現在までの経過
・仏環境相の要望で、フランス国内の自動車会社と輸入車に対して排気ガスの環境適合テストがランダムに行われた
・ルノーもPSAも調査を受けた
・ルノーでは資料、PCの押収があった
・という情報をルノーの労働組合の幹部が発言した
・PSAは調査は受けているがガサ入れは受けていないと発言
・そしたら14日にルノーの株価が一時20%も下がって、多少持ち直したものの最終的に前日終値から
10%下落した
ここまでのソース
BBC:Renault shares plunge on factory raids by police
Bloomberg:Is Renault the Next Volkswagen?
・ルノーは「調査は受けているが不正ソフト(デフィート・デバイス)は発見されなかった。当局の調査には全面的に協力している」とプレスリリースを打った
・ルノーは三か所への立ち入り調査の事実を認めた
ここまでのソース
Renault Press:Groupe Renault Statement
・仏エネルギー相 Segolene Royal が記者会見で「ルノーの車両に対する排ガス検査の結果、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)が使用していたような規制逃れのための不正なソフトウエアは見つからなかった」ただし「二酸化炭素(CO2)と窒素酸化物(NOx)の排出量が基準を超過していることが確認された」
・同相はルノーに「規制基準の順守に向けた改善を命じ、具体的な対策を報告するよう」求めた
・マクロン仏経済相は「VWの事例とは全く異なる。ルノーを信頼している」と発言
ここまでのソース
時事ドットコム:仏ルノー、排ガス基準超過=不正ソフトなし-環境相
↑いまここ
某ちゃんねるでは「日産との合併を拒否された仏政府の国策捜査では」などと囁かれたりしていましたが、VWグループの事件を受けて各国がポーズなのか本気なのか調査に乗り出したという流れの中の一幕だったようです。
労組幹部がいらんリークをしたために株式市場が混乱しましたが、そもそも仏国内の調査を指揮したRoyalエネルギー相が上記のように発言しているため、これで幕引きの可能性は高いと思われます。
時事ドットコムの記事よりもロイターの記事のほうが詳しく出ているのですが、こんな感じです。(拙訳につき間違いなどご容赦を)
フランス車および外国車の環境排気ガス技術のテストを命じた仏エネルギー相 Segolene Royal はルノーによる不正(詐欺)の証拠はみつからなかったと述べた。
彼女は「株主と従業員の皆さんは安心していいでしょう」と記者に語り、デフィートデバイスソフトウェアはVW車のみに見つかり、他のブランドからは見つからなかったと付け加えた。
しかし排気テスト以前の予備調査の結果ではルノーおよび他のいくつかの外国メーカーの車から環境基準の超過が示されていたとも Royal は続けた。
また、仏国内の他の車メーカーにも不正調査の立ち入り検査を行ったとも述べた。
ルノーの拠点が捜査されていると労働組合役員が最初に発言してから株価は22パーセント程度下落したため、ルノーは立ち入り捜査の事実を認める発表をする必要に迫られた。
それによれば、不正捜査官が捜査していたのは仏政府による初期調査に引き続いての、部品や工場の追加調査だったとのことだ。
以上
Reuters:Renault searched in emissions probe, says no sign of defeat devicesより一部抜粋・訳
もともとルノーの一部車種(やその他のメーカーの車)が実走行では環境基準を超過するNOxを出していることは指摘されていました。(たとえば
IBTimesのこの記事:Renault's Espace exceeds EU emission limits by 25 times says DUH Groupなど)
このような指摘がある中での立ち入り捜査ということだったように見えますが、関係大臣が火消しに躍起になっているところからも、仏政府の思惑ではなかったように思えます。労組幹部からのリークでルノーだけでなく自動車株がダメージを受けたことに慌てたのでしょう。そもそもこの労組幹部もちょっと怪しいのは、わざわざ「(この立ち入り捜査は)VWのエンジン不正に関連してのことと思われる」とか言ってるんですよね…。
リークが空売り狙いの線は残るにしても、「仏政府の陰謀」論はちょっと考えすぎな気もします。懲罰的な捜査であった場合わざわざ労組幹部という登場人物を増やす必要はないですし、別件捜査的なものであったにしてもエンジンコントロールユニットをターゲットにした技術資料の押収で日産との関係がどうこうなるとも思えませんし。
上のIBT記事での調査はドイツのDUHという環境団体のものですが、これは何もドイツが逆切れして「うちだけじゃない!」と言っているのではなく、北米でも欧州の他の国でも環境団体は以前から指摘していた問題のようです。
このような調査結果はEU(や他各国)の検査体制の不備を指摘するもので、現行ルール上では不正にはなり得ません。たとえば上のエスパスは「エンジンのコールドスタートでは適合するが温まってくると適合しない」というようなもので、コールドスタートで調査を行うEURO6では合法的に環境適合と言えます。
しかし検査法としてそもそもそれっていいの?という疑問は残るわけで、単にEURO6をホットスタートでも適合するようにしろ、というのではなく、積分で走行全体で有害ガスを減らしていくにはどういった規制が良いのかを改めて考案する必要があると思います。
同じようなことは燃費検査にも言えると思いますが、燃費スペシャルカーの存在というのはもっとあけすけで酷い気はしますね。
VWのエミッション詐欺の問題は燃費スペシャルや規制そのものの問題とは根本的に別のものではあるのですが、企業姿勢が問われるという点と官民一体となっての「ズル」は最終的に消費者に対しての欺瞞であるという点においては同根と考えることもできると思います。今回の仏エネルギー相や経済相の姿勢からも「ルノーお前今度から気をつけろよな!」程度の話にしたいという思惑が透けて見えますが、今回は慌てただろうから仕方ないにしても、もう少しまともな着地点を探してほしいですね。
Posted at 2016/01/15 12:53:57 | |
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