
2013年に試乗して記憶に残る車を振り返る、今日はテスラ・モデルSです。
7月に試乗しました。
テスラモーターズとはアメリカの電気自動車を専門に製造しているベンチャー企業です。
2008年にロータスベースの「テスラ・ロードスター」を発表しましたが、重い車重と短い航続距離などが災いし、決して評判は良くありませんでした。
その後2009年にフルオリジナルの「モデルS」を発表し、バッテリーなどを改良し、日本でも2014年春に納車開始になる予定です。
カタログスペックは全長4978mm×全幅1964mm×全高1435mm、車重が2108kg。
85kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載する「シグネチャーパフォーマンス」と言うフラッグシップモデルなら、416ps/61.2kgmを発揮し、0-100km/h加速は4.6秒。
満タンに充電すれば最大500kmは巡航できるとのこと。
500kmまでは行かなくても350kmは楽に走行できるそうです。
満タンにするのに電気代が約800円。
それで350km走れると言うことは、1km当たり2円ちょっとの計算です。
レギュラーガソリンの1Lを140円と計算すると、ランニングコストの面では60km/L走れる車と同等と言うことになります。
これはスゴイ!!
駆動輪はリアでバッテリーもリアに積んでありますので、一応RRと言えます。
ディーラーは高級車ディーラーが軒を連ねる青山通りにあります。
つい先日、大阪にもショールームが出来ました。
外観はさほど大きな特徴が無く、シトロエンっぽいフロントマスクとアストンっぽいリアデザインを持つ車で、これが新世代の車とはとても感じられません。
遠目からは日産車のようにも見えます。
電気自動車なのでマフラーが無いのが特徴でしょうか。
しかし内装は他のどの車とも似ていません。
最初に目を奪われるのは、中央部分にドカッと鎮座しているiPadの親分みたいな液晶パネルです。
大きさはipadで2個分とのことでした。
ここにはナビの代わりになるGoogle Mapや、バックカメラモニター、車の走行状況を伝えたり変えたりするモニターなどが表示できます。
と言うよりも、このタッチパネルのモニターですべての車の調節が出来るのです。
車高を上げたり、パノラミックルーフを開ける量を変えたり、オーディオの音質を変えたり、回生ブレーキの効き具合の調整をしたり、ステアリングレスポンスを変えたり、足回りの固さを調整したりと、一般的に想定できる調整ならば何でも出来ると感じました。
質感も高く、削り出しのアルミが近未来的な印象を強く与えます。
メーター類も液晶で視認性が高く美しい。
後部座席も広々としており、体格の良い人でもユッタリと座れます。
特筆すべきは収納スペースで、エンジンが無いためフロントにトランクスペース(「フランク」と呼ぶそうです)があります。
後ろのトランクも広く、後ろ向きにはなりますが、2座の子供用のリアシートを置くことも出来るのです。
つまり乗車可能人数は5+2と言うことになります。
この発想には驚かされました。
車と呼ぶよりもアイデアが詰まった走るPCと呼びたくなります。
昔はこういうのは日本が出していたような気がするのですが…。
キーは車の形をしており、持って近付くとドアノブがせり出して来ます。
右ハンドルの設定もあるそうですが、試乗車は左ハンドルでした。
エンジンスタートボタンを押しても全く何の音もしません。
当たり前と言えば当たり前ですが、慣れないと違和感を感じます。
ギアは無く、ドライブに入れれば発進準備完了です。
クリープの有無さえも選べるのですが、有りの設定にしたので、ブレーキを離すとソロソロとこれまた音も無く発進します。
営業の人が「踏んでみて下さい」と言うのでちょっと踏んだところ、今まで味わったことが無い異次元の加速に包まれます。
0-100km/h加速は4.6秒で、これよりも速い車に乗ったことは何度もありますが、この車は踏んだ瞬間に最大トルクを発揮するので、全くラグが無いのです。
ギアが無いのでシームレスに加速しますし。
ガソリン車の場合アクセルを踏んだ信号を伝達するのに0.85秒掛かりますが、この車の場合は0.25秒だそうですので、それもこの加速感の一因でしょう。
「ヒューン」と言うわずかな音と共に、あっという間に人様に言えない速度まで加速して行く様子は、まさにリニアモーターカー(乗ったことが無いけど)。
試乗でシートに身体がへばり付く感じを久し振りに味わいました。
ブレーキの効きも良く、回生ブレーキの効きを「強」にすればブレーキペダルを踏む必要が無いほどシッカリと減速します。
さらにこの車は乗り心地が素晴らしく良いのです。
エアサスが雲の上の乗り心地を体感させてくれます。
この乗り心地はジャガーかクライスラーの大型サルーンのものです。
それなのに路面の状況はキチンと伝えてくれます。
しかも音が殆ど無いのですから、ショーファーとしても優れています。
余分な音が無いのでスピーカーにもこだわっているそうで、クラシックのCDを流してもらったところ、臨場感溢れるコンサートホールのような音色でした。
パノラミックルーフを開けば解放感はあるし、ステアフィールも潤沢だし、シートの座り心地は良いし、見切りもまあまあだし。
欠点らしい欠点を見付けることが出来ませんでした。
今まで私が抱いていた車の概念を変えるトンデモナイ車です。
日本での発売価格はまだ発表になっていませんが、フラッグシップモデルで1100万円程度ではないかとのことでした。
ランニングコストが極端に安いことと、異次元の加速を味わえること、他の人にエコぶれることを考えれば、かなりのお値打ち価格だと思います。
因みに普通のカタログは紙を使うのでエコではないとの理由で無いそうです。
Webカタログで見て欲しいとのことでした。
この辺りのすました感じもAppleっぽいですね。
一番の懸念材料は充電できるスタンドの少なさと充電時間でしょう。
スタンドは全国で7000ヶ所以上あり、さらに少しずつ増えているそうです。
充電時間は45分掛かりますので、「高速道路で食事をしている間に充電」などの使い方が考えられます。
私のようなエンジン音好きの人間でも、この車の静粛性には感動しました。
いつまでも化石燃料を燃やして走る時代でもないのでしょう。
もう少しインフラ整備が行われたら、私も買う日がきっと来ると思います。
10年後には電気自動車に乗っている自分が想像できました!!