MC Racingの給油方法はピットでガソリン携行缶からの給油である。
なぞの消防士の協力も得て、初給油も無事に済んだ。
(photo by あかげら さん)
そして、いよいよ僕のドライビング順が巡ってきた。
ヘルメットを被り、グローブをはめ、出撃体勢で待つ間、ピットロードを吹き抜ける風が心地よかった。
(photo by あかげら さん)
エンジンを掛け、ギアを1速に入れ、バックを確認して、クラッチを離す。
すぐに2速から3速へ。
ピットロードの速度制限は40km/hだ。
ピットロードがやけに長く感じる。それぞれのピットでは皆、忙しそうに動いている。サインガードエリアのテントがカラフルだった。
コースイン…
慎重に第1コーナーをクリアする。
爆音を響かせ、他チームの車両が傍らを通り過ぎて行く。
しかし、僕に焦りはなかった。
8割くらいの力で、イメージしていたラインをトレースして行く。
僕はモテギのコースを走るのは2回目だった。前回走ったときの記憶はほとんど消え去っていた。
モテギのコースは簡単にいうと、何本ものストレートを急なコーナーで繋ぐというレイアウトになっている。
1周4.8キロメートルもあるのに、どちらかというと単純なコースである。
事前にビデオやコースマップで学習していたので、ラインのイメージはできていた。
しかし、実際に走るとなると前後左右のGが強く、理想していた走りはできなかった。
さらに、左右から圧倒的な速さで追い抜いて行く車両があり、その場その場で走りを組み立てるしかなかった。
マーチンは速さでは他のチームに対抗できないので、低燃費走行で給油回数を減らし、周回を稼ぐ作戦をであった。そのためにエンジン回転数の上限は5000rpmとし、ギアも3・4・5速のみしか使わないという制約を設けていた。
低回転しか使えないので、加速は鈍く、ほとんどのストレートで5速まで入ってしまった。
しかし、車体が軽いためか、ブレーキの効きは大変に良く、コーナーでのブレーキ勝負ではどのクルマにも負けなかった。
つまり、コーナーで追い詰め、ストレートで離されるということの繰り返しだった。
分かっていたことではあるが、ちょっと悲しい。
他のクルマが横に並んでいるときはもう少し上までエンジンを回してしまいたい誘惑にかられることもあったが、自分でも意外なほどに冷静に、いや、むしろ機械的にシフトアップを行っていた。
このように9割方は追い抜かれていたのであるが、ときどき、抜くことができる車両もあった。
他車を追い抜くのは最高に気持ちが良かった。
○○をロックオ~ン!
…抜いたぁ!
通信につい力が入ってしまう。
抜かれようが、抜こうが、マーチンでのドライブは楽しかった。
天気は晴天。時刻は昼に近かった。
車内の温度は体温を遥かに超えていたに違いなかったが、暑さは全く感じなかった。
僕はマーチンを運転する楽しみに没頭していた。
基地からの通信もくだけたものだった。
弁当が届いたぞ~
早く来ないと食っちゃうぞぉ
このまま残り時間全部をひとりで運転していても良い…それくらい気分が乗っていた。
やがてタイマーが終りの時間を告げる。
ピットからも帰還指令が出た。
メインストレートを全力で駆け抜け、ブレーキングして1コーナーへ。
2コーナーは大きく孤を描くように走り抜ける。
きつくブレーキを入れて3コーナー。
4コーナーは全開でクリア。
5コーナーはちょっときついぞ。
ファーストアンダーブリッジを潜り抜け、130Rへ。
S字はちょっと苦手だ。横Gに耐える。
V字コーナーはコース幅いっぱいを使って、ヘアピンからダウンヒル。
ここで一番スピードが乗る。でも恐くはない。
90度コーナーをクリアし、セカンドアンダーブリッジを通過すると、もうピットロードが間近だ。
マーチンをコースの右へ寄せる。
右ウィンカーを出し、ピットロードへ入る。
そして僕たちのピットへ。
そこで待っていたのは皆の笑顔だった。
(続く)
・12耐への道(1)【夢の始まり】
・12耐への道(2)【ようこそマーチ君】
・12耐への道(3)【お買い物ゲーム】
・12耐への道(4)【最初のチューニング】
・12耐への道(5)【裏の仕事】
・12耐への道(6)【MCR誕生】
・12耐への道(7)【10人の仲間たち】
・12耐への道(8)【日々着々と】
・12耐への道(9)【マーチン死亡】
・12耐への道(10)【復活の刻】
・12耐への道(11)【前夜】
・12耐への道(12)【12耐スタート】
ブログ一覧 |
12時間耐久レース | クルマ
Posted at
2010/08/19 18:14:11