先日書いたルノーの排気問題ですが、その後の経過は大まかこのようになっています。
・Royal エネルギー大臣が、改めて計測した際規制を超過しているとされたルノー車15000台がリコールされると発言
・Bloombergが15800台のリコールと、不安を解消するための70万台が対象のユーザー任意のソフトウェアアップデートが計画されていると報道
・ルノーがキャプチャーdCi(ディーゼル)1.5の15800台ほどをリコールすると発表、同時に70万台の任意ソフトウェアアップデートの報道を否定
・ゴーンCEOがこのリコールで改修される不具合は不正ではないと発言
Bloomberg : Renault Plans Recall, Diesel Upgrades to Quell Emissions Storm(
同記事抜粋の日本版)
CNBC : Recall is not an emissions cheating issue: Renault
Renault recalls Captur diesels to fix emissions glitch
DIGITAL TRENDS : Renault recalls 15,800 cars over emissions glitch, stresses it doesn’t use a defeat device
RENAULT : DENIAL
リコール内容は以下の通りです。(ディーゼルの一部対象なので日本のキャプチャーはそもそも対象外ですが)
2015年7月から9月までの間に生産された15800台の1.5L dCi110 ディーゼルエンジン搭載キャプチャーについてリコールを行う。
改修内容はECUの再調整。一台につき半日ほどの工期。
改修箇所はECUですが、該当車種はアドブルー(尿素SCR)ではなくEGR(排気再循環)でエミッションコントロールを行っています。
このEGRがプログラムのGlitch(へま)で、摂氏17度以下もしくは摂氏35度以上では働かなくなっていた、というのが直接の原因です。このプログラムミスは昨年9月に改修され、すべてのルノー車は環境基準に問題なく適合しているため70万台を対象としたソフトウェア改修はない、というのがルノーのプレスリリースです。
議論を呼んでいるのは、この17~35℃という気温です。エミッションのテストは一般的に20~30℃程度の場所で行われるそうで、まあ室内だからということのようですが、これがルノー版デフィートデバイスなのではないか、という主張が一部に燻っているようです。またパリの平均気温は17度以下のため、実質一般道では5月から9月の日中しかEGRが働いていなかったに等しい、というのは頷ける指摘です。
ではこれは気温を根拠に排気テストと判断する、ルノー流のデフィートデバイスだったのでしょうか?
もう少し状況を見てみましょう。
上の DIGITAL TREND によると、同じEGRユニットは日産やDACIAおよびルノーの他車種にも搭載されていて、それらは問題ないとのこと。(70万台という数字はこの同型EGRの搭載車種を合算したものかもしれませんね)
ルノーは当初dCi90という90hpのモデルで2013年から販売を開始しましたが、2015年にdCi110(110hp/K9K)をラインナップに加えています。110hpモデルのキャプチャーの製造は7月からで、9月には問題を認知してそれ以降は発生していないとしています。このdCi110というのは少なくとも仏と英ではMTでしか設定されていないなかなかニッチなモデルのようです。
不具合が発生していた7月から9月というのはパリの平均気温が17度を上回るという季節にちょうど含まれます。これが疑惑の元にもなっているのですが、時期的にVWの問題とは関係ないところで発見され修正された不具合と考えるのは自然のように思えます。また9月以降の生産分は気温に関係なくエミッションコントロールされるようになっているようなので、ルノーの説明が正しいという前提に立てばこれはゴーンCEOの言う通り"Glitch"であって"Cheat"ではないのではないか――と個人的には思います。当局に指摘される前に既販売分はさっさとリコールしとけよとは思いますが…。
今回のリコールで正しく治るのかということと、9月以降の生産車で同様の問題が本当に発生していないか、など検証する余地はまだあるとは思いますが、ひとまずはユーザーとしては安心していいのではないでしょうか。
この問題は日本ではルノーの存在感の薄さからか仏エネルギー相の終息発言以降あまり報道されていませんが、欧州ではまだ余震を警戒している感じがニュースソースからもありありと伝わってきます。ルノー車乗りとしては大変気になるところですが、今回の
K9K 1.5 dCiエンジンは日産との共同開発で、110hpのモデルはメガーヌ3、DACIA Logdy、日産JUKEやメルセデスA/B/CLAなどにも供給されているエンジンのようです(完全に同じかは不明)。先の70万台という数字はこのあたりから発生したものかもしれませんが、日産=ルノーアライアンスという建て付けの下で仮に、万が一、他社をも巻き込んだエミッション不正が行われたとしたら、もう何を信じたらいいのかわからなくなりますね。さすがにそれは無いだろ、とも思うのですが、ルノーの主張に欧州の世論が納得するかどうかはまだ予断を許しません。
Posted at 2016/01/25 00:37:24 | |
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