予告しましたとおり、ヴィッツGRのレビューをします。
今回試乗の機会を与えられたのは、トヨタ ヴィッツ GR SPORT "GR" MT仕様です。
何だかヴィッツらしくないフロントです。プリウスαっぽく見えなくもありません。
サイドビューは正真正銘のヴィッツです。
伸びやかなフォルムは格好いいと思いますが、もっと全長を抑えて欲しい。
初心者ドライバーでも自力でスマートに駐車スペースへ入れられるのが私の考えるヴィッツです。
全長が長くなると、それが難しくなってしまいます。
車両をみて最も首を傾げてしまうのが、17インチのホイール。ヴィッツにはどう見てもオーバーサイズ。しかも、ちんまりとしたブレーキディスクが目立って格好悪い。
デカいホイールを履くなら、ブレーキも大きくしないとダメです。
運転席のドアを開けると・・・
う~ん??
これ、いきなり見せられたらヴィッツだってわかるでしょうか?
運転席に座り込んでみます。
本当の意味でヤバい。これ、いくらするヴィッツなの?こんなの高すぎて買う気になれませんよ(苦笑)
値段を度外視すると、メチャクチャ格好いい!
特にセンターにでっかく構えたタコメーターが最高です♪
5速マニュアルのシフトフィールは、オーリスRSのような無駄に軽いものではなく、適度に操作トルクを要し、節度感があります。クイックシフトが入っているのでしょうか。ストロークし終わる前にシフトが入っている感触をもたらします。
サイドブレーキレバーも健在。
やっぱりスポーツカーはこうじゃないと!
カローラスポーツもヴィッツを見習って欲しい。心からそう思えます。
なお、サイドブレーキは樹脂で柔らかさはありません。シボが入っていて、柔らかそうには見えますが・・・。
さあ、この後は画像じゃわからない動力性能のお話です。
200万円を大きく超えるヴィッツ GR SPORT "GR"ですが、エンジンや吸排気をはじめとした加速性能に関わる部分はノーマル。
かつてのヴィッツにラインアップされていたTRD Sports-Mのような尖った感じはありません。
ただ、すっかり使い古されている1NZ-FEエンジンは音がチューニングしてあり、低音と高音が一緒に出されるようになっていて音のハーモニーはちょっと特別感を演出していました。
でも、音がチューニングされていようが所詮は自然吸気のドノーマル1NZ-FEです。
発進から3000rpmまでのトルク感は申し分ないほど実用的です。
でも、加速はだだの1.5Lエンジンでしかありません。3000rpmより上の回転ではだんだんトルク感がなくなり、ただの実用エンジンであるとドライバーに伝えてきます。のんびりとした加速とアンバランスに唸るエンジンは、楽しさを感じられません。
駆動系保護のためやっていませんが、1速全開加速をしても何とも起こらないだろう、物足りないパワー感です。
カローラスポーツの1.2Lターボは実用域なら十分なパワーを持っているため、もう1NZ-FEエンジンの時代は終わったなと思いました。
1.8Lエンジンのオーリスはいつも2000rpmほどでシフトアップしていますが、1.5Lエンジンのヴィッツは2500rpmぐらいは回さないと周囲の発進加速において行かれます。
ドライバーが普段街乗りで扱う分にはパワー不足を感じませんが、それはエンジンを頑張らせているからです。
ブレーキはややカックン気味。注意すれば済む話ですが、今時のクルマってこんなもんでしょうか。
まあ、現行ヴィッツは登場した当初はもっとキツいカックンブレーキでしたね。
それと比較したら、まだ扱いやすいブレーキフィールだと思います。
ステアリングフィールは軽めで舵の入り方は至って自然。
パワステのアシストが強すぎるため、ハンドルが軽すぎてインフォメーションがなく、路面状況がハンドルを通して伝わりにくい。
ハンドルを切ってただ曲がるだけ。今時のクルマらしい操る楽しさのないフィーリングです。
全体的な操作感は、至って自然。
