックがあれば・・・」
「フィールダーハイブリッドみたいなワゴン、日産にはないの?」
「スイスポやフィットRSに対抗できる車があれば・・・」
「日産のコンパクトなレンタカーを納入したい」
などといった要望すべてをノート1台で実現しようとしているわけですが、流石に無理がありすぎです。
「登録車No.1」などと高らかにアピールしていますが、複数の車種のニーズを1台に集約して売っているわけだから、必然的に台数が増えるのは当たり前な話であり、歪みが生じるのも無理からぬ話な訳です。
また、海外においてインフィニティブランドであるスカイラインやフーガを日産ブランドなのかインフィニティブランドなのかハッキリしないまま日産ディーラーで販売する一方、シーマを日産ブランドで売るという不可解な状況だったりもするわけだし、他社のドル箱的な存在のジャンルに全く挑んでいない現実が何年間も続いている・・・
そうした状況にまで陥っても尚も国内市場において「ノート、セレナ、軽自動車」メインの図式を変えなかった・・・いや、変えられなかった日産もある意味、ゴーンの犠牲者だったのかもしれませんね。
国内ディーラー各社はお客様から吸い上げた意見も含め、日産に幾度となくバリエーションの拡大や他社対抗策の打診をしてきたはずですし、日産も幾度となく耳を傾けてきたはず。
しかし、却下され、拡充しないで浮いたコストがコストカッターの手に渡ったとなれば、非常に由々しき事態です。
この一件で日産自動車(と、三菱自動車工業)を見放すつもりはないし、むしろ、これを転機に「日本企業らしさ」を取り戻してほしいとさえ願うわけですが、そうはいっても直ぐに変われる訳もなく、早くても数年間は我慢のしどころになるかと思います。
きっと、ルノーやダチア、ルノーサムスン、アプトヴァズもそうなるでしょう。
しかし、浄化された時こそ、今まで以上に各ブランドらしさがようやく活きてくるような気がしてならないのです。
何だかんだ有りはするでしょうが、早期にゴーンを追放し、日本企業としての意地を見せてほしいです!
道程は厳しくなるでしょうが、グローバルな要素の加わった今の日産ならきっと出来ると信じています。
Posted at 2018/11/20 07:44:07 | |
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