
出発してから晴天が続き、無風状態はあったものの割と風もよく、順調に距離を稼ぎ、250km北のSavannahという町にほど近い静かなマリーナに着きました。
速度は問題なかったのですが、夜は晴れていても海が荒れます。一日目は風向き追い風だったためキールへの力成分が小さく、結果安定性が欠けずいぶん揺れました。小さな波なのですがかなり左右に揺さぶられるため、進行方向が安定しません。コンパスを見るためにライトをつけると夜目が利かなくなるので、我々はステラーナビゲーションの基礎中の基礎、北極星(と近辺の星)を利用して北上することにしました。雲がなく天の川まで見えたので時折どれが北極星なのかわからなくなることはありましたが、小学校で習ったカシオペア座からの推定方法が役に立ちました。
二日目の夜は日暮れの頃には目的地近くに着いていたのですが、暗い中喫水の深いセイルボートで浅い水路をアプローチするのは座礁の危険があるため断念、heave-toというスタイルで強まる風を朝まで乗り切ることにしました。
これは帆船の帆を小さくしつつなるべく進行方向と平行にし、航空機の翼のような形を生成し、同時に風上へ船首を向けることで前方向の揚力(船の場合は推進力)を得るというもので、推力の部分は高校物理でやるベルヌーイの定理を想像していただければだいたいよいかと思います。これがあるため現代の帆船は風上へ向かうことができるのですが、どうしても横方向の力成分が発生するので帆を小さくすることで調整しつつ梶を逆に切って固定し速度を調整します。
このスタイルを今回のように夜間移動しないために使うには、理想的には速度ゼロが好ましいところです。
ですが我々のスキル不足か風が強すぎたのか、2ノット弱くらいはどうしても出てしまいました。そのため陸地のない沖を目指してのろのろと進み、数時間ごとにタックして反対方向に切り返す、ということを三度やりました。
このheave-toは帆船航行の基礎のひとつだそうですが、我々が使うのは初めてです。去年ケープカナベラル沖で低気圧に出逢ったときそのチャンスがあったのですがheave-toを使わず、嵐が近づく中浅瀬を探して碇を降ろすという愚行を犯したため夜中に走錨・漂流するという憂き目を見ました。
あれは悪夢としか言いようがない体験でもう御免だとクルー三人とも一致していたのですが、実は昨晩のheave-toも大概でして…横成分の力がほとんどないのは追い風の時と同じなので、かなり揺さぶられる夜を過ごしました。ちょっとの揺れくらいでは船酔いしなくなっている我々もキャビンの中で起きていると気分が悪くなり、デッキに出て星を眺めてなんとか吐き気を抑えるということが何度かありました。安全なのはわかるのですがとにかく揺れの質が悪質で…
当然カメラを回す余裕もなく記録はありません。
これまで夜間に外海の洋上にいたのは5回ですが、静かな夜というのは一度だけでした。基本的に荒れるもんなのかもしれません。
明るくなるのを待ちセイルをたたんでエンジン航行に入ったのが6時頃だったんですが、Wassaw Sound(湾)から河口を遡上して少し内陸にあるマリーナに着いたのは11時を回っていました。
入江の入り口で8時頃ネットが入ったのでマップを調べてみると、車で19分のところでした。そこから3時間かかったのか…。とかく船の移動は時間がかかりますが、原動機航行する時間以外は天然のエネルギーだけで移動できるという魅力はなかなか捨て難いものがあります。まあ夜間航行は、星空に飽きたら割とほとんどの時間が苦行ですがw
さて、このジョージア州サバンナに数日滞在する予定です。
巨大なオークの街路樹にモスがかかり、美しい町です。
南部なので共和党支持者が多く、南部旗やトランプの旗もよく見かけます。
写真は今回一眼レフで別に撮っているものがあるので(変な車とか)そちらはいずれまた…
Posted at 2016/09/11 19:51:43 | |
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