シフトやサイドのレバーの位置、ハンドルの位置はすぐにでも馴染めるだろう標準的なものですが、ただハンドルのテレスコピックはもう少しハンドルを(2cmほど)手前まで持ってきたかった。
シフト操作はある程度の操作トルクを必要とします。クラッチペダルは軽くかつリニアです。ハンドルも軽く、クラッチペダルやシフトの操作感と合わせても、必要操作トルクのバランスが取られています。ただ、ハンドルはもう少し手応えを持たせてもいいのではないかと思います。
クラッチフィールは半クラ領域が広く、扱いやすいと言えます。
ただ滑りやすい印象で、1.5Lエンジンの加速が空回りする感じがします。
オーリスのように発進の際にエンジントルクを太くするような小細工はないため、アイドル発進はやや慣れを要します。が、多少の上り坂程度ならアイドル発進できます。
当たり前ですがアイドル回転域でのトルクはないので要注意です。
足回りは意外とソフト。サスペンションがデコボコを良く吸収している印象で、キャビンはフラットライド。でも、17インチのホイールはゴツゴツした固い乗り心地をもたらすため、ソフトで良好な乗り心地のサスペンションの特性を台無しにしている印象。
足回りに17インチのホイールが合っていません。もっとダンパーを固めた方が良いのではないでしょうか。
ただ、17インチという大径ホイールのためか、グリップを掛けると踏ん張る印象です。じわっとグリップを発揮できるようサスペンションに助けられているのだと思います。
が、操作してからクルマが反応するまでのレスポンスは良くありません。バネをもう少し固めてもいいのかもしれません。
たぶん、16インチホイールの方がこのヴィッツに合っていると思います。
まあ、タイヤの特性も大きく左右しますけどね・・・
札幌から手稲区を通過して銭函までの往復で50kmほど運転しました。
さて、総評します。
見た目はヴィッツを超越していますが、ドライブフィールはヴィッツのチューニングカーです。
加速は面白いものじゃないし、乗り心地が優れる分だけ操舵してからのレスポンスがイマイチで、もしオーナーになったら足回りを固めたくなってしまいます。
ブレーキフィールは及第点で良いと思います。たまにブレーキが鳴くのは、ちょっと楽しかったりしました。
つまり、見た目を意識しすぎ。こんなに見た目を変えなくてもいいでしょう。
見た目にコストを使うぐらいなら、加速性能やサスペンションとタイヤのバランスなど、ドライブフィールの向上にもっとお金を使って欲しかったと思います。
欲しいか?と聞かれたら、きっと欲しいと答えます。
このクルマを運転してみて最も良かったのが、クセの無いプレーンな走りであることです。
だから、チューニングベースとして良さそうな気がします。
ただ、ヴィッツと思ったらちょっと高価ですね。この価格ならターボエンジンを載せて欲しい。
MT車を試乗したのは本当に久しぶりです!
操っている感じはオーリスRSよりも格段に上なので、とても楽しかった。
そして、ヴィッツのMT仕様に乗ったことで、改めてオーリスRSはクセのあるMT車だってことを実感しました。
MT車に慣れたいと思う人にはヴィッツが良いのですが、もっと安価な仕様を用意してくれないと、例えば社会人に成り立ての若者にはなかなか買えない価格です。まあ、GR SPORT "GR"は特別なグレードだから仕方ないとしても、もっと安価なグレードを用意して180万円を下回って欲しい・・・
あ、忘れてました。
ヴィッツのRSなどMT仕様は昔からですが、小回りが利きません。5ナンバーのクルマですが、クラウンクラスのクルマを運転しているつもりじゃないとUターンや駐車で失敗します。
ご注意を!
最後に、これほど特別なクルマを用意してくれたディーラーに深く感謝します。
もちろん口頭でも礼を言いましたが、やはりここでも念を押しておきませんとね。
今回はたっぷり走らせてもらいました。
86も運転していて楽しいのですが、ヴィッツのMT仕様はもっと気楽に乗れます。
とても楽しい時間でした。